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可哀想だと思われるのも、同情に媚びを売ることも……潔 しとは出来ないから平気な振りをする。
(でも、きっと、誰より……)
「ん……ふぅっ」
慣らされていないアナルに指がギリギリと入り込んできて、痛みに貴司が小さく呻くと、一旦口を離した聖一がそのまま体を抱き上げて……部屋を移動し始めた。
「セイ、腕の外して……お願いだからっ」
「ダーメ」
逃げないことはきっと分かっている筈なのに、どうしてそんなに頑ななのか? 貴司にはそれが分からない。
「セイっ……あっ」
懇願するよう呼びかけた途端、ベッドに体を放られて、起きあがろうと動いたところでうつ伏せのまま両足を掴まれ、引き摺るように聖一の肩へと太股を担ぎ上げられた。
「まっ……やめ……離せっ」
アナルが丁度彼の目前に、晒されるような体勢に……慌てて貴司は体を捩るが大した抵抗にはならない。
「あ、やっ……ああっ」
無言のままの聖一の舌がアナルの縁をベロリと舐め、その感触に貴司の背筋がゾクリと痺れて総毛立った。
***
「あっ……やぁっ、セイ……セイっ」
腕を背後で縛っているから、貴司の体を支えているのは、胸と頭と聖一の掴む太股だけになっていて……舌で内側を愛撫する度、不安定に揺れる姿に劣情を刺激された聖一は片手で彼のペニスを掴んだ。
「ちょっ、待っ…あっ……ふぅっ」
舌を深く挿入し、唾液を中へと送り込むと、伸縮するアナルが窄まり舌をキュウキュウ締め付ける。
更にペニスを軽く扱くと、質量を増した先端からは滑りを帯びた体液が溢れ、揺れる度、シーツの上にポタポタ垂れて染みを作った。
『考えさせてくれないか?』
貴司がそう返事をするのは想定の範囲内だったけれど、いざ本人の口から聞くと、思った以上にショックを受けた。
頭ではちゃんと分かっている。
一年以上続けた仕事に愛着もきっとあるだろうし、貴司は真面目な性格だから、すぐ決断など出来やしない。
それに、過去に一度、無理矢理会社を辞めさせた事があるだけに、ここは我慢しなければ……と、本心から思っていた。
けれど、結局抑えが利かなくて。
一旦我に返った時、話すつもりも無かった過去を貴司に話してしまったが……徐々に冷静になっていくうち、貴司の瞳に浮かぶ迷いは、違う何かを含んでいるような気がしてならなくなってきた。
――勘違いかもしれないけど。
こんな方法しか知らないけれど、貴司の心の中が知りたい。本気で会社を辞めさせようとは思ってないが、こうでもしないときっと貴司は、奥まで見せてはくれないだろう。
勿論……意識的に隠そうとしてる訳じゃないのは分かっているが、貴司は元々普通であろうとし過ぎてしまうきらいがある。
「セイっ……もっ、やめっ……拡げな……で」
出来るだけ深く挿し込んでから、拡げるように中を舐めると、切な気に喘ぐ貴司の声が甘い余韻を含んで響いた。
「は、あっ……ふぅっ」
一気に舌を抜いた聖一は、肩から貴司の脚を降ろし、うつ伏せに崩れ落ちた体を仰向けにひっくり返す。
「あっ……あっ」
たったそれだけの刺激に貴司は身体をビクビク痙攣させ、射精に至らなかったペニスが天を仰いで健気に揺れた。
「どっちがいい? 空っぽになるまで出すか、出さないで何回も達 くか……好きな方を選んで良いよ」
「そんな……どっちも……」
「ん? どっちもがいいの? 貴司はホント欲張りだね」
「違っ……ああぅっ!」
次の言葉を紡がせないようピアスに指を引っ掛けて引き、力の入らぬ脚を掴んでそれを大きく開かせる。
「いいよ、両方してあげる」
真上から見下ろす形で笑みを浮かべてそう伝えると、泣きそうに顔を歪めた貴司はそれでもコクリと頷いた。
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