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5ー1
「――…正座…」
瞳で訴えれば、潔く正座をする海凰。
何時もそれぐらい順序だったら俺も嫌がらせはしないのに…
「土下座しろっ」
「失礼ながら、私は何も悪い事はしていませんが?」
「存在事態が悪いですよ。倉科家の若君…」
おぉ、解っているな…お客さん。
そうそう、海凰は変態で土下座する必要性がある男。存在事態が悪い事をしている匂いをぷんぷんさせているんだよ。
「…勝手に便乗しないで頂けますか、漣様」
ん?
漣様?
俺の知り合いにも“漣”って言う…めっさ美人な男性は居るが…。
相手は織家の御曹司だし、一年に一回しか龍華家に顔を出さない。
――…まさかな。
「何処が地獄を見る羽目になるか理解兼ねます。単に深李さんに逢わせたくなかっただけでしょう…」
「ちっ、だから…振り返るなっと言っただろうが…」
あ、久しぶりに海凰の素の声を聞いた気がする。いや、感心している場合じゃないか。
振り返った男性が俺を映し出す。
此処で顔を合わすのは一年ぶりの人物が、驚いた表情をしていた。
まじで、漣さんが来ていたのか?
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