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04
『若竹煮ね。わかめ買ってきてください。後カニカマ。ついでにミックスナッツとクリームチーズ。猫の餌と洗剤も』
「パシリか俺は」
ここぞとばかりに雑用を頼まれるが、俺はいつも結局買って帰る。
気が向けば一緒に晩飯を食い、週末は気まぐれに泊まって、暇が合えば出かける普通の付き合いだが、それが落ち着くようになった。
そりゃあまあ、俺たちはよく喧嘩もするし、言い合いはしょっちゅうだ。
ドラマチックなことなんてなにもない。
おかげでふとした時、飽きるんじゃないかと心配になる。
俺の日常に三初との付き合いがノーマルとして組み込まれて、俺は結構、満足。相手がどうかはわからない。
でも三初は涼しい顔で俺と一緒にいて、あぁして俺が面倒を起こしても、他人の横槍が入っても、付き合いを続行しようと努力している。
居場所を聞いて迎えに来て、間森マネージャーが手出しできないようにもした。
(……うん)
なんだ、その、な。
思うとやっぱ、だらしのねぇ顔になっちまう。春って結構、暑い。……クソ。
だからたまには、俺もデレるというのが必要なのかもしれないと、魔が差した。
「なぁ」
『なんですか』
しばらく会話を続け、頃合いを見て声をかける。
落ち着かなくて意味なく耳の後ろを触り、気をまぎらわせた。
「お前、間森マネージャーに、キレたんだろ。凄い剣幕だったって聞いたぜ」
『……まぁ、んー……あー……や、そんなに? 気がついたら仕留めてただけで』
「社会的にもか。……じゃなくて、俺、全然似合わねぇこと、言ってやっから、ちょっと聞け」
『どーぞ?』
楽しげな声に羞恥が込み上げ、今すぐなかったことにしたくなったが、それじゃあだめだと思い直す。
うし、俺だってたまには素面でそれらしく、言ってやる。
男が本気でやりゃあ、なんでもできる、はず。スーハースーハー。深呼吸だ。
「まぁ、俺はこんな空回りばっかの、ダメな先輩だけどよ」
『お?』
「これからも、付き合ってくれよ。……要」
『…………』
スマホを押し当てていないほうの耳をついに塞いで、照れという瘙痒感に身悶える。
今度の三初の尽力に報いるため、俺は素直な気持ちをベッドでもなく酒の力も借りず、言い切ったのだ。
名前呼びは誠意の表れ。
ずっと気になってたしな。こだわりはないけど、いい機会だと思う。
しかし通話の向こうからは、どうしたことか沈黙しか返ってこない。
「? おい……なんか言えよ、要」
『なんか、……あぁ、……はい。承りました。今後とも末永くよろしくお願い致します』
「いや業務連絡かよ」
『うん。名前の件に関しましては私個人では判断できかねますので、一度持ち帰って検討したのち回答させていただきますね』
「取引先かよッ。しかもそれ否決する時の断り方だろうがッ」
やっと返ってきたと思えば突然のビジネス対応に、俺はパシンッと膝を叩いて訴えた。
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