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ヌルヌルとぬめりを帯び始めた屹立を擦る手を止めて、甘ったるい喘ぎ声を堪えつつ反抗する。
だがしかし、当然三初が俺の願いを素直に聞くわけがない。
テレフォンセックスなんて、人生で初めての経験だった。
僅かな笑い声すら聞き取れるのだから、相手も俺の僅かな呼吸すら聞き取っている。
そう考えると、恥ずかしくて死にそうだ。
そうやって駄々をこねる俺のワガママを、三初は鼻で笑う。
『俺だって初めてですケド? あー……声でもイイからシたいとか、初体験ですね』
「な、っ……?」
そして放たれた言葉が一瞬理解できなくて、ポカンとマヌケに口を開けてしまった。
(声でもイイ、って、んん、今すっげぇこと言われたような……)
『はいはい。だからさっさとヤりますよ。いつも通りのことやっときゃいいんですから、ね。わかりましたか。変態駄犬先輩』
「わかり、え? あ、あぁ」
けれど考えようとした思考回路を断ち切るように急かされ、俺は言葉の意味を理解できずに意識を逸らされる。
本当は俺に着信をかけるかかけないか一時間も悩んでいたことなんて、未来永劫知る由もない。
このセリフが三初語訳で〝俺だってシたくなりましたが〟だということも、俺にはついぞ理解できなかったことだ。
「あ、と、結局、どうすりゃいいんだ……?」
『そのまま、手ぇ動かして。ガイドしてあげますが……俺には見えませんから、ちゃんと聞いたことには答えてください。ね』
疑問を奪われた俺はそれらしい理由をつけて俺を導く三初の言葉に、とりあえず頷いた。
確かに俺が言わなければ状態が把握できないので、指示を出すことはできないだろう。一応理にかなっている、と思うんだ。
「ん…ん、は……」
止めていた手をゆるりと動かし、反応させたまま放置してたモノを慰める。
ローションがないので、濡れるまではうまく擦れない。
先端の弱い部分を親指で弄ると、ビク、と内ももが震えた。
「……っふ……」
『くく。感度いい先輩。どういうふうに触って感じてるのか、言って』
「っわかる、だろ……っ」
『あらぁ。ま、いいか。言わないなら勝手に当てるけど……手は止めないでくださいよ』
わかっていても質問をはぐらかすと、クツクツと喉を鳴らす機嫌のいい猫は珍しくそれを受け入れる。
まるで本当にこの場にいて、俺をいつも通りに躾けているみたいだ。
そんなわけないのに、と歯噛みする。そう思う自分が悔しい。
クチュ、クチュ、と溢れ始めた先走りを指に絡めて、音が漏れるのが嫌だから、慎重に肉茎を扱いた。
『そうだなぁ。先っぽが好きなんですよね、先輩は』
「っぁ……っうる、せ」
『そうそう。指先で触って、カリの裏もね』
だけど枕元のスマホから、クス、と笑い声が聞こえる。
そう言われると俺の手は悪態を吐く口とは裏腹に言われたとおりに自身を愛撫し、甘い吐息を吐き出して喘いでしまう。
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