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5ー2

――倉科家・黄夜の間 自分の家みたく寛ぐ志龍は口元の端を持ち上げ、出された茶菓子に手を伸ばした。 ちくたくと、時計の針だけが時を刻んでいく音が耳に届く、静かな時間。 「碧李(あおり)…静かね…」 「志龍様は、逃げてきましたね。深李様が…ご乱心ですか…」 眼鏡奥の色素の薄い瞳がぎらりっと光る。 「無言は肯定とお受けしますよ」 分家である倉科家に足を運ぶ事すら珍しい女性が居るというのは、本家で何かがあったから。 碧李と呼ばれた男性は沈黙し始めた彼女を見つめた。 「あぁ、四月は気が乱れる季節でしたね…」 「…」 「春うららと言いますが、深李様にとっては…辛い季節到来でした」 渋々語る男性の科白に小さな溜め息を吐いた。春は桜の時期でもあるが、息子の深李にとっては辛い季節。霊感が強い分、気の乱れが生じる。 それも四月で、桜の木が美しく花を咲き乱れさせた正に今の時季。

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