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06
そうして迎えた新コンビ始動。
俺は荷物を抱え、竹本と二人、都市部のショッピングモールへ一週間の出張だ。
それほど遠くはないが移動の手間を考え、出張扱いでホテルをとることになった。
もちろんツインだ。
竹本は絶望的な顔をしている。
失礼なやつだなコイツ。ダブルよりマシだろ。
荷物はホテルに預けて、渋る竹本を引っ張り開店前のモールへ向かう。
手荷物検査を経て入館証を発行してもらい、事務所で挨拶をした。
「六月から八月の夏季限定イベント〝夏、冷やしちゃいました。〟で七月第一週の出店を担当させていただきます。竹本です」
「初めまして、御割です。本日はよろしくお願いいたします」
「あ! リューシンの担当者さん方ですね。いつもお世話になっております。責任者の山場 です」
名刺を渡して挨拶をすると、恰幅のいい小柄な中年男性である山場さんは、笑顔で応対してくれる。
ちなみに、リューシンというのはうちの会社の名前。基本はローマ字で表記しているが、元々は漢字だ。
衝立で区切られた応接スペースにて軽く説明を受けた後は、移動。
一週間お世話になる場所である、ノースモールの一階へと案内された。
朝早くに業者が入ったので、既に搬入作業は終わっている。
コーンで区切られ、ショーケースや冷凍庫等一式が布をかけられ置いてあった。
ここがこれから俺たちの臨時店舗だ。
山場さんと別れた後、ぐっとシャツを捲る。
「さ、やるぜ。販売の連中が来るまでに準備しておかないと」
「了解。あ、冷凍庫はずっと稼働してるから大丈夫。あれだ。御割はその、ディスプレイの準備優先で……いけるか?」
「ん、やる。力仕事はやるから、竹本はレジ設定してくれ。起動時間かかるだろ。パソコン繋げるから」
「おぉ、助かる。試食のスプーンとカップは……」
「大丈夫。来たやつ全部在庫確認してリスト上げるし、セットもする。立ち上げに集中してろ」
「ほぉ〜。オーケイ!」
印刷しておいたディスプレイ完成図案を見ながら、俺は仮店舗を設営し始める。
事前に過去の資料を見てトラブル予測を立てていたので、準備は万端だ。
(問題は接客だが……まぁそれは喫茶部門から来てくれる接客メンバーに任せるしかねぇな)
夏味トポスのみを購入できる棚を装飾しながら、内心で息を吐く。
竹本も「俺らは基本的に列整理とか宣伝、在庫と売上管理のマーケティング担当だから」って言ってたしな。
ごく稀にイベント系で接客を担当した時の残念な記憶を封印し、首を振る。
宣伝企画の仕事の延長線上にこういうことがあるなら、それも俺の仕事。
一週間出張ということのイコールを考えないようにして、自分のやるべきことをやる。
「どうにかなる。……どうにかするッ」
俺は小さく呟き、やれるだけのことをやることにした。
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