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08※

「ッ、ふ、ぅ……っ」 司に体重がかからないように、膝と腰、下腹部に力を入れようとするがぬぷ、と埋まる亀頭に我慢できなかった。 挿入に耐えられず、バランスを崩してもたれ掛かる俺を抱き留め、司は震える腰を撫でる。 「そう、そのままゆっくり。……原田さん、息してる?」 「っ、ん、ひ……っ!」 喉仏をすり、と撫でられぶるりと仰け反る体。 思わず気が逸れてしまいそうになったとき、司にケツを思いっきり撫で付けられる。先っぽだけ咥えていたそこをやんわりと押し付けられただけでずぷ、と先ほどよりも深く埋め込まれる性器に堪らず声が漏れた。 「っ、待っ、ぁ、あぅ……ッ!」 「待てない、早くしないと無駄打ちしそう」 なんだ、なんだ無駄打ちって?! 「そ、んなこと……っ」 「……それとも、手伝った方がいい?」 「…………〜〜ッ」 衣装越し、臀部から背筋まで人差し指ですぅっとなぞられ、堪らず息を飲む。 嫌な、嫌な予感がする。というかなんだ、デジャヴ感というか、こんなデジャヴあるはずないのに謎の嫌な記憶が蘇るのだ。 「い、いい……ッ、一人でやれる……から……」 「そう、頑張って」 そう、司は無理強いすることなく(というかそもそもこの展開自体が無理強いというか悪質な誘導というかはさておき)俺をただ見てるのだ。何考えてるか分からない黒い目がじっとこちらを見る。隠すつもりもないといった司を気にするなという方が無茶だが、それでもこのままでいる方がよほど辛い。 目を閉じ、息を飲む。そして、「ん……っ」と下腹部に力を入れながらも俺はゆっくりと腰を落としていく。 「ふ、ぅ……っ、ぅ、んんぅ……ッ」 入って、来る。散々ほぐされた中に、指とは比べ物にならないほどの熱と質量が。痒かったところに手が届くような充足感に頭の中が熱くなる。 司の上で股おっぴらげで、相手のものを自分の手で挿入する。普通にやってもらった方が何十倍もマシだということに気付いたときにはもう遅い。 どれくらい入ったのかわからない。 けど、ローションの滑りが良すぎて少しでも油断したら一気に奥まで入りそうで怖かった。だから、ゆっくりゆっくりと腰を動かす。目の前の司の顔が僅かに強張った。「原田さん」と司は何か言いたそうに俺の腿を撫でるのだ。 「待っ、う、うご……くな……ッ!」 「……あと少し、半分くらい入ったよ。俺の、原田さんの中に」 「い、うなぁ……っ」 「原田さんの中、熱くて、とろとろしててすごい気持ちいい。……早く全部入りたいんだけど」 「っ、ぅ……ふ……ッ」 「全部ちゃんと自分で入れれたらご褒美に奥、いっぱい突いてあげるね」 ゆっくり、少しでも気を抜かないようにしてるのをキスされ、舐められ、恥ずかしい言葉で嬲られる。横槍を入れてくる司に「やめろ」と睨めば、司は目を細めた。笑ったのだと気付いたときには遅い。中に埋まったそれが明らかに勃起してるのだ。こいつ、と思ったとき。 濡れた音が響く部屋の中に、バイブの音が響いた。どうやら司の携帯らしい。 ポケットから取り出した司はあろうことか当たり前のように「はいもしもし」と出やがったのだ。 普通出るか、こんな状況で。 凍り付く間もなく、司は電話の向こう側の相手と話しながらもこちらにちらりと目を向ける。そして、そのまま臀部をなで上げるようにスカートを捲れ上げるのだ。早くしろ、とでも言うかのように既に半分ほど司のものを飲み込んだその付近を指先トントンと叩かれる。それだけでも過敏になった体には刺激が強く、ぶるりと肩が震えた。振動が性器に鈍く響くのだ。 「っ、ふ……ぅ……ッ」 唇を噛み、ゆっくりと腰を落としていく。今自分がどこにいるのかすらわからなかった。長い、気が遠くなる。まだ入るのか、つか、早くイケよ。悪態をつくことでしか保てない。油断すれば情けない声が漏れてしまいそうで、内壁を押し広げるように入ってくるそれを必死に受け入れるのだ。司は動いていない。わかってるからこそ、まるで一人遊びのようのようで余計恥ずかしさが上回るのだ。 酷く長い時間のように感じた。気付けば全身は汗だくになってて、最も深いところ、そこを亀頭が当たった瞬間、じんじんと痺れるような熱が広がった。隙間なくくっついた俺と司の下半身に、全部入ったのだと安堵したのもつかの間。 「……どうせなら、俺よりも本人に聞いた方がいいんじゃないですか?」 代わりましょうか、となんでもないように電話口に続ける司は言い終わるなり持っていた携帯を俺の頬に押し付けた。無機質な、嫌な感触。 「…ぅ、え?」 一瞬、状況が飲み込めず、目の前の司の仏頂面に目を向ければ「原田さん」と名前を呼ばれる。 「声、聞かせてあげれば。皆、心配してるよ」 この男は、とんでもない男だ。 ようやく全部入ってほっとする暇もなく、下半身を揺さぶるようにして奥をトントンと撫でる司に俺は声を上げそうになり、唇を噛んで堪えた。 なにが、心配だ。こいつ、この、こいつ。 あまりの出来事に言葉も出てこない。頭の奥脳汁がどろどろと溢れるようだった。 声を聞かせる。なんてこと、出来るわけがないだろう。だって、こんな状況だ。無理だ。絶対無理。 どれくらい無理かというと、ウエイトレスの服装で外をほっつき歩くよりも無理だ。 全部俺だけど。 「原田さん」 浮かして逃げようとする腰をがっちりと掴まれれば浮かすことすらできない。 奥までみっちりと中に司のものを咥え込み、動けず絶望する俺へトドメを刺すかのように携帯端末からは『かなたん?』と聞き覚えのある声が聞こえた。 ――紀平さんだ。 聞こえてきた心配そうな声に、益々頭が混乱する。 「原田さん、何か言わないと。……余計心配されるよ」 こいつ、涼しい顔していけしゃあしゃあと。 横髪を耳に掛けながら、空いた片耳のピアス穴に舌を這わせる司に心臓が止まりそうになる。司が喋るたびに深く繋がったそこから振動が伝わってくるのだ。何か言わないとと思うけど、もし司が喋ってる途中なにかしてきたら俺は平常でいられる自信はまるでない。 「……きひらさ、ん」 『ああ、よかった。……ようやくかなたんの声が聞けたね』 久しぶりの紀平さんだ。状況が状況だからか、紀平さんの声が余計優しく聞こえてなんだか俺は泣きそうになっていた。否、若干既に泣いていた。 「っ……ごめんなさ、い……俺、ほんと、こんなつもりじゃなかったんです……っ」 『なに?どうしたの、いきなり』 「バイト、辞めるとか、ほんとそんなことになるなんて思わなくて、さっきのあれは、おねがいします、なかったことに……――っ」 「原田さん、焦り過ぎ」 言いかけて、くちゅりと音をたて司の舌が耳朶の溝を這う。ひ、と言いかけた言葉ごと息を呑んだ。 「……落ち着いて、紀平さんも心配するよ」 くにくにと剥き出しになっていた乳首を捏ねられ、堪らず仰け反りそうになる。こいつ、この男、ここまで行動と言動が一致してないやつがいるか。わざとか。 「っゃ、やめ……」 耳と胸、それから奥の突き当りを亀頭で柔らかく刺激され、堪らずその胸にしがみつきそうになったとき。 『やめ?』 「…っ!」 そうだ、今は電話中だった。 ちょっかい掛けてくる司に流されそうになったところを紀平さんの声のお陰で現実に引き戻される。 「原田さん、会話」 そんな俺の様子を楽しんでいるのか、相変わらずの無表情のまま司は囁きかけてくる。そのまま悪戯に這わされる舌は拡張した穴を優しく舐るのだ。こいつ、という怒りを堪え、俺は咳払いをし、ごまかした。 「すみません……っなんでも、ないです」 『そ?……ならいいけど。随分と具合悪そうだけど大丈夫?』 「は、はい……っ、だ、い……ッ!ぅ、じょ、ぉ……ッお、ぶ……ッ!……っ、ふ、れ……しゅ……ッ」 『あまり無理しちゃだめだよ。……今司君がそこにいるんだっけ?』 「ええ、いますよ。……原田さんのことならご心配なく。俺がちゃんと面倒見るんで」 ぐぶ、ぬぷ。と、司が動く度に腹の中で粘つく音が響き、それが紀平さんに聞こえていないか気が気でなかった。さり気なく俺から電話を取り上げた司は暫く紀平さんと何か話しながら俺の胸を弄るのだ。必死に声を抑え、足を閉じて快感を和らげようとすることもできない。電話の片手間、そんな俺を楽しむようにただ司は俺の体に触れてくるのだ。 そんなとき、不意に司に「原田さん」と名前を呼ばれる。 「さっきの電話の人、誰?」 「で、んわ……?」 電話って、なんだ。どれだ。グチャグチャになった脳みそはまるで役に立たない。司は俺の反応見て悟ったようだ。また紀平さんと話し始める。 「……紀平さん、原田さんは知らないみたいですけど。ええ、じゃあ。そういうことで」 失礼します、と言うなり司は携帯端末をベッドの端へと放り出す。 「司、も、終わった……?」 「……」 つかさ?と顔を覗き込んだときだった、司は俺の腰を抱き抱え、そしてそのまま下から突き上げてくる。 「つか、……っ、待っ、ぁ、うそ、ちょ、待っ……ッ!」 「……電話、長すぎ。絶対あの人わざとだよ」 「っ、ぁ、ひ……ッ!や、だめ、つかさ……つか、ぁ、奥ッ、だめッ、つかさぁ……ッ!」 「……はぁー……っ、生殺し……キツ……」 「取り敢えず、一回出させて」なんて、言いながらも揺さぶるようなピストンを止めない司に俺は言葉を吐き出すこともできなかった。 「ぁ、つか、さっ、つかさ、ッ、や、もっ、ゆっく、り……っ、ゆっ……ぅ……〜〜ッ!」 ローションが溢れようがお構いなし、硬く勃起したブツにごりごりに押し潰されるだけで脳汁がどっと滲み出し、何も考えられなくなる。さっきまで撫でられるくらいだったのに、いきなり腰を捕まえてしつこくハメられ、逃げようとしても抱き締められて更に深く突き当りをねっとりと突き上げてくるのだ。気持ちいい。なんて死んでも言いたくないけど、これだ、これがほしかったと思ってしまう自分には死にたくなった。 「っ、原田さん……可愛い、ちゃんと我慢できたね、それに一人で挿入もできたし……っ、偉い偉い」 「っ待っ、ぁ゛、あっ、やだ、つかさ、そこいやだっ、やだ……っ!」 「ここが良いんだ。……中、すごい痙攣してる」 快感を逃さないように腰をやんわりと抑えつけられ、本来ならば早々触れられることないそこをこれでもかというほど亀頭で舐られ、隈なくしゃぶり尽くされるのだ。司の声も気持ちいい、腰も、触れられるだけで快感を余計高められるみたいで自分が自分じゃないみたいで怖かった。 結合部から下品な音を立てローションが溢れ、それでも構わず司は更にペースを早めた。最早声にもならなかった。やり場のない手を司の背中に回し、俺は落ちないようにするのが精一杯だった。 長い間のようにも、たった数分の間のことのようにも思える時間だった。根本まで挿入された状態で腹の奥底に吐き出される精液の熱を浴びながら、俺はただ呼吸を忘れていた。

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