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 ふてくされるしかないだろ。  正直、俺の能力があまり役に立っていないとかはどうでもいいんだ。 「俺の仕事なのに他人に、しかも後輩にフォローされたってのが気に食わねぇ」 「んー。しかも事実一人で仕切るより楽だったから気に食わねぇ、と」  よくわかってるじゃねぇか。流石冬賀。  むしゃ、とあんぱんを全て食べ切り、空の袋を握りつぶす。  目の前でカップそばを食べている冬賀は、俺が語る企画騒動の不満点を聞いて、それを正確に理解した。 「あの暴君め。暴君なだけあって、教育係の俺なんか要らねぇくらい抜け目ねぇかんな……他人の努力で評価されても嬉しかねぇンだよ俺ァ」  二つ目として用意していたジャムパンをバリッと開封して、中身にかぶりつく。  俺は確かに教育係だが、暴君が許されるくらい一人でも有能な三初なので、実質伝言係兼生贄だ。  それにそもそも、この企画の時がおかしかった。普段はアイツ、そんなことしねぇ。  三初は仕事に積極的じゃなかったから、取引先を黙らせるのはまだしも広告塔を探してくるなんて確実にめんどうがる。  トラブル回避の保険としてなら優秀だが、はなっから戦力として期待すると自分が困るのだ。扱いにくいが効果的な人材だ。  だから取り敢えず、繋ぎ止めておくために俺を首輪としてつけたのが、上の考えである。迷惑極まりねぇなちくしょう。  前にも言ったが、必要最低限しか仕事をしない。手助けもしない。それが三初 要。  だというのに今回俺をサポートしたのは、どういう風の吹き回しか。 「ケッ。そんなに頼りねぇ先輩だと思ったのか、アイツ。判定遅すぎるわ。出会って三年経ってんぞ? どんだけ俺の仕事見てなかったんだ自由人が」 「うんにゃ。シュウは懐かれてんよ? ミハをジワジワ攻略したのはお前だけだぜ」 「嘘だろ、攻略してあれならあれが最終形態かよ。もっと従順になれや」 「ミハに自覚ないからな、たぶん。わかりにくいから確信はねぇけど」 「あ?」  ワハワハと楽しげに笑われ、俺は訝しく首を傾げる。  意味は不明だが、意外と鋭い冬賀にわからないなら俺にわかるわけがない。  笑い終わった冬賀は汁を吸ってしなびたインスタントのかき揚げもどきを残念そうに見つめ、ふやけた天かすと化したそれをしょげしょげと諦めそばをすすった。  いつも思うけど、こいつの体の構成成分は大方そばと天ぷらなんじゃねぇか。汗とか、たぶんつゆの味がすると思う。 「でもよ〜。リサーチした市場に出張したり世の中の動向加味したりあーだこーだの草の根活動したのはシュウだろ?」 「あ? まあな。でもそういうのは担当者として当たり前だと思うぜ。絶対やることじゃなくても、できんならやりゃあイイ」  ふてくされたままジャムパンをかじると、痛いくらいの視線を感じた。  視線の持ち主はもちろん冬賀だ。 「……ンだよ?」 「いやぁ、シュウはいい子だなぁ」 「人の頭を勝手になでんな。せめて許可を取れ」  なぜかなでなでと頭をなでて子ども扱いをされ、俺はより一層ふてくされた表情にならざるを得なかった。

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