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――凄いな。
目下でひたすたに快楽だけを貪っている貴司を見ながら、これが本当に貴司なのかと疑いたくなってしまう。
「もっと……あぁ……ん」
淫らにくねる白い肢体に、呼応するよう伸縮しているアナルの中を弄りながら、歩樹は内心驚嘆の声を漏らさずにはいられなかった。ローションがなかったため、自分の部屋へと運んだが、掴んでくる細い指や、頼りなく揺れる細い身体を、可愛いと感じてしまい歩樹はかなり動揺した。
目鼻立ちは整っているものの地味な雰囲気の貴司のことを、助けたいとは思ったが、まさか自分が欲情するとは思ってもいなかったから。
「あぁっ……やぁ……もぅ……おねがっ」
絶頂が近いのだろうか? 貴司の手がゆっくり動いて自らペニスを扱きだす。
これはあくまで医療行為だと自分自身に言い聞かせながら、貴司の中とへ埋めた指先で悦い場所ばかりを擦ってやると、堪らないといったように彼の体が何度も跳ねた。
「ひっ……あぁっ……あんうっ」
「達っていいよ」
不安定に揺れる体を歩樹がそっと抱き込むと、頷きを返した貴司の手の動きが速くなる。
「ああっ……んぅっ……セ……セイ」
前立腺を爪で引っ掻けば、貴司の体が大きく震え、達したのだと悟った歩樹はアナルから指を引き抜いた。
「あ……あぁ」
「平気か?」
クタリと体の力を抜き、荒い呼吸を繰り返えす貴司の背中を優しくさすってやると、ゆるりと首を動かした彼が、恍惚とした表情を浮かべ「……セイ」と、微かな声を漏らす。その様子に、彼はまだ現実へは戻っていないと、安堵を覚た歩樹がそっと頬を撫でれば、その刹那、貴司の瞳からツウッと一筋涙が流れた。
その涙が、どんな意味を持つのかなんて解らない。だけど。
「貴司は、何も悪くない」
知らず口からこぼれた言葉に歩樹自身も驚いたけれど、なぜだか今、そう言わなければならないような気持ちになった。
「ぅっ……」
「悪くないから」
静かに嗚咽を漏らしながら、枕へと顔を埋めてしまった貴司の背中を撫で摩り、歩樹は彼の耳元へと何度もそう繰り返す。
正気に戻って泣いているのか?
自分を閉じ込め自由を奪った男のことを想っているのか?
どちらなのかは分からない。だけど、セイと呼ばれた人物が、誰であるかは分かっていた。
――阿由葉聖一……か。
浩也からは、二人が恋人同士だったと聞いている。
そんな二人の間に何があったのか?
まるで媚薬にうかされたような貴司の様子は尋常じゃなく、これまでそっと見守っているのが一番だと思っていたが、それだけではきっと駄目だと歩樹ははっきり認識した。
「ぅ……うぅ……」
小さな嗚咽が鼓膜を揺らす。
「大丈夫、貴司のせいじゃない。だから、もう泣くな」
そう告げて、今度は髪を梳くようにしてそっと歩樹が頭を撫でると、暫くして、貴司の嗚咽が徐々にだけれど収まってきた。
――体に……覚え込まされたって感じだな。
そう考えれば辻褄が合う。これは、恋人に監禁され、毎日のように快楽ばかりを与えられた結果だと。その上なにかのクスリを使用されていた可能性も高い。
新しい生活に慣れ、気の緩んでしまったところで、体がそれを思い出したと考えれば、今の貴司の行動の意味がすんなりと納得できた。
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