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最終章
最終章
どうすれば上手く伝えられる?
どうしたら理解出来るだろう?
君の心に近づきたい。
強く願ったその途端、少しだけ、世界が色を変えたように見えたけれど。
***
「ふっ……」
背筋へゾクリと鳥肌が立つ。数日前、風呂での無理な行為のせいで再び貴司は熱を出した。幸い今度は軽く済んだが、治ったと途端、聖一によって組み敷かれ……その日は意識を失うまで、何度も彼に犯された。
話をしたいと願いながらも、声をかけようとしたタイミングで再度聖一に挑まれて……そんなことが何度も続いて貴司の疲弊は既にピークへと達していた。
夏休みに入ったせいで聖一はずっとマンションにいる。それなのに、会話と呼べるような話は全くできず今に至るのは、これはもう……彼が話をしたくないとしか思えなかった。
唯一、食事の時には話せるのだが、面と向かって座ってしまうと緊張して、上手く話が切り出せない。それでも、いざ話そうと口を開くと、あまり食べない貴司の口へと彼が食べ物を押し付けるから、余計話ができなくなった。
深い話じゃなくてもいい。ただ少しでも聖一のことを理解したいと思っているのに、それはかなり難しいと思い知るだけの毎日に、気持ちばかりが空回るけれど打開策は浮かばなかった。
「……うっ」
「痛い?」
今はソファーへと座らされ、薬を塗って貰っている。自分で出来ると言ってみたが、聞き入れては貰えなかった。赤く爛れてしまった尖りは炎症が未だ治まらず、ピアスも外され行為の時にも聖一はここに触れてこない。
「大丈夫」
本当は、少し痛い。だけどそれは仕方がないと思って貴司が返事をすると、彼の空いている左の手が股間へそっと伸ばされる。大抵そこは胸への刺激で浅ましく反応してしまい、それを口実に犯されるのがいつもの流れとなっていた。
「……あれ?」
股間を隠す掌を払い、彼が驚いた顔をする。大きめなパジャマの上衣を羽織ることだけは許されていたが、下には何にも履いていないから、貴司はいつもこの瞬間、羞恥に肌を赤く染めた。
「どうしたの? ここ、元気ない」
何の反応も示していない貴司のペニスに触れながら、聖一がそう尋ねてくる。
「……疲れてる」
当たり前のことだろう。体力は凄く落ちているし、年齢だって体格だって聖一とは違うのだ。毎日のように求められても、応え続けることなどできない。
「ちゃんと食べないからだよ。ハンストのつもり?」
「違う。本当に……食欲がない」
「へぇ……こっちの口は、いつも俺のを旨そうに食べるのに」
「ちょっ……止めろ」
からかうように唇端を上げ、股の間から忍ばせた指でアナルをノックしてくる指を、避けようとして体を捩れば、喉で笑った聖一が、手を引きながら頬へとキスを落としてきた。
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