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口枷のせいで言葉を発せないため視線で縋ると、三初はベッドの下に用意した箱から、ローションボトルといくつかの謎のオモチャを取り出した。
「彼氏くーん。あーそーぼ」
それらを手ににじり寄る、満面の笑みのイケメンクソフェイス。
都合よく用いられる彼氏表現。
「ふぉァっ……!?」
途端、ゾクゥ……! と悪寒が背筋を走り、俺は反射的に逃げ出そうとシーツの上で波を作った。
三初のあの箱は、パンドラの箱だ。
なにを隠そうこの拘束具も、あそこから出てきたのである。
そういう三初曰く〝素敵なモノいーっぱい〟な調教グッズの収納ボックスが、あのオモチャ箱だ。
なので断言する。絶対にろくなものを持ってきていない。
俺はやはり、いつも速やかに気持ちよくしてもらえない運命にあるのだ。
ファッキン三初。
好きだけど心底死んでほしい。もしくは一回俺にすることを仕返しさせてほしい。
そうこうモゾモゾと身動いでいる間に、三初がベッドの上へ戻ってきた。
俺の腰を掴んでグイッ、と仰向けに引き寄せると、足をガパリと全開に開けさせる。
背中にやたらフカフカとしたクッションを挟まれたので体勢の割に体は楽になったが、そういう問題ではない。
謎の気遣いのおかげで、赤く腫れた肉茎がよく見えるのだ。
毛がないために惜しみなく晒され、暖房で温められた冬の空気が、弱い粘膜を生温くなでる。
「ふっ……」
本当に、言われたとおりの姿。
まるで小学生のような股座だ。
いたいけな陰部に不釣り合いな大きさを持つ大人の性器がそそり勃ち、酷く矛盾した背徳感を感じた。
瞼がわななき、ゴクン、と唾を飲む。
自分が確かに変態的でいやらしい体へと変えられてしまっている事実が、あまりに羞恥を掻き立てるのだ。
ヒクン、と震える屹立から溢れる蜜が恥ずかしげに透明な糸を引いている。耐え難く淫猥な光景から逃れたい俺は、押さえられていても足を閉じようともがいた。
「閉じちゃダメって言ったでしょ?」
「うぁぅ……ッ!」
すると言いつけに背く挙動を咎めた三初が、熱く脈打つ肉茎の根元に、冷たいなにかをパチン、とはめ込んだ。
突然陰茎の根元を無機質なものに締めつけられ、目を見開く。
痛、くはねぇけど、キツい。なんだこれは。
生理的に潤んだ瞳で捉えたそれは、張り詰めた自身の根元にミッチリとはめ込まれた薄桃色のシリコンリング。
すると反応する間もなくボトルを逆さに向けられ、俺の腹にドロドロと粘度の高いローションが降り注いだ。
「ンッ……ふぇへ、ッ……ッ」
「ん? あぁ……すみません、冷たかったですか?」
「は……ッ、ぅあッ……! く…ッふ……!」
チュウ、と不意打ちで乳首を吸われ、快感で大きく背が仰け反り、背骨が軋む。
流石にローションで汚れるのは嫌だと思ったのか、三初はシャツやインナーを脱いで、上裸になった。
再度唇を這わせ、早る胸の鼓動を伝える胸元を、愛撫し始める。
歯で、舌で、爪で、唇で、吐息で。
俺を追い詰める手段は、豊富だ。
ハニーブラウンの髪越しに引き締まった背筋が見えると、女の背中とは全く違うのに、ドキッと胸が高鳴った。
服を脱いだせいで触れる三初の素肌が、やけに心地いい。
俺ばかりが乱されていたが、やっと同じ熱を感じてくれるのかと、期待に呼吸が荒くなる。
「あっ……、あぁ……ぁ、あっ……」
片方の手ははしたない肉茎をいたぶるまま、三初は体を寄せて、胸の突起をその気にさせる。
固く尖り始めた乳頭をカリカリと歯でしごかれるだけで、断続的な淡い嬌声が漏れた。
恐怖と反抗心で少し萎んでいた射精感がすぐにまたムクムクと湧き上がり、無意識に手を動かそうとしたせいで、背中とシーツの間でカシャンと鎖が鳴った。
──イキたい、イキたい、早く……っ!
背筋を這い上がり脳を痺れさせる快楽が、思考回路を蕩けさせる。
クチャクチャと粘ついたローションを得て滑りを増す手淫と共に、敏感に調教された乳首を愛撫され、行き場を求めた快感の熱が下腹部から肉棒の先を目指し、沸騰するのがわかった。
しかし素直な体の反応に対して、根元のリングが尿道を塞ぐせいで、出すことができない。
「ッ、ん…ふ……ッふぁんうぇ、いひふぁ、ぁぁ……ッ」
俺は泣き出しそうな息を吐きながら、首を振った。
ビクビクと全身が痙攣し絶頂を迎えようと暴れているが、ちっともとごった熱が解放されないのだ。
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