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「……うぅ」
意識は何とか保っていたが、指一本、動かすことすらできなくなり、横臥したままの貴司の体に今度は温いシャワーの飛沫が降りかかる。
「やっ……あぁ」
傷になってしまったのか? 湯が胸へと伝った刹那、ジンジンとそこが痛み出し……貴司が思わず声を上げると、その様子を見たからなのか聖一はすぐにシャワーを止めた。
「く……うぅっ」
そして、言葉を一つも発しないまま貴司の体をタオルで拭うと、バスローブに包むようにして体を軽々持ち上げる。
「……セイ?」
酷く掠れてしまった声で聖一の名を呼ぶけれど、それに答える声はなく、そのまま部屋まで移動してからベッドの上へと横たえられ、左右のピアスを外された時は貴司も流石に驚いた。
――怒ってる?
散々拒絶しておいて、突然キスをしたのだから、逃げ出すための下手な芝居だと思われても仕方ない。ピアスはあんなに嫌だったのに、外されてみると切ないような泣きたいような気持ちになる。
「あっ」
無表情な聖一の顔を探るように見つめていると、ふいに視界が白く染まり、タオルを顔に掛けられたのだと数秒してから気が付いた。手を動かせば取れるけど、それすら出来ずに黙っていると、次の瞬間冷たい物が貴司の胸へと塗りつけられる。
「……っ!」
「薬、塗ってるだけだから」
体をビクリとひくつかせ、貴司が体を硬くすると、抑揚のない聖一の声が上の方から降りてきた。ようやく聞こえたその声に、小さく頷き返した貴司が体の力を僅かに抜けば、聖一の指が優しく動いて乳輪から先端までを丁寧に這いまわる。
「……んっ」
その刺激は、体にくすぶる淫らな熱を呼び覚ますのには充分で、貴司は小さく身じろぎしたが、恥ずかしいことになる直前に離れていった聖一の指が、今度はローブの前を閉めると布団をパサリと掛けてくれた。
「あり……がとう」
この状況には不釣り合いだが、思わず口から零れたのは、手当をして貰ったことへの礼を伝える言葉だった。
「セイ?」
ちゃんと聞こえたか不安になって顔からタオルを取ろうとすると、手首を彼の掌にとられて喉の辺りへと吸い付かれる。
「んっ……うぅ……」
場所を変え、何度もそれを繰り返され、貴司は内心戸惑ったけれど逆らおうとはしなかった。それよりも、黙って首へと顔を埋める彼の心が知りたくて。
だから貴司は瞼を閉じ、彼の行為を受け容れた。
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