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 されたぶんは大事にしてやりたいと思いながら、俺は時間をかけて汗と雨を拭き取り、三初の体を綺麗にしてやった。 「ん、ありがとうございます」 「ん。服取ってくるから動くなよ」  桶とタオルを片付けるために一旦退室し、いつも三初が着ているルームウェアを持って部屋に戻る。  三初は言ったとおり大人しくベッドの縁で寝そべっていたので、俺はせっせと寝間着を着せてやった。  時計を見ると、三初を見つけてから三十分程度が経っていることに気づく。  昼時はとっくに過ぎた時間だ。  腹が減っていたことなんか忘れていた。今もあまり思い出さない。  落ちそうな体をベッドの真ん中へ横にならせて、肩まで布団を被せる。  三初の口数は、元気な時よりもいくらか減っていた。  ありがとうございます、とは言うが、この状況が不本意なのだろう。  布団をかけた上からポンと軽く叩くと、赤い頬で黙りこくった。  なるほどな。どういうわけか……こいつは相当、弱った姿を誰かに見せることに慣れてねぇんだ。 「よし、熱さまシート貼ってやる」 「ゴホッ、いい。です。そのくらい自分で貼りますって……」 「うるせぇな。じゃあ俺がやりてぇから黙ってさせろ。いちいちガッサガサの声で文句言いやがって」 「はぁ……感染源殺したいわ……」  俺がやりたいだけの趣味ということにして丸め込みつつ、持ってきたシートのフィルムをペリ、と剥がして前髪をかきあげてやる。  すると誰が見ても高熱の顔で拒絶ばかりするクソ野郎はゴホゴホと咳き込みながら、もうどうにでもしてくれ、とばかりに目を閉じたので、丸出しのデコにペタリと熱さまシートを貼ってやった。  同居に際して渡された資料が役に立って、普段使わない薬や氷枕や体温計の在り処は聞かなくてもわかった。  熱を測ると、なんと三十八度八分。  平熱の低い三初としては、結構な高さだ。免疫と徹底抗戦しているらしい。  だからこそ、このウイルスはサイボーグ疑惑のあった三初を倒せたのだろう。  なかなか生きのいいウイルスである。  細菌兵器相手でも生きてそうなこいつを弱らせるとは、最強の風邪菌だ。風邪菌グと呼んでやる。風邪の王様。  そうしてとりあえずやれることを終わらせた頃には、咳や表情以外にも見てとれるほど、三初は不調が顕著に現れ始めた。  体温計を置き加湿器をつけて部屋を十分加湿した俺は、ベッドサイドに腰掛け、横になる三初の真っ赤に火照った頬にピトリと柔く手を当てる。  すげぇ熱。喉も、頭も痛ぇだろ。  熱くてダルくて寒気がする。  風邪というものはそういうもので、大したことないという態度をとるが、この発熱じゃ相当辛いはずだ。  なのになんで、当たり前のように余裕ぶった態度を崩さないのか。  こいつには、日常に、当然に、恒久に、天邪鬼がこびり付いている。 「ん……なに……? もう平気ですよ」 「テメェはいいかげん諦めろや。ンな一瞬で治ったら医者要らねぇわアホ」 「はいはい。じゃ……俺は大人しく寝てるんで、先輩はどこぞで好きなことしててくださいよ」  筋金入りだ。どうしたってそんなことをほざく大バカ野郎は無視に限る。  なにが先輩はどこぞで好きなことしててください、だよ。  うつ伏せのお前が見えた時、俺は一瞬すげぇ心配したんじゃねぇか。

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