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 クソ……! コイツ、いつもいつも神出鬼没で気がついたらそばにいやがる。  俺の寿命によくねぇ。こう、ちょっとずつ出てこい。マジで。  和気藹々と話している二人を尻目に紙パックのカフェオレをジュウウウ、と飲む。カフェオレでジャムパンを胃の奥へ流し込んだ俺は、息も絶え絶えにどうにか現実へ生還した。 「こ、この欲求不満ド変態……!」 「まあ確かに欲求不満ですよね。今すぐ御割先輩の口に焼きごてを突っ込みたい欲求過多です。この勘違い残念ド変態が」 「それが先輩に対する発言か!」  痩せたパックを少々乱暴にテーブルへ置き、フンッ、とふてくされる。  この男には一返すと十投げられるのだ。ホワイトデーの三倍返しの比じゃねぇぞ。  食事を終えた後なのか手にはなにも持っていない三初だが、ふてぶてしいことにのっしりと俺の背中へ乗りかかってきた。 「オイなにすんだ。どけやがれ」 「今のって八坂からですよね。ワッフル一つで行くんですか」 「聞けよ」 「おー? シュウはワッフル一つでどこでも行くなぁ。ザラメのついた大きいやつなら、飴玉一つでも雑用一つやってくれるぜ。俺も何度購買のパン買い競争委託したか……」 「それは昔の話だろうが」 「昔からチョロかったんですね」  言わせておけば、このマイペースコンビめ。誰がチョロいんだよコラ。  甘いものは全世界で愛される素敵なものだろうが。俺が愛してなにが悪い。ケッ。今は飴玉一つじゃ動いてやらねぇかンな。舐めんなよバカヤロウ。  ドスの効いた声でそう言うと、冬賀は「今ならなに渡せばパシられてくれるんだ?」と小首を傾げた。  まあ今なら当然、チョロルチョコのバラエティパックだろ。  大人の俺を使うんだから、大人の財力を使ってもらわねェと割に合わん。 「断る選択肢ないのか」 「こういうところがかわいいだろー」 「まぁ愉快ですよ。体臭が甘いので甘党は隠しきれてませんし」 「お、そういえば昔から甘かった。ミハは鼻がいいな」 「そうですか? 周馬先輩はそば臭いです」 「まじでか。んじゃお前はどうだろ。おいシュウ、ミハの匂いを嗅いでくれよ」 「断固お断りだしお前らは人を自然体で小馬鹿にすンのやめろ。というか俺を小馬鹿にすンのをやめろ大馬鹿マイペースコンビが」  あんぱんに続き残りのジャムパンも全て胃に収め、俺は連続休日出勤をこなした後と同じくらい死んだ目でズバッと冷たく言い捨てた。 「要ーどこだよー! もう帰ろうよー!」  そんなカオスな空間に聞き覚えのある貧弱な声がととして響いた。  暴君の幼馴染みとして日々苦労しているかわいいほうの後輩の声だ。悲鳴じみたそれが聞こえた気がして、キョロキョロと周囲を見回す。  どこかと思えば、案の定食堂の返却口のあたりで「なんで三日に一回ぐらいしかじっとしといてくれないんだよー!」と叫ぶ平々凡々な中肉中背の地味男がいた。  やっぱりあれは、いつも暴君に小馬鹿にされている三初ベテラン被害者──出山車 真じゃねぇか。だと思ったぜ。  ということはこの野郎、後片付けを押し付けた上で許可なく俺たちのいる場所に来たのかよ。  なんてやつだ。  俺はまだしもそういうのばっかはダメだろ。友達大事にしろよ。いつか三初は友達がいなくなるし、出山車がかわいそうだろうが。  ……というのもそれなりに何度も言っているが、一切聞かないところが三初が暴君たる所以である。

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