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 *** 「ん、ふっ……うぅ」  ジュクジュクという唾液の音が、貴司の鼓膜を中から揺さぶる。聖一の前を口で寛げ、殆ど兆しの無かったペニスへ貴司が舌を這わせてから……十分程が過ぎていた。  聖一のそれは勃ち上がり、口に含むも大変だけれど、彼からいいと言われるまでは止める事は許されない。 (なんで、こんなっ) 「んっ……んふぅっ」 「もっと、奥の方まで咥えて」  途中、口を離して休憩をしたら、尖りのリングへ細い鎖を通されそれを引っ張られた。 「ん、う゛ぅっ!」  少しでも気を抜けば、違う責め苦が待っているから、懸命に口を動かすけれど徐々に顎が動かなくなる。 「貴司、美味しい?」 「ん、んぐぅっ」  喉の奥まで突っ込まれ、それでも貴司は動ける範囲で必死に何度か頷いた。どれだけ自分が聖一を好きか伝える術はそれしかない。 「可愛い。貴司はホント、可愛いよ」 「ん、んぅっ……ふぅっ!」  ピアスの鎖を強く引かれ、ペニスで喉を何度も突かれて、えづいた貴司は頭を振るけれど、彼の大きな掌で髪を掴まれてるから動けない。  紡ぐ言葉の穏やかさとは全く逆の行動に……涙が出そうになってしまうが、必死にこらえて貴司は彼の太いペニスへと舌を絡めた。 「こういうのも、好きだよね」 「んぐぅっ!」  舐めるうち、質量を増した自身のペニスを爪先(つまさき)でツンとつつかれて、貴司は腰を引こうとするが、許さないとばかりに股の間に脚が差し込まれ、足の甲を器用に使って尻を手前へと引き寄せられる。 「こっちの孔も、きっとヒクヒクしてるんだろうな」 「んっ、ふぅっ」  抵抗できずに呻いていると、爪先でアナルをトンとつつかれた。  聖一は靴を脱いでないから、ひんやりとした革の感触と、直接的ではない刺激に……貴司の腰は意思に反してゆっくりと動きだす。 「いやらしいね。普段は真面目そうなのに……本当は、こんな所にピアス開けられて、ペニスをしゃぶって悦ぶ変態だったなんて……きっと誰も想像できないだろうね」 「うっ……んぅっ」 (違う、こんなの、セイじゃなかったら……)  苦痛なだけだと言いたいけれど、口をペニスで塞がれていては伝える事ができなかった。 「貴司は何処(どこ)に精液が欲しい? 口でいいの?」 「んう゛っ、ふぅっ」  言葉と共にペニスが抜かれて、貴司は肩で息をする。顎を取られて顔を上げると、聖一の顔も僅かに紅潮していたから……状況を忘れ嬉しいような気持に貴司は包まれた。 「……うしろに、()れて……ほしい」 「うしろってどこ? 俺、馬鹿だから分からないや」 「意地悪……言うな」  一緒に暮らし始めた頃はこんなやり取りばかりだったが、最近は影を潜めていたから、改めて言えと命令されると恥ずかしくてたまらない。 「意地悪は……貴司だろ」  言葉遣いが明らかに変わり、驚きに目を見開くと……咬みつくように口を塞がれて貴司は身体を強張らせた。 「んっ……ぐぅっ!」 (やっぱり、怒ってる?)  強引に割り込んできた舌に歯の裏側を舐められて、貴司が身体を引こうとすると、鎖が強く引っ張られる。 「うぅっ……ん、んぅぅ!」  更にはペニスを靴で踏まれ、貴司は痛みに身悶えた。 (痛っ……痛いっ!)  きっと加減はしてくれているし、以前の方が痛かった……と、必死に意識を逸らそうとするが、そんな努力を打ち砕くように圧力が更に大きくなる。 「ふう゛ぅ……ん、うぅっ!」 (なんで? こんな事しなくたって)  大抵の事は話せば理解できる関係を築けていたのに、こんなやり方は酷すぎるんじゃないかと思った貴司は暴れ、ありったけの勇気をだして彼の舌へと噛み付いた。 「……んうぅっ!」  軽く噛み付いただけのつもりが、血の味が口の中に広がり、動揺した貴司の鼓動がひと際大きく身体に響く。  こうすれば……聖一がすぐに離れてくれると思っていたが、予想は外れて更に奥深く舌が入り込んできた。 「んっ、んぐぅっ……」  角度を変えて口腔を犯され、飲み込めない唾液が溢れて顎を伝う。  チュクチュクというキスの音だけが部屋の空気を震わせて……貴司は自分の背筋が粟立ち、下肢が熱を高めていくのを感じて身体を震わせた。

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