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あの出来事から一周間後、約束通り歩樹がここを訪ねてきた。どうなるかと心配したが、聖一は黙って診察を受けた後、頭を下げて彼にきちんと礼を告げた。
歩樹は一瞬驚いたような顔をしたが、次の瞬間、全てを理解したというように微笑んで、『何かあったら相談しろよ』と一言残して帰っていった。
聖一の腕と貴司の足首は鎖によって繋がっていたのに、何も言わない歩樹の姿勢に、やっぱり彼には見えているのだと思った貴司は小さな声で、『ありがとう』と呟いた。
その夜も、聖一が強く貴司を攻め立てることはなく―。
きっと聡い彼だから、頭では理解しているけれど、心がついていかないのだと、その行動から貴司は思う。
だから今は、形ある物で繋がらなければならないのだ……と。
「貴司、上げて」
考えに深く耽っていたが、聖一の声に引き戻されて貴司は一つ頷いた。最初は本当に恥ずかしくて、なかなかできずにいたけれど、辛抱強く待ってくれるから、徐々に貴司も慣れてきた。
Tシャツの裾を指で握り、それを上へと持ち上げていくと、露わになった胸の尖りに聖一が指で触れてくる。そして――。
「んっ」
芯にヒヤリと冷たい感触。刺激に思わず上がる声は、含まれる艶を隠しきれずに、どうしても甘い響きを帯びたものになる。
それは……二人にとってとても大切な儀式のようになっていて、繋ぐ鎖がなくなった今、自分が望んでここにいることを確認できる……そんな時間になっていた。
「好きだよ」
胸に飾ったピアスへと、キスを落した聖一が言う。その頬は……ほんのりと赤く色づいていて、それを見た貴司の心の中は、愛しい気持ちに包まれた。
「愛してる」
聖一の耳に付けられている揃いのピアスへと口づけながら、貴司が掠れた声で告げると、一瞬の沈黙のあとでベッドの上へと優しい手つきで倒される。
幸せの数は沢山あって、愛し方もそれぞれで。
戸惑いや、不安は常に心の中に付き纏う。
だけど、向き合ってさえいればきっと、未来は開けるような気がした。
謝りたい人がいる。
感謝を告げたい人もいる。
だけど今は、彼に好きだと伝え続けていたいと思う。
本当の意味で心の底から信じあい、笑いあえるようになる日が、一日も早く来るように……祈るように願いながら。
END
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