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 作ると言っても簡単で、スクランブルエッグとウインナー、それにブロッコリーとプチトマトを沿えただけ。あとは、ヨーグルトと果物を和えてガラスの器に添えてみる。コーヒーは料理の前に準備をしておいたから、あっという間にあとはトーストを焼くだけになってしまった。  そこまできて、陽はかなり昇っているのに、聖一がまだ起きないことに流石に貴司は少し戸惑う。起こそうにも聖一の部屋へ入ったことが一度もないし、廊下へと並ぶ部屋の中、どれが彼の部屋なのかも正直全く分からなかった。 「セイ?」  起きるまで待っていようかとも思ったが、ここまで何も音がしないと逆に不安になってくる。だから、廊下に向かって名前を呼ぶも、反応する声はない。思案の末、廊下へと出て全てのドアをノックするけれど、やはり全く返事がなくて貴司はいよいよ困ってしまった。 「開けるよ」  一応、一言声をかけてから、ドアの一つを開いてみると、リビング脇の部屋の中には段ボールだけが並んでいる。  ――ここじゃない。  殺風景なその風景にドアを引こうとしたその時、目に止まった小さなバッグに貴司は一瞬手を止めた。 「これは……」  段ボール脇に置かれたそれは貴司が使っていた物で、近づいて手に取ってみると、中身もそのまま入っているらしく重みもきちんと感じられる。ならばと思い、箱の一つからガムテープを剥がして見ると、やはりそこには自分の荷物が整頓されて入っていた。  ――捨てられてると思ったのに。  聖一は、いつかこれを返してくれるつもりだろうか? 少し前の自分であれば、貴重品の入ったバッグを手にした途端、逃げ出そうとしただろうがそんな気持ちも浮かばない。一つ一つの箱を開いて中身を確認したかったけれど、今はそんな場合じゃないと思い直して部屋を出た。  残っているのは二部屋で、一つは綺麗に整えられたゲストルームのような部屋。そして―。 「セイ?」  一番玄関側にあるドアを何度かノックしてみるが、やはり返事の声はなく、貴司がそっとドアを開けると中はかなり暗かった。 「セイ……いるのか?」 人の気配は確かにある。思い切って開いてみると、黒が瞳へと飛び込んだ。 「あ……」  その部屋は、カーテン、ベッド、それから敷いてあるラグの全てが黒に統一されていて、それが何だか落ち着かなくて貴司は小さく声を漏らす。ドアから入った光が届いて聖一の顔が見えたけれど、布団に包まる彼は全く貴司の声に反応しない。 「セイ?」  もう一度……今度は少し大きな声で名前を呼ぶけれど返事はなく、微動だにしない彼の姿に、息をしているか心配になって貴司は急いで近づいた。ベッド脇まで寄ったところで微かな呼吸が聞こえてきたから、貴司は少し安堵するけれどそれも一瞬だけの事で。 「……っ」  額へそっと掌で触れ、貴司は息を飲み込んだ。  ――凄い熱だ。  屈んで顔の様子を見ると、心なしか頬が赤い。目を覚まさない彼の様子にかなりの熱だと判断して、とりあえず踵を返すと脱衣所へと貴司は向かう。そして、濡らしたタオルと洗面器を手に聖一の部屋へ再び戻り、絞ったタオルを額へ乗せた。  ――どうしよう。  体温計や薬の在りかが貴司には分からない。もし薬があっても意識がなければ飲めないだろうが、そこまで頭が回らなかった。この状況で何が出来るか考えながら髪へ触れると、眉間に皺を寄せた聖一が苦しそうに小さく呻く。

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