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07※

俺は今までにないくらい動揺していた。あと後悔とか、それから。色々。 「っ、ん、っう……つ、かさぁ……っ」 電気を点ける手間すら惜しいとでもいうかのように薄暗いベッドの上、まな板の上のマグロよろしく転がされたと思えば覆い被さってくる司に噛み付くように唇を重ねられる。 「ん、ぅ……っ、ん、んん……っ」 「ん、……原田さん、可愛い。……そうやってる方がいいよ」 「っ、な、に……言って……」 そうやって、ってなんだ。もう自分がどんな面してるのかすら分からない。ちゅ、ちゅ、と唇から唇の端、頬、耳へとキスを落とされ、触れる司の髪のこそばゆさにたまらず悶える。 当たり前のようにスカートの下に潜り込んできた司の手にハッとして閉じようとするが、遅かった。ずらされた下着の奥、無防備に口を閉じていたそこを指先で軽く撫でられ、息を飲む。 「ぁ、や……っ」 「柔らかいね。……これなら、わざわざ拡張する必要なさそうだな」 「か、かく……ッ?!」 「ん。……ほら、原田さん、足広げて」 「え、ま……っ、待って、司……っ」 駄目だ、そんなところ。そう、手を伸ばそうとするが手錠が邪魔で、上手く腕を突き出せない俺を無視して俺の股を開脚させた司は俺の股の間に膝立ちになる。部屋が暗いのが唯一の救いだったが、それでもだ、ひっくり返ったカエルみたいなこんな格好させられて平常でいられるわけがない 「や、だ……っやめろ、司……っ」 「やめない」 「ん、ぅ……っ!」 這いずってでもベッドから逃げようとする俺の腰を掴み、問答無用でベッドの上へと引き摺り戻す司。そのせいでスカートの裾が余計乱れてしまうが、そんなこと気にしてる場合ではないのだ。俺のケツのピンチだ。 「……往生際悪いよ、原田さん。それとも、俺を愉しませようとしてんの?」 「う……ぁ……っ、ち、が……」 「もっとして、って言ったのは原田さんの方なのに」 ねっとりと陰嚢から性器までを撫であげられれば、その感触だけでぞくぞくと背筋が甘く震えるのだ。やっぱやめる?なんて耳元で低く囁かれれば、余計心臓の音が煩くなる。 「ぅ、う……い、じわる……っ」 「今の、可愛い。勃起した。……もう一回言って?」 「い、言うか……っ!」 「……そ、残念」 まあ別にいいけど、なんて恥ずかしげもなく口にした司はサイドボードから何かを取り出す。ボトルのようなそれははっきりとわからないが、このタイミングで取り出すものなんて大抵ろくなものではない。そして、そのボトルのキャップを口で外した司は広げた自分の手のひらに中の液体を出す。その行動で、察する。どろりと司の細い指先から零れ落ちていく液体は透明のようだ。けれど、確かに粘り気を孕んでいて。 「……大丈夫だよ、原田さん。原田さんが痛がることはしないから、俺」 「……っ、つ、つかさ……」 「力抜いて」 そんなこと言われて力抜けるわけがないだろう。そう思うのに、ローションをたっぷり絡めた指で下腹部を触れられるとそれだけで反応してしまいそうになる。口を閉じた窄みに触れる指先はそのままぬぷぷ、と侵入してくる。 「……っ、ふ……ぅ……」 「原田さんってここでオナニーとかする人?」 「っ、し、ね……えよ……っ」 「……ふぅん」 「っ、ぅ、あ……っ、待っ、つかさ……っ!」 玉の裏側の辺りの浅い位置を濡れた指先で柔らかく揉まれたとき、駆け抜ける快感に背筋が仰け反る。そんな俺の反応を一瞬でも見逃さないとでも言うかのようにこちらをただじっと見下ろしていた司は「勿体無いな」と呟くのだ。 「っ、な、待っ、ぁ、つかさっ、ゆびっ、だ……抜い……って、ぇ……ッ!」 「原田さん絶対アナル弱いだろ。……毎日前立腺マッサージして慣らしていったら普通のオナニーより気持ちよくなれるのに」 「にゃ、な、に言って、ぇっ、や……!やめろ、抜け……っ、つかさぁ……っ!」 「前立腺コリコリされるの気持ちいい?……中まで痙攣してる。……じんじんしない?」 「わ、かんね、ぇ……もっ、やめて、頼む、やだ、それ……ッ、や、ッぁ、ひぅ……ッ!」 ただ、ケツの穴イジられただけなのに。指先で揉まれて、刺激されただけなのに。軽く触れられるだけで頭の中の快楽中枢を直接愛撫されるみたいに思考が乱れ、パニックに陥る。体と頭が噛み合わない。アッという間に硬くなり、スカートの下から哀れなほどに主張する俺の性器に目を向けたまま司は「いいね」と笑った。さては褒めて伸ばすタイプだ、こいつ。 「ぁ、や、も、やめろ、つか……っ」 「可愛い、原田さん。泣いてる?……まだ何もしてないのに」 「っ、し、てる!めちゃくちゃ、して……っ!」 「こんなの、準備運動だろ」 大事だろ、と司は笑って、涼しい顔とは裏腹に的確に俺の弱いところを抉ってくるのだ。体の中、腹の奥から響く粘り気のある水音は更に激しさを増す。指の腹で揉まれ、逃げようとする腰を捕らえられては更に執拗に刺激され、絶え間なく与えられる刺激に目の前が眩む。 「ぅ、ッふ、……ぅ〜〜……ッ!」 声を堪えようと噛み締めた奥歯の奥から声が呻く漏れようがお構いなし。快感を逃さないように腰を抱かれ、長い指先でトントンと叩かれるだけでも脳髄がびりびりと熱くなって、気付けば性器からはどろりとした半透明の体液が垂れ流れていた。射精感などない。ただ、行き場のない強烈な快感に頭を振ることしかできない俺に、一人涼しい顔した司は「泣いてる。可愛い」と楽しげに唇を額に押し当ててくるのだ。こいつの可愛いは俺の思う可愛いとかけ離れている事は間違いないだろう。 「……そろそろいいかな」 ようやく指が引き抜かれ、散々指で掻き回された中からはとろりとローションの残滓が溢れてくる。それでも燻ったまま収まらない。それどころか悪化するばかりで、急に放り投げられたような足りなさを感じたのもつかの間。異物を求めるように口を開いていたそこに追いローションをかまされた。 「っ、ん……ぅ……っ」 「原田さん、今ものすごく残念そうな顔してたけど」 「……っ、し、てな……っ」 「本当?」 「……っ」 言葉で、指で、追い立てられる。恥ずかしくなって、何も言えなくなる俺に司は小さく笑った。 「まあいいや。……それも、確かめるから」 ベルトを緩め、張り詰めていた前を寛がせながら司は笑った。そして、「原田さん」とやつは俺を呼ぶのだ。 「ここ、来て」 ベッドの上、胡座を掻いて座る司はそう言って自分の膝を指さした。言いながらも下着をずらして勃起した性器を取り出す司に、俺は言葉すら失うのだ。 「……っ、な、に……」 「対面座位、したことない?」 「……ッ!!」 この男には恥とか、そういう情緒的なものはないのか。とどのつまり司は俺にチンポの上に跨がれと言ってるのだ。直球にも程がある。なのに、逃げたいのに、逃げられない。下半身にまるで力が入らないどころか、勃起し、宙を向いて反り返った司の性器見てるだけでケツの穴が疼くのだ。 絶対、変な触られ方したせいだ。そうわかってるのに、もっと、もっとというのようにケツの奥が司のを欲しがってる。バキバキに勃起したチンポで中をグチャグチャにかき回されたらと想像しただけで口の中に唾液がじわりと滲んだ。 「……おいで、原田さん」 悪魔だ。鬼だ。サディストだ。 分かっていたはずだ、俺は、ここに来たときからこの男がただの人畜無害そうな地味な青年ではないと。舐るような視線に、淡々としていて、鼓膜に染み渡るような低い声。こんな男相手に強請った俺も、俺だ。 今更逃げることなんてできなかった。

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