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第7話
……。
…………。
……眠れない。
いつもなら、1、2、3でグーzzz……とは言わないものの、ベッドに入ってしばらくしたら眠ってしまうはずなのに、妙に目がさえてしまって眠れない。
寂しいとか、そういうのはない。ないんだけど……眠れない。
一回諦めて灯りをつけて、本を読んでみたりしても目が覚める一方だ。
ふと、思いついた。
一瞬迷ったけれど、僕は枕を抱えると、部屋を出て一階に向かう。
ブルーの兎のオーナメントがかかったドアを開ける。
兎は、昔僕が作って琴理の誕生日にプレゼントしたもの。
そう、ここは琴理の部屋だ。
本や小物などが多くて一見ごちゃっとして見えるが、琴理なりの規則があって、整頓されているのが分かる。
目指すは部屋の一番奥、琴理のベッド!
僕は持ってきた枕をベッドに向かって投げると、僕自身もベッドに向かってダイブした。
羽毛布団が僕の体を受け止める。
掛け布団の中に潜り込んで体を丸めると、琴理の匂いがする。
甘くて、清々しい匂い。
お菓子と洗濯物の匂いにも似てるかな?
持ってきた枕を抱き枕がわりに抱え、しばらくもぞもぞしていると、僕はいつの間にか眠っていた。
目が覚めたのは、いつもより遅くなってからだった。
ベッド横の窓からは、高い位置から太陽の光が降り注いでいる。
しばらく自分がどこにいるのかわからなくてぼんやりした後、はっと覚醒した。
そういえば琴理の部屋で寝たんだっけ。
大きく伸びをして、そのまま、またベッドにぼすんと倒れこむ。
あーあ、早く琴理帰ってこないかな……いや、なんでもないし。何も考えてないし!
ふるふるっと頭を振って時計を見ると、もう10時だった。
朝ご飯を食べなきゃね。
冷蔵庫を開けて、朝食の準備をする。
朝はスープとサラダとトーストした食パンだ。
うん。美味しい。量もちょうどいい。
でも!僕はフレンチトーストが食べたい!
どうしても今すぐ食べたい!
どうしようか。うん。作ればいいじゃん。
作り方は、琴理のを散々見てるから覚えてる。
卵と牛乳とお砂糖を使うんだ。
思い切った僕は、朝食のデザートにフレンチトーストを作ることにした。
わっ!牛乳ちょっと零しちゃった。
あーあ、卵の殻が……。
お砂糖入れて、混ぜて……また零れたー!!
食パン浸して、浸し……器間違えたかな?食パンが浸からないよ?
えい、牛乳足しちゃえ。
甘いのが好きだから、お砂糖ももうちょっと入れちゃえ。
んー、うん!なんとなくそれっぽいのができたんじゃないかな?
これでパンに液が染みるまでちょっと待つんだよね。
キッチンの椅子に座って足をぶらぶらしながら数分待ってみる。
もういい?もういいかな琴理?もういいよね?
うん、もうよし!
フライパンを温めて、バターを溶かして、ひたひたになった食パンを……食パンを……やわやわすぎて掴めない!
スプーンでも駄目だったので、フライ返しで頑張ってフライパンに移した。
途端にジューッといい音がする。端っこちょっとちぎれちゃったけど、まあいいや。これも焼いておこう。
うん。なかなか上手くいったじゃん。
僕天才?
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