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【千草と美藤(妨害)】 *

◆表紙イラストの二人。  突然だが、美藤(みふじ)はかなりのゲーマーだ。  課金こそしないけれど、一日のほとんどはゲームで遊んでいる。  例外は、千草(ちぐさ)と二人きりのときだけ。  ――だが、今日は違った。 「「…………」」  授業で使うプリントをパソコンでまとめていた千草が、顔を上げる。  普段は五月蠅くて仕方ない美藤の声が、聞こえてこないからだ。  美藤はテスト中でも見せない真剣な表情を浮かべて、スマホを弄っている。  どうやらリズムゲームをしているらしく、指は忙しなく画面をタップしていた。  ……余談だが、千草は全くゲームをしない。  なので、美藤がゲームに熱中している意味が分からなかった。  ――しかも、自分と一緒のときに。 「おい、馬鹿」 「んー?」 「休憩するから付き合え」 「ん~」  美藤の指は、止まらない。  それどころか千草が気に入っているその顔すらも一切、千草を振り返らなかった。  休憩の度にベタベタとくっつき、作業中もなんだかんだとアクションを起こしてくる美藤の、この徹底ぶり。  千草は、わざとらしく舌打ちをする。 「話聞いてねぇだろ」 「んー」  美藤の指が一度、止まった。  千草はリビングの椅子から、美藤が座るソファへと移動する。  スマホの画面を覗き見ると、どうやらデータの通信中らしい。  千草はわざと、痛くするように美藤の派手な髪を引っ張る。 「イタッ、痛い! え、なに!」 「無視するとはいい度胸だな」 「今忙しいの! かまってちゃんはシッシッ!」  真正かまってちゃんに汚名を付けられ、千草は威圧的な表情を更に硬化させた。 「ゲームのイベント、あとちょっとで終わっちゃうんだよ! だから今ラストスパートなう!」 「『今』って二回言ってんぞ馬鹿」 「あ、ロード終わった」  美藤はムッとした顔から一変、真剣な表情に戻って視線を千草からスマホへ戻す。  そのまま、慣れた手付きで画面をタップしていく。 「……へぇ」  所詮、ゲームは架空世界だ。  それなのに、イベントだの報酬だのと盛り上がれる気持ちが知れない。  自己中心的で自分至上主義な千草が、この状況を甘受するわけがなかった。 「――ひぁッ!」  黙り込んでいた美藤が、嬌声のような声を上げる。  ――それは決して、ゲームに対しての声ではない。 「や、あッ、えっ? な、なに――んッ!」  突然、美藤が体を震わせ始める。  先程まで素早く動いていた指が、ピタリと動きを止めた。  ――原因は、千草だ。 「おい馬鹿。指、止まってんぞ」 「だ、だって、センセが――あっ!」 「生娘みてぇな反応してんじゃねぇよ」  美藤が戸惑うのも、無理はない。  ――何故なら。  ――千草が突然、美藤を愛撫し始めたのだから。  初めのは、突然耳を舐められたから出た声。  狼狽えた声は、胸をまさぐられたのち、突起を抓まれたから出たものだった。  性感帯を熟知されている美藤は、千草の手によって無理矢理反応させられる。 「や、ん……っ! 胸、やぁ……っ」 「イベントはどうした? 終わっちまうぞ」  両の乳首を弄ばれた美藤が、冷静にゲームなんかプレイできないと、千草は分かっていた。  案の定、美藤は震える指でスマホを握ることで精一杯だ。 「イジワル、ひどいぃ……っ! センセの、ヘンタ――あッ」  片方の手が、下半身へ伸ばされる。  美藤はブンブンと首を横に振るが、千草は素直に止めてあげるような男じゃない。  ――おざなりな態度を返されて、絶賛不機嫌中なら尚更、だ。 「ゲームしながらおっ勃ててる奴の台詞かよ、変態」 「ちが……っ! コレは、センセが――」 「人のせいにすんな」  理不尽極まりない返答でも、文字通り弱点を握られている美藤の方が不利なのは明白。  千草の手が、美藤の【弱点】を強く扱き始める。 「あ、やっ、んッ! だめ、だめっ、あぁッ!」  片方の指で乳首を虐められ、もう片方の手で決定的な部位を攻めたてられて。  ――美藤が呆気無く果てるのは、自明の理だった。 「んんッ!」  下着にベットリと精を吐き出し、美藤は脱力する。  握っていたはずのスマホは、気付けば床に落ちていた。  美藤は潤んだ瞳で、隣に座る千草を見上げる。  ――瞬間、千草が立ち上がった。 「休憩終了」  憂さ晴らしが済んだのか、千草は美藤から離れて仕事に戻る。  強制的にその気となった美藤は、横暴すぎる千草を見上げながら、体を震わせて叫んだ。 「んんーッ! センセのイジワルーッ!」  結局ゲームのイベントは、美藤が千草へ全力かまってちゃんを披露している間に終わっていたらしい。 【千草と美藤(妨害)】 了

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