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【先輩は綺麗でいながら 6】

◆fujossy様ユーザー企画投稿作品 ★「絵師様アンソロジー夏」7月6日19時公開!★ 【キーワード】 ①プール ②読書 ③先輩後輩  そこから、どうしてだったか。……浅水先輩がやたらと俺に触るようになったのを、今でもハッキリ、思い出せる。  そして、三年生が水泳部を引退する日。  ──浅水先輩に、告白された。  そこから今まで、誰にも気付かれることなく関係を保ち続けて……。我ながら、水泳部に入ってなにをしていたんだよという感じだ。  そんな思い出を、一旦、頭の片隅にしまい込む。  脱衣所で服を脱ぎ、風呂場へ入る。シャワーを浴びて、頭を洗ってから顔を洗って。  ……体を洗おうとした、そのときだ。 「──今日って……図書館にしか、行かないのかな……っ?」  そんな疑問が、頭をよぎったのは。  それと同時に、自分の考えを振り払うように頭を振った。 「いや、いやいやっ。期待しているとか、そんなのじゃなくて……っ!」  濡れた髪から、水が飛ぶ。その音にハッとして、俺は一旦落ち着こうと、深呼吸をする。  ここだけの話。……俺は、浅水先輩の童貞をもらっている。  つまり、タチ? が、浅水先輩で。俺が……えっと、ネコ? だ。  これまた、ここだけの話。初めては、浅水先輩が中学を卒業したその日だった。浅水先輩の部屋で、想像もしていなかった行為に……戸惑いはした、けれど。  浅水先輩は俺のために、色々調べていてくれたのだろう。俺に嫌な思いはさせず、初体験は見事成功した。  性に盛んな年頃の男同士だ。タイミングさえ合えば、ヤれるときにヤるのが普通だろう。  かと言って、獣のように頻繁にヤッているわけではない。……が、今まで何回ヤったかという正確な回数は、憶えていない。  ……思えば、最後にヤッたのがいつだったのかも、憶えていないけど。  それは、浅水先輩が大会のために、自分の時間を水泳に極振りしていたからだ。そして俺はいつも、事前に浅水先輩から『この日にヤるぞ』と言われるわけでは、ない。気付けば、そういう流れに持っていかれているのだ。  大会が終わってから、スキンシップの多くなった浅水先輩を思い出すと……今日、浅水先輩にその気があってもおかしくない。 「いやいやいやっ! 馬鹿か馬鹿かっ、馬鹿か俺はっ!」  どんどん顔が熱くなっていき、俺は頭を抱えた。  もう何回もヤッたのだから、今さら意識するのも可笑しな話だと思う。けれど、気恥ずかしさが残っているのだから、仕方ない。  どうして、風呂場で思い出してしまったのか。……理由は、俺のポジションにある。 「──準備、しておくべき、なのかな……っ?」  俺が突っ込まれる方ということは、ケツを使われるということだ。  衛生的な意味も込めて、浅水先輩は行為のときは大体コンドームを付けてから、俺に突っ込む。だったら、俺だって衛生面に気を遣うべきだろう。  そうなると……今のこの状況は、そういうことになるのじゃないか?  そもそも久し振りにケツを使うかもしれないのだから、ある程度慣らしておく必要もあるかもしれない。 「……っ」  自分の秘所に、そっと手を伸ばす。  ケツの膨らみに触れて、慌てて手を引っ込める。 「ちょっと待った。ここで慣らしておいたら、ヤる気満々だって浅水先輩に思われるかもしれない……っ!」  行為のとき、浅水先輩はこれでもかと言うほど、しつこくほぐしてくる。それは俺のことを気遣ってくれているからだと分かっているし、現にそうしてくれるおかげで痛くないわけだから、助かってはいるけれど。  今までの経験から推測すると……もし、今日の浅水先輩がそういうつもりだったのなら。  ──浅水先輩は絶対に、穴を弄りまくる。  そこで俺が、事前にほぐしていたらどうなると思う?  ──触られたら、俺が自分でほぐしたかどうかなんて……一発で、分かるだろう。  あっさりと、バレてしまうに違いない。 「いや、でも……全く期待してないってわけじゃ……っ。だけど、いやいやっ、でも……っ」  誰に言い訳しているわけでもないのに、思考がグルグルと、いったりきたり。  俺は風呂場で一人、ブツブツと呟きながら頭を抱え続けた。

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