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第5話
『今日も会いたいな バイト終わり、時間ある?』
「っ……!!」
ポケットの中でスマートフォンが震えて、ぼんやりと取り出してみると葵からのメッセージが表示されていた。
たった一行きりの文章だが、葵の微笑みが脳裏に蘇り、電車の中でにやけてしまいそうになる。口元を押さえて緩む表情を隠しながら、もう一度メッセージを読み返す。
――夜に会いたいっていうことは……そういうコト、だよな。
昨晩あれほどの無体をしたのに、また会ってくれるなんて嬉しい。智紀は素直にそう感じた。腹の底で燻る感情には気づかないふりをして、今夜こそは紳士らしく、優しく愛するんだと心に決める。
(葵さんにばかり負担かけてちゃダメだ。平常心、平常心……)
だが、葵の美しい裸体を前にするとどうしても激しい欲望がせり上がってきて、我慢できなくなってしまう。いけないとわかっているのに求めてしまう自分を抑えるにはどうすればいいのだろうか。
(でもほんと、どうすりゃいいんだ……)
自分の中にこんなに強い性欲が潜んでいるなんて思いもしなかった。すべすべの肌、程よい肉付きの肢体、愛撫に濡れた瞳。すべてが智紀の興奮を誘い、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
智紀の行為が葵の負担になるのなら、抑えなければいけない。何度も何度も犯され、気を失うまでだき潰されるなんて普通なら我慢できないはずだ。
けれど、葵は智紀の行為を受け入れてしまう。拒むことなく、智紀の欲望を丸ごと包み込んでくれるのだ。それが優しさなのか、それとも本当に葵が望んでいるのか。
(確かめるべきだよな……葵さんの本当の気持ち)
大切にしたい。けれど、葵の気持ちがわからない。このままでは、きっとふたりとも駄目になってしまう。
(今夜こそ、葵さんに確かめよう)
このままでいいのか、それとも変わるべきなのか。
昼間の空いた電車の中、智紀は密かな決意をした。
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