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なにが好きなことしててください、だよ。
お前がうつ伏せになってた時、俺は一瞬すげぇ心配したじゃねぇか。
寝ても醒めても一緒にいるのが同居生活だから、嫌でも感情が掻き立てられるのだ。
構ってもらえないことやほんの小さなことへの不満も、なにかしてやりたいとか、頼られたいっていう気持ちも、増してしまう。
機嫌が悪いのか、とか、拗ねてるのか、とか、俺はそのほんの少しの変化を追いかけて、想像するだけ。
三初は全部気づくし、小さな呟きでも名前を呼べばほとんど聞き逃さない。
それぐらい俺といる時は、俺に全神経を向けているのだ。
だから三初は俺が目の前でよそ見をすると不満になる。ちゃんとわかっている。
もちろん俺が三初のことをちゃんと好きだということも、こいつはわかっている。
だから俺の意地を張った暴言には傷つかない。照れ隠しだとわかっているからだ。わかられていることも、なんとなくわかる時もある。
好きという言葉を貰えなくとも、俺には三初がちゃんと俺を好きなのだと、よくわかる。
いや、わかるようになった。
だからこそ……ちゃんと好きな俺でも突っぱねるところは、めちゃくちゃムカつく。
その程度の度量しかないと思っているなら、舐めるなとキレたいしやっぱ殴りてぇ。
三初のこと、俺は好きなところも嫌いなところもめんどくさいところも心地いいところも、全部ひっくるめて〝ただの三初〟だと思ってるのによ。ケッ。
機嫌の悪い俺は三初の頬をなでて、顎を取り、唇を親指でなぞって、じっと見つめた。
「俺は好きでこうしてんだって、ちゃんとわかれよ。なんでそんな強がるんだ、マヌケ。ぶっ倒れてた時点でグズグズだろうが」
一応、言葉は乱暴だが、声はとびきり優しくしたつもりだ。
ギシ、とベッドを軋ませて顔を覗き込むように身を寄せ、勝気に笑ってみせる。
やい、病人。
いつもよりてんで迫力ねぇ顔しやがって。
気だるさが増すと、三初の顔立ちには子供のような無防備な幼さが滲んでいた。
すると少し考えた三初だが、結局思考する力がなく、布団の中に目元まで沈んで狸寝入りを決め込もうとする。
中身も子供かよ。諦めんな。
なんの裏もねぇんだから素直に受け取って、我慢せずに弱っちまえ。
「……ゲホ……」
「なんだよ。まだ文句あんのか?」
「…………ありまくりでしょ」
唸りそうな勢いで尋ねると、布団の中からくぐもった声が聞こえた。
聞き取りづらい声で話し始めるのを、耳をすまして聞き入る。
「まぁ……あんたがそうしてほしいというのは、ちゃんと……わかるんですよ。だから、弱みを見せるのも、先輩にならいいかな、とは、思えるわけですが……」
ここまで言って、三初は黙り込んでしまった。
ポンポンと布団の上から肩を叩き、ほら、と無言のまま先を促す。
三初は余計深く潜り込んだが、ゆっくりと続く言葉を吐き出す。
「謎に暴君だ大魔王だ言われてようが、俺も……ただの男なもんで。……先輩に情けないとこはあんま、ね」
「は……?」
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