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第6話
(寂しかったのか……)
寂しがりやだと知っていたのに、放置していた罪悪感が、ふいに沸いた。
だが、――あれは簡単に許せる行為ではないし、許してはいけないことだ。
「……おまえ、俺になんか云うことないのか」
迎えには行ったが、なし崩しにするつもりはない。
「――これでもずいぶんガマンしたんだよ。でも、あんた俺を挑発するようなことばっかするし、満月の夜はただでさえ自制が効かないっていうのにさ。俺に云わせれば、ああなったのはあんたの自業自っ……ってえなぁ、ボカスカ殴んなよ!!」
「しつけのなってない駄犬には拳骨をお見舞いすることにしてんだ、俺は。それに、誰が言い訳しろっつった」
「駄犬駄犬って! 俺はイヌじゃねえっ、オオカミの末だって何度言ったらわかんだよ……! そっちこそ言いたいことあったら言えって言うから正直に言ったんだろーが!」
まぁ正論だが、そこは聞き流す。
「ハイハイ、狼さんね。カワイイ狼だこと。俺にとっちゃ犬も狼もあんま変わんねぇし」
「全然違うだろ! もうホント、おまえ馬鹿! ばーかばーかばーか!!」
「……でも、おまえはその馬鹿が好きなんだろ? 泣くほど」
昨夜、俺を抱きながら、こいつはぼろぼろ泣いていた。
哀れなほどに。
身も世もなく。
泣き喚きながら、俺をめちゃくちゃにした。
『あんたが悪い』と繰り返し責めながら。
まるで、子供が、大切にしていた宝物を、もぎ取られるような切なさで狂おしく。
啼いた。
「…っ」
「違うのか?」
カマをかける。
俺もこんなとこまで追ってきて手ぶらで帰る気は毛頭ない。
子供のオイタを叱り付けたいだけじゃないのだ。
こっちはさんざん痛い思いをさせられたのだ。ちょっと叱られたからって、尻尾を巻いて逃げ出して古巣に逃げ込んで丸まって……それで済むと思ったら大間違いだ。
シュンは唇を尖らせて、上目遣いでじっとり俺を見上げ、ぼそりと呟く。
「……イヤなやつ」
「そうか違うのか。……じゃ、俺は用なしってことでいいんだな?」
歩幅を広げてヤツより一歩前にでる。
慌てて縋ってくるのは計算済み。
俺と駆け引きしようなんざ百年早いんだよ。
「待てよ……!」
必死な顔が、まだまだ子供だ。
笑い出しそうになるのを堪えて、わざと眉を顰めてみせる。
「あん?」
「ぐっ」
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