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 しかし画面の中のマルイは、どうもマヌケなショットばかりだ。  ゴミ箱にはまっていたり風呂に落ちてほっそりとしていたり、ねこじゃらしに必死になりすぎたのか腹を見せて伸びている。  どんくさい写真ばかり撮っているところを見るに、コイツは根っからなんにでも弱みを確保し愉快に笑う悪魔なんだろう。  なりゆきとは言えペットにすらサディストとは。軽く引く。  ペット部屋なんて作っているからにはかわいがっているのかとも思ったが、理由は「毛がつくのも壁湿気るのも嫌なんで隔離」だった。隔離って言い方やめろ。 「つーか名前テキトーすぎだろ。ナガイとマルイって見たまんまじゃねぇか」 「わかりやすいでしょうが」 「名前らしさ皆無だろ」 「寿限無寿限無より合理的でしょうに……じゃあ先輩ならどう名付けるんですか?」  ほれほれと振られて思いついた通り直感で答えると、全力で哀れまれた。  な、なんでだよッ?  モシゲとネコキチ、かわいいだろうがッ!  ぶすくれた俺は目の前に差し出されたままの三初のスマホの画面を、投げやりにスイスイと好き勝手めくっていく。 「ケッ、猫とヘビばっかりじゃねぇか」 「まー見られちゃいけないものはそれらしい場所で管理してますからねぇ」 「見られちゃいけない……あ! テメェ俺のアレ消せ! もういらねぇだろっ」 「やですよ記念写真なのに」 「なんの記念!?」  俺を脅すために使っていたあの写真を消せとがなると、一瞬で却下された。  俺の悲惨な写真がなんの記念になるんだちくしょうめ。殺意記念か? 今すぐ自撮りしろよだいたい同等の記念写真だコラ。  こうなったら見つけて消してやるッ!  意地になった俺は血眼になって画面をめくり、全ての元凶を葬り去ろうと躍起になった。──そしてペイッ、と一枚めくった結果。 「は?」 「あ」  画面に映るは、動画である。  しかしそのサムネイルが見覚えのある人物であり、もっと言えば、かなり恥ずかしい状態の人物だ。  背後の三初がおっといけねぇ、とでも言いそうな軽い声をあげた。  おいやめろ。嫌な予感しかしない反応をやめろ。  ……そういやぁ半べその俺に容赦なく羞恥プレイを敢行しながら、妙に交換条件の連呼を強いられていたような気が……。 「…………」  ポチ、と再生ボタンを押す。 『す、好き、だ』 『フッ……んー?』  ダンッ! と強くタップし停止させる。  ゆっくり後ろを振り向くと、小首を傾げられた。  俺はそっと画面に向き直り、もう一度、恐る恐る再生ボタンを押す。 『好きだ、三初……っみはじめ好き、だ、すき、っひ、ぃひ……っ』  ダンッ! 「消去どこだ消去ッ!」 「はい壊れるから返してね機械音痴先輩」 「あッ!?」  間違いなく無許可の盗撮動画だと判明した瞬間消去を強行する俺の手から、スルリとスマホが奪われてしまった。 「待て待てッ、消したら返すから貸せよッ、消したら返すッ! もしくは死ね! 今すぐ地獄に猛ダッシュしたら許してやるッ!」 「まぁまぁ落ち着いて聞いてください。大の大人の泣き顔パ✕✕ン潮吹き告白ですよ? 普通に考えて動画撮るでしょ」 「どこの世界の普通に考えてだよッ! 鬼畜星のサドルールが地球で通用するわけねェだろッ!」  奪われはしたが諦めちゃいない。  ギシッとソファーを鳴らして背後に振り返り、逃げられないように三初のタートルネックのセーターを思いっきり掴む。  この犯罪上等アウトロー野郎がッ! 顔と力と金と口車でなんでもまかり通ると思うなよッ! 実際たいていまかり通る世の中だが、俺に関しては通さねぇッ!  絶対に逃がさん。  消すまで逃がさん。  これ以上いざという時の奥の手を増やされてたまるかってんだッ!

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