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第4話

学校では、一日あの蓮という男と琴理のことばかり考えていた。 琴理の肩を抱いたりとか、おでここっつんことか。 琴理もそんな過剰なスキンシップにも慣れた感じで接していたし。 なんだよ、あいつ。琴理もなんだよ。もう。 ずーっとそんな感じでもやもやしていた。 「では、次のページを西園くん、読んで」 おかげで、先生に指されたことにも気づかずに窓の外をにらんでいた。 「西園くん?」 隣席のアキラが慌ててつついてくれて、ようやく気づいた。 「あ、え、えーと……なんだっけ」 「25ページ読むんだよ!」 耳打ちしてもらって、ようやく教科書を開く。急いで25ページを開いて読んで、何とか事なきを得た。 授業が終わって休み時間。 わいわいがやがやとアキラとその前の席のハジメが僕の方を向いてにやにやする。 「どーしたんだよトーマ。授業中にボケるなんてさあ」 「何?なに?悩み?何の悩みだよ?」 嬉しそうにハジメが人の心をえぐろうとしてくる。 「べ、別に悩みなんか……」 僕が唇を尖らせて少し俯くと、アキラが吹き出した。 「もー!トーマは分かりやすいところがいいよねえ。何か悩んでんでしょ?何?恋?恋なの?」 「はあ!?全然ちがうし!」 「確定。恋だな」 アキラとハジメが顔を見合わせて頷く。 なんだよこいつら!こういう時ばっかり仲良いんだよ! 「おいアキラ、さっきトーマが指された時、どこ見てた?」 「えっ、うーん……あっちの方……かな」 アキラがぼんやりと僕がさっき見ていた窓の方を指さす。よく見てんな! アキラとハジメがそろって窓の外を見る。 「さっきは二組が体育の授業やってたよな」 「ほうほうほう……二組って誰か可愛い子いたっけ」 ハジメがにやにやする。 「あんまり知らないけど……木戸さんとか人気あるよね」 「あー。俺はちょっと元気すぎて苦手だな。トーマああいうのがタイプなのか?」 「だから悩んでないっつーの」 「はいはい。木戸さんは違う、と。あ、先生は?二組の輪島先生美人じゃん。しかもおっぱい超でかいし」 「え、トーマ年上好きなの?」 「なんで先生なんだよ」 「お!おい!分かったかも!」 ハジメが興奮気味に顔を寄せて声を潜めた。 だから恋の悩みじゃないんだけどなー。 「外じゃねーんだよ。手前!高橋さんいんじゃん!」 「意外!それは同クラ!」 高橋さんというのはちょっとはかなげな感じで色白で小柄な、いかにも女の子という雰囲気でうちのクラスの人気ナンバー1の子だ。 「高橋さんかぁ……確かに可愛いもんなぁ。お似合いじゃん」 「だから違うって」 「いいんだよトーマ。素直になれって。一回お前んち呼んでみろって。絶対態度変わるから」 「トーマの家豪邸だもんねー。僕執事の人とか初めて会ったもん」 ……あ、アキラ、ニアピン。 ◇ ◇ ◇ 学校が終わって家に帰ると、琴理がいつものように出迎えてくれた。 「おかえりなさいませ」 「ただいま」 琴理はブレザーを脱がすと、ブラシをかけてクロゼットのハンガーに掛けてくれる。 それが終わってから、琴理の服に顔を埋めると、僕はすうっと深呼吸する。 「んー、中華の匂いする。何だろ。回鍋肉?」 「ふふ。惜しいですね。酢豚です。まだお酢を入れてないので今日は難しかったですね」 恒例の夕食当てクイズだ。ちなみに悔しいことに僕の勝率は5割を切っている。 「まだお夕食までは時間があるので、ゆっくりなさっててくださいね」 「はーい」 やりかけのゲームしよっと。

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