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*** 「俺、最初に話して欲しかったみたいだ。大学生で、会社作るとか、ホント……セイは凄い。でも、セイが一人で、なんでも出来るって知ってるけど……一緒にっていうなら、最初から……手伝いたかった」  いつでも一緒に居たいという独善的な理由だけで、そんな物を作ったのならそれは違うと貴司は思った。  否、つい先刻まで思っていた。  隠されていた事自体が嫌だったのだと気がついたのは、『どうして』と低く呻いた聖一の表情(かお)を見た時で。  ――喜んで……誉めて、欲しかった?  本当にそれだけなのだと一瞬にして分かってしまった。  それと同時に自分の気持ちがきちんと形を帯びてきて、どうして気づけなかったのだろう? と、切ない気持に包まれた。 「俺も、セイも……考え過ぎだ」  首筋を掴んで引き寄せると、恋人の顔が僅かに紅潮したのが分かり、貴司はその薄い唇にチュッと軽くキスをする。 「ごめん。ずっと貴司の気持ち、無視してきたから、尊重しないといけないって分かってるけど……結局いつも大事なところで失敗する」 「違うよセイ、もう前とは違う。俺は、俺の意思でセイと一緒に居る。だから、もっと」 『セイは甘えて良いんだよ』  そっと耳もとへ囁きかければ、挿入ったままのペニスが気持ちを表すように、その質量を一層増した。  沢山の理屈を重ね、それでも我慢が利かないくらい、彼に想われているのなら、嬉しいとさえ思えてしまう自分が貴司の中に居て……なんでも出来て、完璧に見えて、だけど不器用な恋人を、出来る限り甘やかしたいと思えてくるから救えない。  ――だけど。  それでも肩を寄せ合いながら、少しずつでも進んでいると思えるから……だから、今は幸せで、目の前に居る恋人の事が大切で、毎日胸が苦しくなる程愛おしくて堪らない。 「もう、充分……甘えてる。信用も、してる。けど、不安なんだ」 「俺もだよ」  その不安は、きっといつまでも二人の間に付き纏う。それは恋人同士ならば、程度は問わずあるのだろうが、自分たちの場合はかなり激しい部類に入るだろう。 「……あっ、セイっ、待っ……まだっ」  突然律動が再開され、慌てた貴司は制止するけれど、聖一の顔を見つめていたら、このままでいいと素直に思えた。

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