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 ステータスが噛み合わない恋人イコール結婚詐欺師という単純思考とは、いかに。  兄が知らない間に結婚詐欺師に目をつけられたと思ったらしい美環は、キャリーバッグを置いてガビンッ! と両手で頭を抱える。  三初が結婚詐欺師?  違ぇよ。三初は俺と同じ会社に務めるしがないリーマンだぜ。  成果給を含めるボーナスがエグいけどな。  納得いかない仕事はしないが、受けた仕事はトラブルがあっても完璧である。 「いや、そもそも、ん……結婚は、まだ早ぇ……な?」 「な? じゃないんですけどね。法律的に」 「しゅ、修にぃ〜っ早く正気になってぇ〜っ! 修にぃの相手がイケメンならせめて剣桃太郎か空条承太郎みたいな人じゃないと、眼光の鋭さが釣り合わないんだよぉ〜っ」 「せめての範囲偏りすぎだなぁ……」  ゔぇえぇんっ! と泣き出す美環に、狂犬の妹はアホ犬、と納得する三初と、カオスな状況だ。  間に立つべき俺の頭がバカになっているので、ちっとも収まる様子がない。  ──ということで、原状回復をすることに。  まず恋人だというのを信じさせるために三初が「先輩、キスしてください。それから俺の好きなところトップスリー挙げて」と言った。  酔った俺は妹の前では恥ずかしいと思いつつも、三初が有無を言わせない笑みを浮かべるので、言うとおりにする。  それで信じさせた後は、話をするために俺を正気に戻す必要があった。  俺は小一時間ほどをかけて二人に散々水を飲まされ、頭を冷やされ、ついでにさりげなく殴られ、強制復活だ。 「……あぁ……なんだ、これ……」  ぼやん、と不明瞭な視界が徐々にハッキリしていくと、俺を覗き込む妹の顔が見える。  何度か瞬きをして、後頭部が温かいことを理解したが、理由がわからない。 「なんで俺、こんなとこで寝てんだっけか……」 「それは修にぃが三初さんの膝じゃないと寝ないってごねたからだよ!」 「…………嘘だろ。んで、なんでお前いんだよ……美環」 「それは私の住んでた社員寮が改装することになったんだけどマンスリーマンションが怖くて、修にぃの部屋に転がり込みに来たからだよ!」  だがすぐに後頭部が温かい理由が判明し三初の膝枕からそーっと起き上がる。  体はまだ幾分熱を持っていたが、意識はすっかりシラフに戻った俺であった。  飯を食いながらちょっといい酒シリーズをキャパを気にせず浮かれて飲んでいたあたりから、記憶が曖昧ではある。  その後はええと、なんとなく美環の声が聞こえたような気がすんな……結婚詐欺師だとかなんとか。なんだそりゃ。夢か。  トン、とソファーの背もたれにもたれかかり、目元を手で覆う。  まさか三初といる時に美環を家にあげるとは、酔った俺、マジで殴りてぇ。  変なことはしてないか、デリケートな問題である男の恋人だと暴露してないか、気が気でない。 (そのへんがこう、気になる……どうなってんだこれ、どう紹介すりゃいいんだこれ……ッ)  手を退けてチラ、と隣で足を組んで座り直す三初を伺う。  目であれそれがバレてねぇのか、と尋ねると、三初はブイ、と指を二本立てた。 「俺は止めとけって言ったのに、酔った先輩が抱きついて好き好き言ってたから二秒でバレましたよ」 「うん、目と目が合う瞬間三初さんが好きだと気づきました! 修にぃが!」 「よし、酒持ってこい。俺ァ今すぐ全部忘れてやるッ!」

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