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NAVY
ネイビーだったら誰でも似合うんだよ、と日下 はなぜか誇らしげに言って、四年前の誕生日にラコステのマフラーをくれた。
確かに似合わなくは無かったけど、ネイビーはそんなに好きじゃなかった。けど好きな人がくれた物だし、物に罪は無いし。
出不精だったからあんまり使う機会はやってこなかったけど、けど首元にふんわりとそれを纏う瞬間、やっぱり笑みを零さずにはいられなかった。
告白されたのは、それを貰ってから一ヶ月後の事だった。本当は誕生日の日に言いたかったみたいだけど、震えちゃって勇気が出なかったらしい。
次の誕生日は、練色のコンバースをもらった。
その次は、ビームスで買ったというパープル色のセーター。
その次はビビアンの赤い財布。
そして今日は、ずっと欲しいって言ってたマリメッコの黒いリュックだった。
俺は今まで貰ったそれらを全部身につけて、隣にいる日下と手を繋ぎながら夜の街を散歩した。
ショップ店員の日下も、なんだか同じような格好だ。
「ね、ネイビーのマフラーっていいでしょ。なんでも合わせられるんだから」
日下はあの時と同じように誇らしげに言った。
誕生日の度にコーディネートされていく俺。
ネイビーを選んでくれたのは、こうなるって予測してたからなのかもしれない。
ワニの部分がついにこの間外れたから、お直し屋で修理してもらった。クタクタだし、いい加減新しいのにしたい気もするけど、たぶん買わないだろう。
日下のくれたもので俺が完成されるまで。
日下と共に生きているうちは。
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