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ORANGE

「告白しようと思ってるんだ」  ある夏の日の帰り道、幼馴染の優希(ゆうき)は突拍子もなくそう言った。たしか今は、今度の模試テストがやばい、みたいなことを話していたのに。 「へぇ、萌乃(もえの)に?」  僕は優希の顔を覗き込み、わざとらしく腕を小突いた。  泣き出しそうになるのを堪えながら。 「うん。上手くいくかな」 「んー、どうだろ。40パーくらいじゃない?」 「そういう時、親友だったら大丈夫だよ、頑張れって言うもんなんじゃないのかよ。40パーってダメじゃん」  あはは、と困ったように笑う優希は、さっき買った缶のコーラを一口飲む。  大丈夫だよ。だって萌乃も、お前のこと好きだって言ってたし。相談されたことあるし。  親友だったら、そういうこともちゃんと言ってあげるべきなのかな。親友だったら。 「萌乃はロマンチストだから、一緒に観覧車でも乗っててっぺん行った時に告白でもしたら、上手くいくんじゃない」  適当に言ったのに、優希は意外にも素直に受け取って「そっかー」と何度か頷いた。  萌乃と付き合ったら、僕とは一緒に帰らなくなるのかな。こうして坂の上から夕陽を一緒に見ることも、なくなるのかな。  優希の首の後ろにあるホクロとか、唇とか、もっと近くでよく見て、触ったりしたかった。手を握ったりもしたかった。  僕はただこうやって、オレンジ色に染まった優希の横顔を見つめるだけしかできないのだ。 「お前は好きな人とかいないの」  その無邪気さと鈍感すぎるところが、僕は好きだよ。 「いないなぁ。誰か紹介してよ」  僕の願いは、優希がずっと笑っていてくれる事です。

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