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03
「んっ、や、やめろ、しょ……った、しょうたぁあ……っ!」
「カナちゃん、本当に足の裏弱いよね」
「んなの、知らね、バカ、ぁ、ひぃ……ッ!」
スカートが捲れようが下着が見えようがどうでもよかった。
翔太に足首を掴まれ、土踏まずの部分に高速で振動する先端部を押し付けられればそれだけで頭の中が真っ白になる。必死に声を抑えようとするが、我慢できない。
そのくすぐりから逃げるように床の上でジタバタするが、翔太は無視して足の裏でゆっくり円を描くようにそれを動かすのだ。汗が滲んだ肌が赤くなるのを感じる。
「あーあ、はしたないな。可愛いパンツ見えちゃってるよ」
「っころす、ぜったいころす…っ!」
「そ。なら死ぬ前にたっぷり楽しまなきゃなあ、カナちゃんへの憂さ晴らし」
「なに言って……ひぃっ!……く、ふ、……ぅ……っぷはっ、ははッ、ひ、あはははッ!やめ、やめろ、ぁ、しぬ、しぬからまじで……っ!」
逃れられない電マ責めに耐えられず、開いた口からは唾液とともに弾んだ笑い声が溢れた。
そう、これだ。小さい頃から感覚が過敏なのか、マッサージとかくすぐられるのにものすごく弱い。だからこの電マも封印したのだ。気持ちいいどころか、強すぎる振動に笑ってしまってオナニーどころじゃなくなるからだ。
執拗に揉み解される足裏からやってくる強烈な刺激にぴんと緊張した全身は波打ち際の魚のように痙攣する。
目の前が白ばみ、徐々に込み上げてくる快感にも似た感覚に息が苦しくなってくる。
「っ、や、め、もっ、やめてくれ、翔太……っ」
「反省した?」
「っ、したっ!した、から……ぁ……ッ」
「ふうん……じゃあごめんなさいは?」
「ごめん、ごめんってば、俺が悪かったから……っ!だから、も……っ」
やめてくれ、と涙が滲む目で懇願すれば、こちらを見下ろしていた翔太は足裏から電マを離す。
ようやく開放され、床の上でぜえぜえと空気を取り入れる俺。それもつかの間のことだった。
「っ、ぅ、えッ」
足を掴まれ、開かされる。そして股の間に膝立ちになる翔太にぎょっとするのも束の間、翔太の手が脹脛から腿へとゆっくりと這わされた。
散々刺激され、熱を持ち始めていた全身は触れられるだけでも敏感に反応してしまう。堪らず肩口に唇を押し付け、声を抑えようとすれば翔太は笑った。
「……なに?なんで我慢してるの?別に今さらそんなことしなくていいよ。くすぐったいんでしょ?声、出しなよ。聞きたいなあ、カナちゃんの品のない喘ぎ声」
この野郎、黙っていればさっきから失礼なことばかり言いやがって。
ムカついて、目の前の翔太を睨む。目があってやつは楽しそうに笑い、そしてタイツの生地を味わうかのように手のひら全体で撫でるのだ。虫が体に這うような感触に思わず身震いする。
「っん、くぅ……っ」
品のないとまで言われたら意地でも声を上げたくなくて、唇を噛んで声を堪える俺。
そんな俺にちょっとだけつまらなさそうな翔太は「強情」と呟き、そのまま片足を掴られ膝を折られる。
スカートが大きく捲れ、中の下着が見えそうになるがそんなこと気にしてる場合ではない。
膝裏、振動する先端を近付けられれば脊髄反射で体がぶるりと震えた。
「っふ、んぐぅ……ッ」
「……あれ?もしかして声我慢してるの?……やめときなよ、そんな無駄なこと」
「っ、ん、ふ……ッ!」
「我慢なんてできないくせにさ、声、出した方が楽だと思うよ。カナちゃん」
優しい声とは裏腹にその目は人を泣かせる気満々である。
あんなに謝ったのに、こいつ、やめてくれって頼んだのに。鬼か、と睨みつければ、翔太は嫌な笑みを浮かべた。
「あーそう。そういう態度取るんだ」
「っぅ、ん」
「馬鹿だよねえ、カナちゃんって」
「っん、ぅ、くぅ……ッ!」
ゆっくりと焦らすようにスカートの下の股間に近付いてくる電マに下腹部がビクビクと震える。せめて振動を弱めてくれ、と思うがこいつにそれを頼むことすら癪だった。
「っ、ふ、ぅ……んんぅ……ッ!」
刺激を想像し、勝手に追い込まれる。スカートの中に入ってくるその棒状のそれから逃げようと腰を動かすが、翔太に足を掴まれてる現状逃げることなど無理に等しい。
「やっ、め……」
「ん?」
「やめ、ろ……っやめて……くれ……これ以上は、も、まじ……無理……ッ!」
「本当に?」
こくこくと何度も頷き返したときだった。じっとこちらを見ていた翔太の視線が俺の下腹部に向けられた。
翻ったスカートに隠れたのは女装に合わせて着替えさせられた小さなレースとリボンが散りばめられたウェイトレス服とお揃いの下着。
散々弱いところを刺激されたお陰で血液が集まり、僅かに大きくなりはじめていたそこ。翔太の不穏な意図を感じ取った俺は、まさかとやつを見上げる。その矢先、付け根まで這ってきたそこに思いっきり電マが掠める。
「っく、ひ……ッ!」
「カナちゃんが擽り弱いってのは知ってたけどこういう意味で弱いとは思わなかったよ。そっか、カナちゃんって意外と……」
意外と、なんだよ。途中でやめんなよ。バカ。アホ。
玉の膨らみを撫で、そのままゆっくりと全体を舐めるように先端を柔らかく押し付けてくる翔太に声にならない悲鳴が漏れた。
スカートを捲られ、腰を持ち上げられ、むき出しになった下着の膨らみが電マの刺激に反応して大きくなるのを目の当たりにしてなんだかもう死にたくなった。
ぎゅうっと目を瞑り、顔を逸らす俺に翔太は呟く。
「えっちだね」
お前には及ばない、このド変態眼鏡が。
「や、めろ……っ翔太……っ!やめろ、馬鹿っ」
そこは、駄目だ。
下着越し、襲いかかってくるであろう刺激に耐え切れず俺は「ちょっと、待てって!」と、下腹部を覗き込む翔太の顔面に思いっきり蹴りを入れた。
足裏でぱきっとなにかが壊れる音が聞こえたような気がしたがそれどころではない。
「……カナちゃん、今度は手錠じゃなくて足枷買ってこなきゃいけないのかな、僕」
翔太の顔からずるりと落ちる眼鏡をもぎ取るようにその辺に捨てた翔太だったが、こちらに視線を向け、やつはぎょっとした。
「え、ちょ、なんでカナちゃんが泣くの」
「だって、なんか、なんで、俺ばっかりこんな目に遭わなきゃいけないんだよぉ……っ」
「それはカナちゃんが約束を…」
「翔太だって、約束破ったじゃん!」
ここ最近泣きすぎてすっかり弛みきっていた涙腺からはボロボロと涙が溢れ、顔を濡らす。俺の言葉に確かに翔太は狼狽えた。
「この前、一緒にいたあの女の子。誰だよ、ゴスロリと清楚系!」
「いや、あれはただイベントで知り合った子で…」
「可愛い子がいたら紹介してくれるって言ったのお前だろ!……っなんだよ、自分ばっかり女とイチャイチャしながら酒飲んで俺には禁酒してニートになれって、ずるいだろ、お前ばっかり……っ!」
翔太の馬鹿、キモヲタ、ばかと次第に声を小さくする俺に気圧されていた翔太は「ちょっと待ってよ」と反論してくる。
やつの手から電マが落ち、肩を掴まれ無理矢理正面を向かされた。いいから話を聞けという動作だ。
「……言っとくけど僕はカナちゃんに紹介しようと思って何度も何度も連絡いれたんだからね。それに出なかったのはカナちゃんの方だよ」
「だって、バイト中だったんだから仕方ないだろ。ならメッセージでもいれときゃいいじゃん」
「それなら言わせてもらうけど、なんでかけ直してくれなかったの?」
「かけ直そうと思ったけど、だって、歓迎会するからって引っ張られて……」
「僕よりもバイト先の歓迎会を優先したのは事実なんでしょ」
翔太は目を細めて俺を見る。裸眼だからか、顔が近い。
が、ここで怯むわけにはいかない。
「いいだろ、それくらい」
「よくないよ。全然よくない。カナちゃんはわかってるの?カナちゃんの保護者は僕なんだよ?僕からの連絡を優先してよ」
そう子供をあやすような柔らかい口調とは裏腹に言ってることは全く持って笑えない。
目を逸らせば「僕を見て」と頬を掴まれ無理矢理正面向かされる。睨み返せば、目が合って翔太は穏やかに笑った。
「でもまあ今さら言い争っても無駄だよね。取り敢えず今後カナちゃんには僕の部屋で僕の身の回りの世話をしてもらうから。給料もちゃんと払うし三食宿つきでいい条件でしょ?」
その代わり、僕の目がないところでの行動は制限させてもらうよ。
そう死刑宣告にも似た命令を口にする翔太。
確かに、いい条件だ。だけど、自由気ままにをモットーに生きていた俺にとってその束縛はあまりにもキツく、恩人であるはずの翔太は俺の目では別のなにかに変わった。
確かに翔太に依存して生きてきた。
だけど、翔太のためだけに生きろと言われてしっぽ振って喜ぶほど俺はマゾヒストではなければ善人でもなんでもない。これ以上は、埒が明かない。そう直感すれば、残された手は一つだけだ。
「……せてもらいます」
「え?」と聞き返してくる翔太から目を逸らしたまま、再度俺はその言葉を口にする。
「……っ翔太がそのつもりなら、俺は、実家に帰らせてもらいます……っ」
ほんの一瞬の間、けれど俺たちにしてみれば長い間だった。
その言葉を口にしたとき、確かに翔太は固まった。
「は……?」
意味がわからないとでもいうかのように静止する翔太だったが、俺が訂正しないでいると事態をようやく理解したらしい。先程まで余裕ぶっこいていたその顔に確かに動揺の色が滲む。
「なに、なんでそうなるの。今そういう話はしてないでしょ」
「だって、もう無理だ、こんな……翔太がそのつもりなら俺は……」
「駄目!絶対駄目!」
ぐすぐすと鼻を啜りながら続けたときだった。
珍しく声を荒げる翔太に肩を強く揺すられる。
「カナちゃん本気で言ってるの?駄目に決まってるじゃん。なんのためにここまでして僕がカナちゃんの家出に協力してると思うの?家に帰ったら駄目だからだよ!」
「でも、翔太がそういうこと言うなら俺は腹括って帰るしかないし……。いままで遣わせた金も、すぐには無理だろうけどちゃんと返すから……」
「どうやって返すつもり?無茶なこと言わないでよ、まさかまた変なバイトするつもりじゃないよね」
「へ……っ変じゃないし!いいだろ、ほっとけよ、俺は俺の好きなようにしたいんだよっ」
「そんなこといっていつも失敗してるくせに」
だからなんでこんなにこいつは痛いところばかりついてくるんだ。
切羽詰まり、涙は止めどなく溢れてくる。
涙でぐしゃぐしゃに汚れた顔はみっともないとは思ったが、手が使えないのだから仕方がない。
「どうしてカナちゃんはそんなに馬鹿なの。僕と一緒にいるのがそんなに嫌なの?こんなに可愛がってるのに」
「サイズのあった女の服つくって着せ替え人形にされて喜ぶやつがいたらそいつは変態だ」
「こんなに似合ってるのに?」
こいつの似合っているという言葉は大抵当てにならないのを知っている俺はまず喜べなかった。
「っ、触んな、おい」
言いながら床の上で転がってでも翔太から逃れようとすれば、翔太は悲しそうな顔をして「カナちゃん」と俺を見る。いくら手の施しようのない変態とはいえ長年の友人である翔太の悲しそうな顔に罪悪感に苛まれるが、ここで折れてはまたやつに流されてしまう。
「カナちゃん、こっち向いてよ。なに、なにがそんなに気に入らないの」
不安そうな声。もう騙されないぞ、と意気込むが、「カナちゃん」と、すり、と頬を撫でられれば情けない顔をした翔太が視界に入り、胸の奥が痛んだ。
「カナちゃん」
「……言ったら、聞いてくれるのか?」
「カナちゃんが僕から離れていかないなら……」
よしきた。きたぞ、きたきたきた。こいつの弱点は理解しているつもりだ。本気で嫌がってるとわかれば、翔太も俺の条件を飲まざる得なくなる。弱気になっている翔太に俺は内心ほくそ笑む。
「なら……取り敢えず手首のと首輪、外してくれ」
「いいけど、首輪だけね」
カナちゃん手が早いから、と呟く翔太はそっと俺の髪を撫で上げるように首輪に触れる。カチャカチャと小さな音がし、締め付けていたものが離れた。
そして、首が涼しくなると同時に俺は勢いよく翔太の下から這いずり出した。
「ふははは!引っ掛かったな馬鹿翔太!お前とは今日でおさらばだ!じゃあな、元気でな!」
言いながら勢いよく立ち上がったときだった。
ここに閉じ込められてからずっと寝ていたお陰ですっかり衰えていた足に力が入らず、俺はそのまま顔面から転んだ。
「ぁうっ」と情けない声が漏れる。
「やば、足が、痺れ……」
「……ふーん、馬鹿翔太ねぇ」
青虫のように床を這いずるように起き上がろうとした瞬間、背後で黒い影が蠢く。
はっと青ざめ、慌てて床を転がろうとしたときはもう遅かった。
スカートの裾を掴まれ、乱暴にたくしあげられる。
「や、うそうそうそ、冗談だってば、まじ、ごめんなさいごめんなさい、軽いジョークで……」
「単細胞なカナちゃんの考えることくらいわかるよ。僕が優しくしたらすぐつけ上がるんだからね、チョロいにも程があるよ。もしかしてあんな下手な泣き真似で僕を本気で騙せると思ったんだ?だとしたら……そういうお馬鹿さんなところは嫌いじゃないよ」
シルクの下着をねっとりと撫で回され、「ぁ」と小さな声が漏れる。擽られ、すっかり敏感になっていた下腹部はびくんと揺れた。
「やだ、って、おい、翔太…っ」
「聞こえないなぁ」
不意に手が離れ、気を緩めた瞬間だった。
下着がずらされ、尻半分露出させられる。
肌寒さにふるりと震えた矢先、思いっきりケツを叩かれた。乾いた音ともに、突き抜けるような痛みに視界が白ばむ。
「ひぃ…っ!!」
背筋まで走る衝撃に、腰が疼き、半勃ちになった性器が下着で擦れ説明し難い痺れに全身が蕩けそうになる。
因みに俺はマゾではない。ないはずだ。
そう信じたいが、いきなり人のケツを叩く翔太は変態には違いない。
「っ待っ!や、ぁ、しょうた、しょうたぁっ!」
左右の尻たぶをスナップ利かせた手でひっ叩かれれば、目が覚めるような電流が走り悲鳴のような声が上がる。
それが自分の声だと気づくのに時間はかからなかった。
じんじんと熱を持つ臀部に走る痛みに目は潤み、焼けるような痛みに耐えられず俺は呻く。
「なに?そんなに痛かったの?うそだ、そんな痛くしてないのに」
あまりにもオーバーに感じたらしく、訝しげに眉を潜める翔太はぷるぷると小刻みに震える俺の尻を撫でる。そして下着を撫でるその指先が 肛門付近を擽った瞬間だった。
「ひっ、んんぅ……!」
敏感になっていたそこは翔太に触られただけで酷く痛んだ。先程の刺すような痛みに似た感覚に、堪らず声が漏れた。しかし、今度翔太は終わらない。
「やだ 、翔太、やめろって、翔太、翔太っ」
只でさえ面積の狭い下着をずらされ、直接肛門を見てくる翔太に泣きそうになる。
床を這い逃げようとする俺の腰をガッチリつかんだ翔太。
露出させられたそこに生暖かな息が吹きかかり、何がしたいのかがわからずただただ不安で震えた。
いつまで経って叩かれるこもなく、微動だにしない翔太に段々心配になった「俺は翔太?」と背後の奴を振り返る。
翔太はこちらを見下ろしたまま硬直していた。
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