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◇ ◇ ◇
「ん゛ん……」
寝起きで若干掠れた声を無意味にあげつつ伸びをして体を起こす。
枕元のスマホを開くと、時刻はとっくに昼だった。まぁ、昼まで寝れんのは休みの日の特権だな。
昨日は散々な目に遭いシャワーを浴びるだけでやる気が尽きた俺は、パンツ一枚のほぼ裸だ。若干寒い。
目元を擦りながら、いつも着ている部屋着のスウェットを身につける。くそ、関節イテェ。尻もまだ微妙に開いてる気がする。なにより乳首がヤベェ。
全身の違和感に悪態を吐いてのろのろとベッドから這い出し、欠伸をかみ殺しながらリビングへ続く扉をガチャ、と開く。
「休日だからってふざけた時間に起床とは、いいご身分ですね」
するとおはようございますより先に、相変わらず抑揚のあまりないローテンポな罵倒が投げつけられた。
犯人はもちろん、昨夜俺を好き勝手に調教して潰した極悪サディスト、三初だ。
「ふざけてんのはお前の口の利き方だろォが。誰のせいで体おかしいと思って……」
「自分でしょ。生産工場に納期ミスられて納品一日遅れるからイラついて、激しくしろとかなんとか」
「激しくされたのは乳首開発だけどなッ! お前マジで、あちこち弄るのやめろ。この歳で性感帯増やされたくねぇんだよ多少遠慮しろ」
「気持ちいいこと好きなくせになんで毎回後からうだうだと」
小馬鹿にしたような言葉で呆れられ、俺はふんとそっぽを向きテーブルについた。
テーブルにはスクランブルエッグとトマトのホットサンドが置かれている。
その向かい側でノートパソコンをカタカタやる三初が、自分の食事のついでに俺のも作ってくれるのだ。ちゃんと一杯分の粉で作ったココアもある。
──以前も何度か俺の家に来たことがある三初だが、こうやって泊まるようになったのはここ最近のことだ。
俺はストレス解消に。
三初はオモチャで遊ぶために。
会社でなんてもうしたくないので、家に呼ぶようにしただけだけどな。
プライベートでこうやって二人で過ごす時は、会社で二人で仕事して過ごしていたのとはまた距離感や態度が少し違う。
三初は、口の悪さと人を馬鹿にした態度は変わらないしあれそれと横暴だが、こうやって飯を用意してくれたりする時もある。
そんなことをされると俺だってなんだか悪い気がして、三初の食器やら歯ブラシやらを律儀に用意した。
いや、だって用意しねぇとあいつなんでも俺の使うんだぞ。
俺の寝間着すら奪うんだから、そりゃしゃーなし泊まり用の部屋着を用意してやるだろ? 毎夜裸で寝かせるほど鬼じゃねぇし。
あと、コイツの飯がうまい。
モクモクとホットサンドを豪快に頬に詰め込んで、しっかりと味を噛みしめる。歴代の彼女よりうまい。
お陰様でなんやかんや、三初が俺の家に泊まりに来るのには慣れてしまった。
マジでうまい。他人の手料理うまい。
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