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数秒抱きしめてから、三初の熱が離れていく。縋りたくなるが、手が動かない。
「三初……みはじめ……」
「ちょっとだけ、マテね」
カチャンと音がして、俺の手足の拘束が外され始めた。
このまま仕置きを受けるのかと思ったが、俺を解放しようと離れたようだ。
「ヤんね、の……?」
「俺の理性は強靭ですから」
三初は「俺が泣かせるのがイイんです。勝手に泣かれるのは趣味じゃない」と言いながら、足の拘束も外してくれる。
怒らせた時はだいたい体も弄ばれるのに、今夜はその気が失せたらしい。
間森マネージャー相手だとやめてほしいとしか思わなかったが、三初が相手だと、触れてもらえないことを残念に思った。体が痛いくせに馬鹿な俺だ。
解放された後。
立とうとしたがうまく立てず、俺は床にへたりこみ、自分が乗っていた生暖かい器具に抱きついた。
手足には金属が擦れた跡ができている。
なるほど、こうなるから三初は緩衝材のついた物を使っていたのか。
こんな傷が付くと、会社に行った時に目立つだろう。理由を聞かれても答えられないものだ。
迂闊な行動のツケが身に染みて、情けなくって顔があげれない。
ジワ、と涙が滲んでくる。
三初はいつもの威勢が萎えきった俺に、叱咤することはなく、やはり珍しくしゃがみ「おいで」と抱き寄せてくれた。
「どしたの、どっか痛いですか?」
「痛く、ねぇ……なんでも、ない……」
「じゃあどうして泣くの? 間森マネージャーに他になんかされた? あの人はもう潰しましたよ。なにも怖いことねーよ?」
淡々とした言葉だが、俺が気落ちする理由を聞き出そうとする三初に、そっと腕を回す。
言葉にするのはうまくできないものだから、頭に頬を擦り寄せ、俺は三初に好きだと伝えた。
ふぅ、とため息が聞こえる。
肩が震えると、三初は俺の頭をなで、もう片方の手で背をトン、トンと叩いた。
「泣かない。あんた泣き虫のくせに大声ださないから、余計気になるんですよ。一人で泣いて考えて処理しないで。俺に言って」
「ぅ、ふ……これは、自己嫌悪……」
「脳内反省会? アホですね」
言ったら言ったで切り捨てる三初に、瞳の潤みはドンドンと増していく。
それでも手つきが優しくて、離れることができなかった。
「ほんと……俺の前ではよく泣く。今日は、話聞く前に一方的に叱ったからかね……?」
「ちが、違う……」
「ん……先輩、自分で考えて動いたんですもんね。言葉足らずな俺が悪かったですよ。ごめんね」
「はっ……おれ、おれが、元々、勝手にきて……でもよ、く、薬飲まされ、て……う、起きたら、あんな、俺嫌だって……っ」
「は? 薬? ……それは、ふーん……」
三初が俺を甘やかすから、潤んだ目元を三初の肩口でグリグリと拭う。
ふーんと興味無さそうに言った三初は、「じゃあなおさら、ごめんだわ」と言って、バツが悪そうにため息を吐いた。
ごめんの意味はわからない。
三初に落ち度はねぇのに、こいつはいつも自己完結だ。
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