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4ー6
あれは全く異なる気がしてきた。
何故、龍華家に来てまで恐怖を体験しないといけないのだろうか。
「鳴呼、使用人達も泣き叫んでるでしょうね。深李様の恐怖に…」
「…」
「あの人、やる事なす事…恐怖で埋め尽くすんです。若君も身を持って体験なさったのでしたら…肝に銘じていた方が宜しいですよ。正に、志龍様の息子だと圧巻させられます…」
完全に棒読みな科白をすらすらと言い、溜め息を吐いた。
『ぎゃぁぁぁっ、お許し下さいぃぃ…』
『――…土下座しろっ』
響き渡ってきた声を聞いた瞬間、海凰は汗を垂らす。
とうとう使用人も捕まってしまったのか。それは地獄の鐘が鳴り始めた合図。
「い、今のは…」
「阿修羅ならぬ、夜叉です…」
「…いや、般若の間違いじゃ」
「夜叉です…夜叉…」
断固として、其処だけは譲らないと言わんばかりの発言。
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