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02
「あっま……これほぼ砂糖でしょ」
「じゃあ舐めんな。つーか三初、お前さっきからなにがしてぇんだ? 言いたいことあるならさっさと言えよ。遊びてぇなら一人で遊んどけ。仕事の邪魔すんな」
チョコを舐めておいて当たり前のことに萎える三初に、呆れて腕を組む。
気まぐれ暴君の俺イジメはいつもこうだが、今日はなにか言いたいことがあってちょっかいを出したっぽいんだよな。なんとなくだけどよ。
暇つぶしにしてはしつこいだろ?
意味わかんねぇし。
あとコイツが別に? って言う時はだいたい別にしてねぇ。だいたい本題だ。
んでその本題は聞かなきゃ言ってこねぇ。クソめんどくせぇいっぺん殴りたい。
さっさと吐けコラと睨むと、三初はパチパチと瞬きをして俺を見つめる。
それから渋い顔で目を逸らし、出しっぱなしだった舌をそっとしまった。舌片付け忘れた猫か。
「はぁ……激にぶトンチンカンのくせに、たまーによく見てんだよなぁ……」
「あぁん? なんだって?」
「べーつーにぃー」
「なんだその言い方」
「さぁね。ま、たかがチョロル一個であんなアホ面晒す駄犬の横っ面が見るに堪えなかっただけですよ。そんなに特別なもんなんですかね。どうせ食ったら脂肪になる駄菓子を大事そうに食っちゃってまぁ……あんた繁忙期バラエティパック半日で空にしてるでしょ? 珍しいもんでもないでしょーに」
「チョロル?」
キョトンと首を傾げる。
脳内一面ハテナだらけだ。三初が質問を渋っていた意味がわからない。
んだよ。今更なに言ってんだ? 俺は常日頃チョロル食って喜ぶ男じゃねぇか。
そらまぁ普段はニヤけねぇように顔に力入れてっけど、一瞬気ぃ抜くぐらいいいだろ。それをお前んなこと言いやがって。
だって要するにあれだろ?
お前俺がなんでそんなに食い慣れたチョロルを喜んで食ってんのか気になって、なんでですかーって聞こうとしただけだろ?
ハテナだらけで首を傾げると、三初は「わかんなくていいから。回答。至急」と急かした。なんだお前。
全くついていけないが、俺はハテナを浮かべたまま渋々と説明する。
「いや、特別なもんじゃねぇぜ? 予想外の糖分で得したっつーか……今日バレンタインだろ? だから誰かがデスクに置いといてくれたんだよな」
「は?」
「しかも俺の一番好きな種類でよ。いつもバラエティパック食ってんのによくわかったな、とか思ったらしてやられた気がして、なんか笑えてよ」
「…………」
「別に俺の食の趣味とか会社じゃ言ってねぇけど知られて困るもんでもねぇし、義理でも割と嬉しいっつかなんつーか……」
「…………」
そら嬉しいよな?
俺はバレンタインにチョコを食いまくれるって理由でイケメンに生まれたくなった男だし。
バレンタインは毎年仕事帰りデパ地下で自分用チョコを買い漁るところ、まさかのチョコを貰って夢が叶った気分だ。そういう意味の嬉しいだ。
思い出すと気分がアガッてもにょもにょとニヤケを耐えつつ語ると、またしても隣から「ヒェ」と悲鳴が聞こえた。竹本うるせぇ。
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