47 / 53
5ー4
【海凰side】
人の言い付けは守って欲しいものですね。
深李様に逢わせたくないとかじゃなく、家庭事情があるから逢わせるのを躊躇したんです。自分も…すっかり忘れていましたが、四季は春です。
春といえば桜の木が美しい花を咲き乱れさせる時季。
えぇ、本来なら春が来た事を喜ぶべき四月なのですが…。
深李様にとったら、辛い季節。
「…漣さん?」
急にご乱心になったのは、気の乱れが生じたせい。地獄を味わう時期だと思い出していれば、被害は最小限に押さえられた。
少なくとも、使用人だけは地獄を免れたかも知れない。
「おーい…」
近くまで歩み寄ってきた深李様が 漣様の前で手を上下に動かす。
先ほどの顔を見てしまったら、硬直して当たり前だ。
ともだちにシェアしよう!