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ごちそうさま

徐々に熱が奪われていくような感覚が怖くなくなったのは、いつぐらいだっただろうか。 在咲はぼんやりとそう思いながら、くしゃりと杜月の髪を撫でる。 空腹に耐えていた杜月は、やっとありつけた朝食を貪っている。 普段は小食で遠慮がちだが、今回ばかりは仕方がない。 いつもより勢いのある吸い上げと息継ぎのタイミングが心地よく、在咲は思わず笑ってしまった。 「……なに?」 「いや、杜月もこんなに腹減るんだなって思って」 「そりゃあ、三日も空けられたらさすがにさ」 「そっか。断食だもんなぁ」 悪かった、と在咲は杜月のウェーブのかかった髪をすくいあげてキスをした。 ふわりと香るシャンプーの香り。 また一つ家に帰ってきた実感が湧き、在咲は満たされる感覚を覚える。 「……意外と三日って、長かったな」 「だね……ごめん、もう少し食べていい?」 冷えてきた在咲の手を握り、杜月は申し訳なさそうに尋ねた。 (本当、可愛い人だよなぁ) くふくふと笑いながら、在咲は握ってもらった手に力を込めた。 「いいよ、いっぱい食べな」 俺が美味いならそれで良いや。 在咲は必死に血液を啜る杜月を見ながら、そう感じていた。 それから、「お前の血、匂いも味も全部好き」と杜月に言われたことを思い出す。 初めて食事を与えた日に、この世で一番美味いと微笑まれたのだ。 ふと在咲の首元から熱が引き、吐息がかかる。 顔を上げた杜月は、にんまりと笑っていた。 「ふふ、最高……ごちそうさま」

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