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第5話

夕飯は食堂で食べる。 昔は大きなテーブルを置いていたけれど、琴理と二人きりになってからは、四人掛けのテーブルに買い替えた。 「琴理、酢豚美味しい」 「ありがとうございます。ふふ」 僕は酢豚とご飯をおかわりした。 空になった皿を乗せたお盆を持って、琴理が食堂を出てキッチンへ戻っていく。 僕は一人になって、ふと今朝の蓮とかいう執事のことを思い出した。 やっぱりまだちょっと腹が立つ。 琴理は僕の琴理なのに。あんなにべたべたするなんてムカつく。 『小鳥ちゃん』だって。あー!もう!なんだっての!! 「お待たせしました」 琴理が戻って来た。席に着くのを待って話を切り出す。 「今朝来てた人、誰?」 「香子様にお仕えしている執事です。偶然昔同じ学校に通っていたもので、たまに会うのです。今日は先日私が替わりに買った蜂蜜を受け取りに来ておりました」 「香子おばさまの!?……あ、そうなんだ」 香子おばさまは、僕の遠い親戚だ。綺麗な人だけど派手好きで、確かに顔のいい執事が多くいた気がする。 「私が留守にする間、替わりに冬真様のお世話をいたします」 え?あいつが? 「やだ」 僕はそう口走っていた。 僕と琴理の家にあいつがずかずかと入ってくるのは嫌だ。 案の定、琴理は困った笑顔で箸を止めていた。 「えーと、名前何だっけ」 「蓮、です」 「ああそう、蓮が来るくらいなら、僕は一人で大丈夫だから」 「え?お一人、ですか」 「うん」 「冬真様をお一人にするのは、私も心配なのですが」 「大丈夫。僕だってもう12だよ?一日くらいなんとかするよ」 「しかし丸一日というのは初めてですし……」 逆に琴理の方が不安そうな顔になってきた。 「いいの。決めた。僕は一人で留守番する」 断固として言い張ると、琴理は眉間にしわを寄せた。 こうなったら僕は意地でも退かないことを知っているからだ。 「そこまでおっしゃるなら、試してごらんになってください」 額をおさえた琴理がため息とともに降参した。

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