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ごめん

杜月の食事の後、在咲は少し眠るとソファーに沈み込んだ。 在咲の枕元に座り、杜月はその寝顔を見つめていた。 出張後で無理をさせてしまったと申し訳なく思いながら、指先で在咲の頬を撫でる。 「ごめんな、在咲」 * 杜月は生まれながら吸血鬼であった。 人の血も混じっていた為か、人と同じ食物でも栄養の摂取が出来たが、定期的な血液摂取は必要だった。 また、人と同じように老いるが、そのスピードはやや遅い。 生を受けて三十年になった今でも、見た目だけは学生と言われても納得出来てしまう。 杜月と在咲の出会いは、大学生の頃。 猛暑の日にぐったりとしていた杜月に声をかけたのが在咲だった。 そこから学年は違えど交流を深め、二人で会う時間が増えていった。 そして、先に卒業する杜月の祝いをした夜。 もう会わないと腹をくくり、酒の力も借りた杜月は、密かに在咲に心を寄せていたことを打ち明ける決意をした。 人に紛れてはいるが、他人とは違う雰囲気を纏う杜月は孤独だった。 周りに人はいるけれど、どこか皆対等には見てくれなかった。 そんな中で唯一、在咲は臆さずに同じ場所で友として傍に居てくれたから。 だから、好きになってしまった。 だけれど、離れなければいけない。 友人が自分の事を好きだと知ってしまったら、今まで通りには居られないはず。 だから自分の卒業を機に、杜月は全て明かして在咲の前から消えようと思っていた。 相手が離れていくくらいなら、自分から離れた気でいた方が楽な気がした。

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