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4ー5

重々承知していたし、気をつけていたつもりだった。 深李の躍起に触れない様、気配りも丁寧にやってきているつもりだった。突如起こした事だからこそ、皆は阿鼻叫喚だろう。 鎮まるまでは、生唾呑んで静かに待つ事しか許されない。 「“龍”は時折、気性が荒くなる場合があります。龍華家に伝わる昔話だと思っていたのが仇になりました…」 「――…ストレスですかね?」 「さぁ…どちからと言えば…欲求不満なんじゃないんですか?」 二人して首を傾げながらテーブルの下で考える。以前、深李は克樹に“龍”の説明をしていた。 他の旧家で言うなら“総帥”みたいなものだと教えてくれたけど、今更ながら…もっと深い理由が存在するんじゃないかと思えてきた。確かに別の表情もするのかと興味をそそられたが…。 よく考えてみれば、龍華家の歴史を彼から語られた事が無い。

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