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真性のサドでもマゾでもない真性変態である間森マネージャーに問題を抱えていることがバレ、腹をくくってSMの相談をした後。
俺の相談への提案として、間森マネージャーは自分がマゾかどうか、いたぶられるとわかるんじゃないか、という話をした。
それは確かに一理あると思う。
俺は俺をマゾではなくノーマルだと思っているが、根拠を持つのは大切だ。
セレクトの奥には盛り上がったカップルや男たちのために、貸し出しのベッドルームがあるらしい。
ユニットバスのついた八畳のワンルームで三部屋しかないが、ノーマル、SM、病室と毛色は変わっていたりする。
料金は一律休憩五千円の宿泊八千円。
人手がないのと清掃の手間を考えると、安いだろう。
もちろんSMルームには専用の器具も揃っている。
ネタグッズやカメラまで、様々。
となれば、だ。
場があるならばやるしかないでしょう? という間森マネージャーの提案で、とりあえずイメージどおりの所謂SMプレイをしてみることになったのだ。
間森マネージャー相手でも三初相手の時と同じような反応ができるのであれば、俺は三初とのセックスが好きなのではなく、いたぶられるセックスが好きということになる。
理にかなってはいる。
しかしこのあたりで俺は、難色を示した。
直接は触らないし、服は脱がないのはもちろん、セックスは絶対しない。
それをクリアした上で終電を逃さずに帰れないとやらない、というのは前もって言ってある。
だがその全ての条件を承諾されても、間森マネージャー相手というのが、三初には地雷な気がしたのだ。
例えば俺は三初がパン一で誰かに鞭でしばかれたり罵声をあびせられていると、ただのそっくりさんか気まぐれに魔が差したかと思う。
それよりは俺に言わずに誰かを部屋に入れたり、仲良さそうにしているほうが嫌なタイプが俺だ。
でも三初は多分、怒る気がした。
自分以外が俺をいたぶるのは、気に食わないかもしれない。
なぜなら三初は基本的に俺以外に触らせることすらほとんどないくらい、心のパーソナリースペースが狭い男である。
付き合ってなかった頃は間森マネージャーと二人でお買い物、なんてシーンを目撃したが、付き合ってからは全くない。
忘年会で能力を立てているデザイン部連中に連行された時も、別に密着したり腕を組まれたりとかはなかった。触られるのが嫌いなんだろう。
だから三初にとっては俺が誰かと触れ合っているだとか、なにかしらの行為を行うことが、もしかすると不快なんじゃねぇか?
そう考えた俺はやはり断ろうとしたが、失敗。
間森マネージャーは三初の同族なのだ。サクッと丸め込まれてしまう。チョロいとか言うな。
はんなりスマイルで口八丁手八丁。
結局マナーだなんだと言われ、俺はシャワーを浴びされられるまでに至った。
〝マゾじゃない確信を得たら、受け身での主導権の握り方を教える〟
〝マゾだったら、サドの喜ばせ方を教える〟
そんな甘い餌でホイホイと釣られてしまった俺は、危機感や警戒心より魅力的な情報を取ってしまった。
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