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【海凰side】 人の言い付けは守って欲しいものですね。 深李様に逢わせたくないとかじゃなく、家庭事情があるから逢わせるのを躊躇したんです。自分も…すっかり忘れていましたが、四季は春です。 春といえば桜の木が美しい花を咲き乱れさせる時季。 えぇ、本来なら春が来た事を喜ぶべき四月なのですが…。 深李様にとったら、辛い季節。 「…漣さん?」 急にご乱心になったのは、気の乱れが生じたせい。地獄を味わう時期だと思い出していれば、被害は最小限に押さえられた。 少なくとも、使用人だけは地獄を免れたかも知れない。 「おーい…」 近くまで歩み寄ってきた深李様が 漣様の前で手を上下に動かす。 先ほどの顔を見てしまったら、硬直して当たり前だ。

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