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13※微
意味もなくゴロンと寝返りを打って、下半身に寄せたはずの上掛けを、肩まで被りなおす。
『ヤりたい? 抱かれたい? 犯されたい? セックスしたい? どのスイッチが入ったんですか? 教えてほしいなぁ。そしたらそのスイッチ、もう一回入れてやりますけど』
「っ……」
通話の向こう側でサディストな暴君がすこぶる愉快げな笑みを浮かべているのが、嫌でもわかった。
(くそ……あっちィ……)
熱のこもった息を吐く。
どれも同じ選択肢なくせに、いちいち聞くなと言いたい。
いつものことだが、選択肢に見せかけて選択肢なんか用意してないのだ。
『ね……俺と、テレセします?』
含み笑いを込めて耳元で囁くセリフが、心底忌々しい。
けれどズク、ズク、と陰茎と下腹部の根元と奥がむずがゆくて、言いなりになるのがムカつくというしかめっ面で、声を絞り出した。
「テメェのそういうところ、マジで嫌いだぜ、クソ野郎」
『フッ。大嫌いって思ってても別れないんだから、つまり大好きなんでしょ』
「知るか、バカが」
『意地っ張り』
ケッ、いちいち言うなよ。
そんなこと、とっくに知ってる。
軽口を叩きあいながら通話をハンズフリーにしてスマホを枕元に置くと、耳元で聞こえる話声がよりリアルになった。
ベッドに寝そべったまま、下着と下衣を足元までズラす。
目隠しのために立てた膝に、夏布団もかけた。
竹本が戻ると言っていた時間まではまだあるので大丈夫だとは思うが、一応だ。
夕食後のアイツの息抜きは十中八九夜の店なので、早く帰ってくることがないとも言えない。早漏だったら早めに戻るだろう。
「ん……」
剥き出しの陰茎に触れて、擦らずに根元から先端を揉む。
その気になっている自身を三初の手つきを思い出しながら直接刺激すれば、手の中で容易に質量を増し始めた。
アイツの触り方に慣れているせいだ。
一人でしていた時のやり方は、すぐに思い出せないくらい褪せている。
通話の向こう側から衣擦れの音が聞こえた。三初もベッドにいるらしい。
あのいつも澄ました顔をした野郎が一人で欲を処理しようとしている光景を想像すると、なぜか胸の鼓動が早まった。
(うぁ、マジか……俺に相手の一人遊びで興奮する属性があったとか、嘘だろ……?)
「……は、んっ……」
『なぁに興奮してんですか、先輩』
「うっ、別に、っ」
『くく、いいですけどね。俺も楽しませてくれれば』
俺に意図せず発覚したツボをくみ取られて、喘いであげましょうか? とからかってくる三初が憎らしい。
どうして声だけで俺の調子の変化がわかるのか。
これじゃあせっかく顔が見えなくても筒抜けである。
「く、お前、俺の、っ……聞くなよっ、ハンズフリー切れ」
『俺の想像力過信し過ぎだわ。俺がオナニー配信してるだけとか、萎えるんですが』
「っ俺はこんなことしたことねぇんだよっ」
『あちこち調教済みのふしだらな体して、いつまで経っても純情だなぁ』
「ほっとけッ」
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