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3ー10

何ていうか…『あぁ、大人だな』と感心させられてしまう。 「――…魚心あれば水心ってな。一生を共にしたいなら、手段なんて選んでいる時間が勿体無いだろう。海凰…」 鳴澤家では色んな意味で仕出かしてくれるから深李さん自身の本来の姿は見た事がない為、凄く興味はあった。 俺ですら初めて見る悪戯をする子供の様な笑みを浮かべている。 ――…恐いかも。 「…若君、今見たのは忘れて下さい」 ちょっと、深李さんから視線を外して言う科白じゃないですよね? 律義に深々と頭を下げて、貴方は雪崩を本当に起こしたいんですか。 更なる恐怖を駆り立てる様な事をしないで下さい。命は一つなんです。 俺、まだ死ぬ予定プランは立ててないんです。 深李さんの周りを黒い空気が包んでいるじゃないですかぁぁぁ!!! 振り返る事もせず、スタスタと歩いていく海凰殿の背中を眺めている事しか出来なかった。

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