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第2話 バーのママと

クラシックな音楽が流れ、ほんのり薄暗いバー。  お酒が入ったグラスを弄りながら、溜め息を吐いた。 「はぁ」 「あらどうしたの? 圭ちゃん」 「いちごママ」  彼女は、このゲイバー『アレテ』のママ・いちごさん。  筋肉質な身体もドレスを着れば、男気溢れる女性に変わる。  いちごさんと出会ったのは、奏汰から彼女ができたと報告を受けたあの日。  雨で濡れた話を聞いてくれて、否定しないでくれた理解者だ。 「今日、研究室のみんなで飲み会に行ったんです。……そこに、奏汰が来て」 「あぁ、あの子まだ行ってないのね」 「えっ」 「なにもないわ、それで?」 「店から連れ出されて、路地裏に」 「あらま」 「そこで、キスされたんです」 「あらら、それはいけないわ」 「嫌だったおしのけたら 『本当に嫌だと思ってる?』  って言われて」 「嫌じゃなかったから、余計に困る、と」 「はい」  赤くなった顔を隠して、突っ伏した。 「でも、よかったじゃやない。チャンスよチャンス。  脈ありなんだから、アプローチできるじゃない」  しわがついたスーツから目線を上げ、いちごさんを見る。 「憶えてなかったんです、何も。  意識しちゃって、避けてるんですよ」 「それは、危険ね」 「危険なんですか!?」 「避けてから、今日で何日目?」 「一週間ぐらい」 「やばいわね、今日はちゃんと戸締りしなさい。  その相手が来ても、居留守を使うのよ」 「えっ、でもそれは」 「いい! わかった!」 「はい」

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