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四月は始まったばかり。 一ヶ月間、深李は身体に感じる熱を冷ます事は出来ない。事情を知らない鳴澤 克樹は焦心する筈だが、知ってもらうには良い機会。 「――…土下座とは、背筋をぴっと伸ばし…全身全霊で反省を表す高度の謝罪です。床と同化する如く、額と両手を付け、相手に本気の謝罪を見せつける。それが…土下座の流儀!」 「碧李、一般的な土下座は…そんな事一切…致しませんよ…」 お茶を啜りながら呆れた表情をする志龍。 「大体、倉科家流の謝罪をゴリ押しするんじゃありません…」 「はぁぁ…」 「全く…。碧李が変な事を吹き込むから、海凰まで真似するんじゃありませんか。仮にも伯父貴なら…もう少し柔らかくしなさいな…」 「…嫌でございます」 満面な笑顔で拒否る男性に少し苛つきを覚えるのであった。

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