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 身悶える俺を弄ぶ三初の舌は、ヌルリと滑ってへそのあたりにたどり着き、くぼみにキスをしてから、続いて哀れな肉棒を戒めるリングに絡みついた。  チュウ、とリングにもキスをされ、全てがさらけ出された俺の足の間で、三初のあたら整った顔がニンマリと笑い唇を舐める。 「ふふぁ、っあ、ぅ」 「出せないでしょ? いじわるじゃないですよ。我慢したほうがいっぱいキモチイイから、してんの。俺はね、先輩をとびきり気持ちよくしてあげたいんです。愛ですよ、愛」 「──んあっ……!」  そう言った三初の指が一息に二本、なんの前触れもなくグチュッ! と窄まりを割り開いて、根元まで突きこまれた。  わずかな痛みと異物感と共に狭い肉筒へと侵入され、俺は首を仰け反らせてギュゥゥ……ッ、と指を食いしめてしまう。  たっぷりと追加されたローションのおかげで、ヌジュヌジュと嫌な音をたてながらも、俺の体はさほど抵抗なく三初の指を受け入れる。  けれど元々そういう器官ではない場所なため、当然内部はとても狭く、窮屈だ。 「ふッ…はん……っ、あ、っ……」  それでも俺の体は、中に異物を挿れられたら奥を開いて呑み込むように躾けられていた。  意思とは反して柔らかく収縮し、三初の指を肉穴の深くへと誘うように、うねりを帯びて蠕動する。 「あらら。お待ちかねだったかね……先輩の中、めちゃくちゃ悦んでますよ」 「ンく、ぅ……んッ、ンッ」  誰のせいでこんな体になったのかわかっているくせに、意地の悪いクソ野郎め。  わざとらしいセリフと共にクスリと笑われ、俺は汗ばむ肌を揺すった。  悔しいが、確かに俺は指を二本挿れられただけで、腹の中がキュウキュウと期待に疼いてしまう。  だからこそ、解放できないまま襞を擦り、掻き回されるとすれば、気が狂いそうなほどの拷問に等しい。  口枷のせいでやたらに分泌される唾液を、ゴクリと飲み込む。  逃げ出そうともがくこともできず、視線で抵抗することしかできない。  まるでまな板の鯉だ。  いや、手足を縛られボイルされるカニかもしれない。どっちにしろ哀れな猫のエサには違いない。 「両方よくしてあげますから、いっぱい中イキしてくださいね?」  抵抗虚しく、三初はやにさがって舌を伸ばし、先走りが滴る肉棒をおもむろに熱い口内へ招き入れた。 「ふあ、ぁ、う……っ」  剃毛を受けて敏感になった肉茎を包み込む艶かしい口腔内に、息が詰まる。  溶けてしまいそうだ。  喉の入口を先端が擦る感覚に、腰が浮き上がって喉が仰け反る。  それと同時にカギ爪状に曲げられた指が、心得た動きで前立腺を探り当て、そこをトントンと規則的にノックし始めた。 「ふぁうぇ(やめ)ッ……! ッひ、あッ……ッぁ、あ、あぁ、ぁあッ」  やめろ、と言った声はすぐに喘ぎ声に変換され、二本の指が交互に動くヌチャッヌチャッとローションと腸液が混濁する音が耳朶を嬲る。  腹の裏側から強く押し出された蜜が、三初の舌根をジワリと濡らす。  やたらに上手い舌使いで口淫され、わざと淫猥なリップ音を奏でて煽られる。  粘膜から浮き出る腫れたしこりを執拗に押しつぶされると、電流のような快感が脳髄まで走り抜けた。  今すぐ吐精したいほど昂り、脈打っていた肉棒が三初の口の中でしくしくと泣き出すが、それでもやめてもらえない。  俺の好みのテンポで延々と突き上げ引っ掻き、同時に喉奥で亀頭を絞られる。  コイツは俺の体を知り尽くしている上に、上手すぎるのだ。 「あ、んやっ……やぇお、っぐ、っやぇおっふぇ……っ」  俺は屠殺されると知った養豚場のブタのように途切れ途切れの悲鳴をあげて、必死にやめろと求めながら仰け反った。  キツく締めつける尻穴に指を挿れ、空いた手のひらは陰嚢を揉む。  大して動かない腰を引こうと振れば、前立腺をグニュ、と押し上げられて背筋がブリッジし、自ら腹を突き出すように跳ね上がる。  転がることも起き上がることもできず、ただひたすら性感帯へ与えられる暴力的な快感の渦。  気持ちよすぎるのは苦痛だ。拷問だ。──死んじまう……っ! 「あぁぁ……っん、んん……っうぅぁあ……っ」  こうして熱烈に三初に口で慰めてもらったのは初めてなのに、それを気にする余裕なんて俺には一欠片もなかった。  手も足も出ないくせに、呻きとも喘ぎともつかない獣のような声で鳴きながら首を捻って痙攣する。  イキたくてイキたくてたまらないまま射精を禁じられパンパンに腫れた敏感な肉棒を、口の中でめちゃくちゃに唾液とかき混ぜられちゃあ、じっとなんてしてられない。  溢れ出す蜜をジュルッと吸い上げられたかと思えば、唇を窄めて搾り取る。  出せないものを搾る動きに悲鳴をあげれば、今度は戯れに茎に歯を添えて、カプ、カプ、と痛みと恐怖を与える。  同時に多くの刺激を刷り込まれて、頭が混乱し気が狂いそうだった。  尿道口がクパクパと苦しげにヒクついても、根元が詰まっていては生殺しだ。  なのに絶え間なく愛撫は続き、内壁や竿を擦られながら肉茎を吸い上げられ、噛んで、締めて、混ぜて、突いて、転がろうとしても押さえ込まれてまるで逃げ出せない。  深く呑み込んでは食道で扱かれ、引き抜けば先端を舌で嬲られる、恐ろしい快感。  室内に響く俺の呼吸と喘ぎ声、それからねばっこい音が混ざって耳を犯す。  ヌチャヌチャヌチャヌチャ。クチュクチュ、パチュッ、ゴクン。変な音だ。体の中から外から、俺を追い込む酷い音。 「みふぁ、ッあ、ッひ、ッ、ッうッ、う──……ッ!」  漏らしてしまいそうな感覚が湧き上がって高まり限界を迎えた俺は、悲鳴をあげてビクンッと身を弓なりにしならせた。  小刻みに痙攣する肢体。イッた。終わりだ。やっと終わった。めちゃくちゃしやがって。  ついに一滴も出さずに絶頂を迎えて白む脳裏に、解放の二文字が浮かぶ──が、三初は俺をいじめる手をちっとも緩めない。

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