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第33話 容態
康太と榊原、一生、兵藤、四龍の兄弟と共に一足先に飛鳥井の家に帰って来た
地下駐車場に車を停めると康太達は屋上へと上がって逝った
屋上に着くと兵藤が呪文を唱えて、呪文壁を出した
呪文壁で屋上を覆うと兵藤は
「誰が姿を変えるよ?」と問い掛けた
青龍は妻しか乗せないし、朱雀はこの前の鳥は乗り心地悪い発言から機嫌が悪く多分姿を変えてはくれないだろう……
仕方なく一生が「俺が変わるわ」と言い赤い龍に姿を変えた
康太と榊原と兵藤は赤龍の頭に乗り込み髭に掴まった
黒龍と地龍もちゃっかり赤龍の頭に乗り込み楽をする算段だった
赤龍は天高く駆け昇ると、気流に乗り、時空に乗って魔界へと向かった
魔界へ向かう時空の中は真っ暗で、何時通っても気味が悪かった
昨今、更に暗さに磨きが掛かったみたいで、こんな所にまで闇の影響が出てるのかと想わずにはいられなかった
康太は赤龍に「直接閻魔の屋敷には逝くなよ」と告げた
「ならどこいら辺で下ろすのよ?」
「赤いのんちでどうよ?」
「………俺んち?何故に?」
「そう言えばオレ、魔界にいる時お前んちに逝った事がねぇんだわ」
「暫く還ってないから……在るか解らんけどな……」
「大丈夫だ赤いの!
黒龍は一族の管理をしている
況してや弟の家を廃墟にする筈ねぇだろ?
青龍の家だってちゃんと管理されていただろうが!」
「青龍は一族の誇りだからな管理されていても不思議じゃないんだよ……
でも俺は……そうじゃねぇからな……
魔界を出る前に……殲滅されても仕方がねぇ事をして……出たからな……」
赤龍が言うと兵藤がポコンッと頭を殴った
「黒龍はお前の事を一度だって悪く言った事はねぇぜ?
そんな黒龍がお前の家を廃墟にする訳ねぇだろ?」
「………朱雀……悪かった……」
「ほらほら、しゃきしゃき飛びやがれ!」
兵藤が言うと赤龍は軽快にスピードを上げた
自分ちに到着すると康太達を下ろして人の姿に変わった
黒龍は赤龍の家の前で呪文を唱えてドアを開けた
魔界の家に人間界並みのセキュリティはない
だが呪文を知っている者しか入れないから、ある意味……万全なセキュリティだった
康太は開けられたドアからズカズカと家の中へと入った
「綺麗にしてあるやん
黒龍、赤いののベッドの下にはエッチいのあったか?」
「残念ながらなかったな」
黒龍は笑って答えてやった
暫く赤龍の家で寛ぐ事にして、康太はソファーにドサッと座った
「さてと、黒龍、オレが魔界に来る事を兄者には言ってねぇよな?」
「あぁ、来る事すら知らないと想う」
「なら良い。気配を消して兄者の様子を見るつもりだ!
無理してそうならお灸を据えてやらねぇとな!」
「……お手柔らかに頼むな……」
「それは兄者次第って事で!」
康太はそう言い笑って、赤龍の家を見渡した
魔界にいた頃赤龍の家には遊びに来る事はなかった
珍しそうに康太はキョロキョロと家の中を見渡した
家の中は最低限の家具しかなく青龍の家と似た所があった
「必要最低限の家具しかねぇ所は青龍に似てるな」
康太が言うと朱雀は「赤いのはものぐさだからなモノを沢山置くと片付けが出来ねぇだけだろ?」と笑って言った
赤龍は唇を尖らせて
「此処にいてもお茶も出せねぇぞ」と文句を言った
康太は黒龍に抱き着くと
「なぁ黒いの赤いのが還って来るまでにもう少し家具を入れといてやれよ
このままじゃ寒すぎるからな」とスリッと頬スリして言った
「解ってるさ
赤いのが魔界に還る時恋人も連れて来るんだろ?
なら住み心地は良くないだろうからな」
「そうしてやってくれ!
さてと、逝くとするか!」
黒龍は康太に「馬を呼ぶのか?」と問い掛けた
「赤いのにもう少し頑張って貰って閻魔の邸宅の近くまで逝く
その後は徒歩で気配を消して兄者の家に入り込む事にする」
無理してる現場を押さえないと文句も言えないからである
家の外に出ると赤龍は龍に姿を変えて皆を頭に乗せた
そして静かに飛び上がると閻魔の邸宅の近くに下りた
康太は「オレは先に逝くかんな!お前達は応接間に行って待っててくれ!」
康太はそう言うと静かに走って閻魔のいる部屋へと向かった
閻魔の気配を詠んで進んで逝く
突然に現れた炎帝に侍従の者は驚いたが、シーッと唇に指を当てて黙る様に合図した
侍従は頷いて何もなかった様に通り過ぎて逝った
閻魔は体調が悪いのか執務室ではなく、屋敷の中で公務に当たっていた
閻魔の部屋へと向かおうとすると建御雷神が姿を現した
建御雷神はニコッと笑って、康太を背中に隠した
そしてドアを開けると
「また仕事しておるのか?
倒れたのであろう?
なら仕事よりも体調を整えねばならぬのではないか?」
建御雷神が言うと閻魔は「仕事は停滞させられませんから……」とにべもなく返答した
「炎帝がお前が倒れたなんて知ったら怒り出すぞ?
それでもよいのか?」
「炎帝には知らせてはおりません!
貴方が炎帝に知らせるなんて事……ないようにお願い致します」
「なぁ雷帝よ、何をそんなに根をつめて仕事をしておるのだ?
お前は……何をやろうとしておるのだ?」
「父者、魔界を護るのは私の使命なのです
口出しはご遠慮下さい」
「口は出しはせぬ
だが不安定な魔界にpropagandaは必要な事だ
今お前が倒れたなんて事態になったらどうなると想うのだ?」
「私が倒れようとも炎帝がいるじゃないですか!
propagandaは炎帝だからこそ効力があるのであって私ではありません!」
「………雷帝よ……お主本当に炎帝に殴られるであろうて…」
「炎帝は人の世にいるので大丈夫に御座います」
「本当にそう想うのか?」
「……え?……父者?何を……」
「我が息子炎帝よ!お主は魔界のpropagandaになれと閻魔がもうしておるぞ?
どうする?愛しき我が子よ」
まさか……
閻魔が目を見開くと、建御雷神の背中から愛する弟、炎帝が姿を現した
「兄者、ここ数ヶ月、黒いのから兄者の不調を、釈迦からは何とかしろ!の催促を!
八仙に至っては人間界に連れて逝って久遠に見せろ!の一点張りでオレは人の世にいても日々、兄者の不調を耳にする事となっていた
毘沙門天もあれは限界だから俺が気絶させて連れて来ようか?とまで謂わせていた
兄者、どうしてそこまで無理しているんだよ?
話してくれねぇと今後の対処が遅れる事となる」
キツい一撃を喰らって閻魔は仕方なく観念して………
一枚の紙を炎帝に見せた
炎帝はその紙を受け取り内容を確認する為に見た
建御雷神も覗き込み………唖然となった
「…………え………これは………」
「………人の世の……天変地異……これが何を指すのか……調べていて……寝ていないのだ……」
閻魔は総てを話して解決を探る事にした
「この事………天界も知ってるのか?」
「八仙……いや、皇帝閻魔からの報告だから、八仙は天界や神界、仙界にも同じ書面は送られていると想う」
炎帝はその紙を手にして…瞳孔が開く程に目を開いて驚いていた
南極と北極の絶対零度の溶解……
そして絶対零度の溶けた場所から亀裂と謂うか……
まるでクレーターの様な穴が発見された
本来クレーターとは天体衝突などによって作られる地形でだから……
南極と北極に小惑星が落下し衝突しなければ……クレーターの様な穴は出来ない
炎帝は「………これって何時……地球(ほし)に衝突したんだ?」と素朴な疑問を口にした
「解らない……だが、天体に長けている天界の学者達が調べているとガブリエルから知らせは入っている……」
「人間が住むようになって小惑星が衝突するなり落下したら……被害は絶大……下手すればこの地球(ほし)が真っ二つになるかも知れねぇ……
って事は人が住む前?……被害はなくとも地球(ほし)に損傷が残る筈だ……
って事は……最初から空洞にしたと謂うのか?」
炎帝はそこまで言って考え込んだ
「兄者、応接間に龍の系譜がいるかんな
この地球(ほし)の地脈について聞いてみるとするか!」
と言いスタスタ歩いて逝った
建御雷神は愛する息子と共に逝ってしまい……閻魔は観念するしかなかった
そして隠し持っていたもう一枚の報告書を…… 握り締めた
もう………隠しておけぬ
閻魔は総てを話すと決めて、応接間へと向かった
応接間には黒龍を始めとする四龍の兄弟が揃っていた
炎帝は閻魔の傍に近寄ると手を引き、ソファーに座らせた
そして……手にした紙を黒龍へと渡した
「おめぇ……知っていたのか?」
黒龍はその用紙を見ても顔色一つ変える事なく黙ってそれを見ていた
「………知ってたって事か……ならなんで謂わねぇんだよ?
兄者がどうのこうのと出て来る前に筋を通すべきじゃねぇのか?」
炎帝は怒っていた
だが黒龍は炎帝を見て
「閻魔が謂わぬモノを俺が謂えると想っているのか?」と笑った
「………だな……おめぇは兄者の駒だかんな……」
「違う!俺は魔界の一柱!
魔界の明日の為に生きている」
炎帝は黒龍を見ていた瞳を閻魔に向けた
そして手を差し出した
「持ってる紙も寄越せ!」
どうせこれ以上悪い事は起きる筈なんかない…
閻魔は炎帝に用紙を差し出した
炎帝は閻魔の前に立つと、黙って用紙を見た
その紙には未だに闘いの終わらぬ内戦の国の情勢が書かれていた
想像以上の…内容で…耳にすらした事のないクーデターが勃発していた
アラブ諸国連合末端の国、サザンドゥーク共和国……アラブの方ではالبلد الأزرق青い国と言われ海と山脈に囲まれたアラブ諸国では珍しい資源豊かな国で……軍事転用可能な鉱石が見付かった
その鉱石はウランよりも扱いやすく……そして破壊力も絶大だった
その鉱石を手に入れた国こそ……この地球上で唯一生き残れる力を手に入れる事が出来る……とまで謂われている
だがサザンドゥーク共和国はその石を封印しようとした
その力の大きさに……国王は危険と判断し葬り去る事に決め……暗殺された
石は行方不明でサザンドゥーク共和国は国王の子供達、2人の中から時期国王を……と、派閥争いが勃発
国内情勢の悪さが近隣諸国に影響を及ぼし
新しい鉱石を手に入れる為に諸外国から戦争を吹っ掛けられている
「なぁ兄者、この国どうする気よ?」
「我等は……人の世に関与は出来ぬ……
だが……その鉱石を使われては……
この地球(ほし)が滅ぶ事となる
阻止せねばならぬ……そして二度とその鉱石を探し出させてはならぬ
それが我等魔界と天界と仙界と妖精界と神界、そして冥府の総意である
だが我等は人の世には関与は出来ぬ
何らかのカタチを考えねばならぬのは確かだが……まだ手はないのが現状だ」
「なら兄者や天使は指を咥えて見てるしか出来ねぇな」
「……え……炎帝……何をする気だ?」
「人の世の事は人間がやるしかねぇだろ?」
「………お前が出ずともよい……」
「だが天界、神界、妖精界、仙界、冥府の意見は人の世にいる炎帝に任せようとなる筈だぜ?」
「………お前に……任せたくはないのだ
何か方法がある筈だ……絶対にある筈だ」
閻魔は魘された様にそう言った
その言葉を聞けば総てのパズルは嵌まったも同然だった
弟に危ない橋は渡らせたくはない
命の危険もあるや知れぬ所へなど……送り出したくはないのだ
だから閻魔は倒れても尚、方法を模索して……苦しんでいたのだ
炎帝はソファーに膝をつくと兄を抱き締めた
「兄者、オレは適材適所配置するが役目を持つ!
況してやオレは今人として生きている
ならばオレ等がやらずしてどうする?」
「炎帝……それでも兄は……お前を危険な目に合わせたくはないのだ……」
「兄者、オレは兄者が護る魔界を護ると決めている
オレの魔界にいる存在理由はそれしかねぇんだ
それが出来ねぇのなら……オレは魔界にいる理由がなくなる……
そしたらオレは……魔界には還れねぇ……」
「炎帝……」
「オレは配置された存在
軌道修正はオレが務め!
だろ?兄者……」
「………あぁ……そうであったな……」
炎帝は閻魔の額に口吻けするとスッと離れた
四龍の兄弟の前に立つと
「龍は地脈を探り、地脈を護る
そんな龍のお前達に聞きてぇ事がある」
炎帝が言うと青龍は炎帝の手を取り引き寄せた
自分の膝の上に座らせて旋毛に口吻けを落とした
「北極と南極に……クレーターみてぇな衝撃を受けた様な穴がある
この穴の意味を知りてぇ……」
赤龍と地龍は食い入る様にして渡された紙を見ていた
赤龍は「そもそも小惑星が地球に衝突したなら……被害は絶大、なのに何故誰も気付かなかったのよ?」と素朴な疑問を問い掛けた
「オレもそう思った
なら……人の住む前の話になる
だけど……この地球(ほし)が出来た時に下りた神々だって、んな事は知らねぇと想う
なら何時そんな穴が出来た……って事だよな?
で、この地球(ほし)の中心は空洞なのか龍に聞きたかったんだけど?どうよ?」
炎帝が問い掛けると地龍が
「俺はこの地球(ほし)の地脈を司る神です!
なので真ん中がすっからかんなんて話は……聞き届けられません」と引く気はない顔で訴えた
「実際、地球の自転の上と下とで果てし無い穴が発見された
永久凍土が溶けなければ解らない事態だったけどな…
見付かった以上は黙ってられねぇ……って事だ
あの穴は何処まで空いてて、どうなっているか?解らねぇ以上は……調べねぇとならねぇ!
そしてサザンドゥーク王国で見付かった鉱石も然りだ!
新種の鉱物が出来たのか……創られたのか…解らねぇけど捨てておけねぇ
調べねぇとな!」
「炎帝、少し時間をくれませんか?
この地球(ほし)の地脈を総て探ってみます」
「なら任せて大丈夫か?
だがお前一人で完遂出来る仕事じゃねぇかんな人手を貸し出してやる
だから人の世に来い!
NASAに知り合いがいる
そいつと組んで地脈を探ってくれ!」
「NASA?そこは何処ですか?」
「アメリカ航空宇宙局だ!
National Aeronautics and Space Administration, の頭文字を取ってNASAと呼ばれている所だ
宇宙から地球を反転させながら地脈を探った方が早い
話は付けとくから赤龍に連れられてアメリカへ逝ってくれ!
黒龍と朱雀はガブリエルの使わした天界の学者と連絡を取って南極と北極のクレーター観測してくれ!
オレと青龍はサザンドゥーク共和国へ出向く
その前に閣下の所へ逝って情報収集をさてくる!」
炎帝が言うと黒龍は「手配が出来次第朱雀と共に逝く事にする」と問い掛けた
「頼むな……お前達に無理難題言って申し訳ない…」
「気にするな、!それより飲み明かそうぜ!」
「この後オレは青龍を洗ってやるつもりだからな
洗い終わったら朝まで飲み明かそうぜ!」
「なら洗い終わるまでお前んちで待ってる事にする」
黒龍が言うと朱雀と赤龍と閻魔はバイバイと手を振って見送った
青龍は炎帝を立たせると、自分も立ち上がり応接間を出て逝った
二人を見送り赤龍は「これも……混沌と謂われる奴の仕業なのかよ?」とボソッと呟いた
黒龍は「さぁな……だが異常事態なのは確かだけどな……んなのは誰にも解らねぇよ」と答えてやった
朱雀は「混沌だが世紀末だが知らねぇけど、んなのは打破して逝くしかねぇだろうが!」と前向きな発言をした
閻魔は「朱雀は本当に前向きですね」と言い笑った
「別に前向きじゃねぇよ!
アイツが暴走するのを止めるのが俺らの仕事じゃねぇか!
ちんたらやってたら……アイツが切れるだろうが!
暴走したら止めるのは青龍だけでは荷が重い……って言うか、青龍は喜んで炎帝と共に逝こうとするじゃねぇかよ?
んとに……とんでもねぇ夫婦だよな」
朱雀が言うと赤龍が「だな」と言い朱雀に賛同した
閻魔は苦笑した
炎帝……
愛すべき我が弟よ
私はお前を出す気はなかった
お前に知らせるつもりはなかった
だが……もう……歯車は回ってしまっていた
もう誰にも止められないのか?
炎帝……地球など救わなくて良い
お前が生きていてくれたら……それで良い
そんな事を言ったら……
お前は怒るだろうか?
兄は……何よりもお前の幸せを願って止まないのに……
炎帝の家へ出向くと使用人の雪が出迎えてくれた
「いらっしゃいませ
応接間でお待ちください
炎帝と青龍は湯殿に参りましたので当分はお二人きりになります
それを邪魔する者は何者でも赦しは致しません!」
雪はメラメラ主を護る為に体躯を張っていた
朱雀は雪の頭を撫でてやると
「邪魔しねぇよ!
あの二人は一緒にいるならそれで良いんだからな!」
と主を想う雪の想いに答えてやった
「奥へ……どうぞ!
閻魔様、一番にお入り下さい」
雪に謂われて閻魔は「え?私からですか?」と何か嫌な予感を感じていた
黒龍が閻魔の背中を押す
すると嫌でも先に応接間へと押しやられ……一番に入るしかなかった
応接間の中へ入ると……
「閻魔たるもの体調管理は誰よりも大切な役務じゃねぇのか?」
と地を這うような声が響いた
閻魔は目を見開いた……
朱雀はヒョイと閻魔の隙間から応接間を覗いた
するとソファーには何処から湧いたのか……
久遠が八仙と共に座っていた
「……何故……此処に?」
閻魔は呟いた
「俺か?俺はお前の父と言う奴に連れられて此処に来た
此処に来たら八仙が治療を手伝うと申し出てくれたからなお前を待っていた」
「………あの……クソジジイ……」
閻魔は父を汚く罵った
「おめぇは閻魔大魔王様なんだろ?
ならくたばってねぇで体調管理をちゃんとしやがれ!
俺は神は万能かとずっと思ってたぜ?
まさか不養生してヘロヘロの神なんて誰が想像出来るよ?」
本当の事だがあまりの言いように言葉もなく……
「……面目ない……」と言うしか出来なかった
「さぁ診察しようじゃねぇか!
人の世から過労に効くであろう点滴を持って来た
八仙も過労に効くであろう薬湯を持って来てくれたからな!
八仙には特に苦い薬湯にしてくれと頼んでおいた!覚悟しやがれ!」
「………これは……炎帝の……」
「アイツの愛する兄の為に俺が呼ばれて直々に診察してやるんだ!感謝しやがれ!」
「………私は……元気です……」
「今にもぶっ倒れそうな顔で謂われてもな……
兵藤の小倅と一生、閻魔大魔王を押さえつけやがれ!」
「うわぁ……ゃめ……」
「はい!然と!」
「命令承ります」
二人はそう言い閻魔を左右から取り押さえて診察しやすいように久遠に見せた
「大人しくしがれ!」
鬼がか弱き閻魔を取り押さえ嗤う
ポキポキ指を鳴らし……片手には何故かメス……
「ギャー!」
閻魔の悲鳴が空しく響いた
それを湯殿に浸かる炎帝と青龍は耳にして
「治療、始まったみたいですね」と呑気に呟いた
「急患があったらしくて3日も寝てない久遠は結構怖いモノがあるからな……タイミングが悪かったかもな」
「ですね……でも不養生ばかりする人ですからね、良いお灸が据えられたと想いますよ?」
「だな!」
炎帝はガハハッと笑った
青龍は妻を膝の上に乗せて、口吻けをした
「こんな時間、久しぶりですね」
「だな、忙しすぎたもんな
オレは時々、お前の龍の姿が見たくなるんだ」
忌まわしい龍の姿を見たいと謂われて青龍は嬉しそうに笑った
「それは嬉しいです」
「ずっと……焦がれて見て来たからな……
初めて青龍を見たのは、黒龍んちに逝った時、屋敷の上を飛んでるお前を見た時だった
オレは飛んでるお前を美しいと想った
こんな綺麗な生き物は見た事がねぇと想った
お前に一目惚れして……ずっと見て来た……
蒼い龍……その鱗の一枚さえも美しく輝いていた…
その美しさにオレは……ずっと触れたいと想っていた
だからこうしてお前を洗ってやれる日が来るなんて思ってみなかったから……
幸せすぎて……怖くなる時がある」
「僕だって……ずっと君に触れたかったのです
お日様の匂いのする君の傍に逝きたかった
でも僕には勇気がなかった
君の回りは何時も……沢山の神々がいた
君の回りは何時も暖かい空気に包まれていた
だけど僕は君には近付けませんでした
君の傍で、君の匂いを感じられるのは…役務室で君に注意をする瞬間だけ…
何度も押し倒してしまおうか……と想っていました」
そう言い青龍は強く…炎帝を抱き締めた
炎帝は嬉しそうに笑うと青龍の唇に口吻けた
そして立ち上がると湯から出た
「洗ってやるよ青龍
今日の石鹸は妖精が集めた蜜で出来てる濃蜜の石鹸らしいぞ?
龍になれよ」
炎帝は石鹸を泡立ててそう言った
青龍は龍の姿になると長い舌で、炎帝をペロペロ舐めた
「くすぐってぇよ!」
「愛してます炎帝
君だけを愛してます」
「オレも青龍だけを愛してるかんな」
炎帝はそう言い青龍の体躯を洗い始めた
鱗の一枚一枚丁寧に洗われて、青龍は気持ち良さそうに目を閉じていた
青龍にとったら至福の時だった
鱗の表面を洗うと鱗の後ろも洗ってくれる
お髭の一本さえも愛しげに洗ってくれる姿は……
この世で一番愛する存在なのだ
「甘ったるい匂いすんな」
濃蜜だけあって甘ったるい匂いが青龍を包み込む
「気持ちいいです奥さん」
炎帝は青龍の体躯に這い上がると、角も洗ってやった
ペロッと角を舐められ……
「……っ……角は……」
と呻いた
「角も綺麗に洗わねぇとダメだろ?」
ペロペロと舐められ……洗ってない行為に……
「炎帝……なら……下も洗って……」
と辛い事情を訴えた
「下って?」
炎帝は惚けて角を舐めていた
青龍は勃起したぺニスを炎帝に見せ付けた
「君が……こうしたのですよ?」
炎帝は龍の聳え立つぺニスを見て、あまりの迫力に……すげぇな……と呟いた
炎帝は青龍の頭から下りると、聳え立つぺニスの傍に近付いた
電柱位あるぺニスを目にして……
「青龍、少し小さくしてくれよ」と少し文句を言った
電柱を洗うのは至難の技だから……
それでなくても龍の体躯を洗うのは結構体力がいる
モップでも持ち込んで洗ってやろうか?
そしたら青龍は落ち込むだろうから……それは出来なかった
青龍は謂われて少しだけぺニスを細くした
ある程度のコントロールは必死で習得した
炎帝に触って貰えないのは悲しいから、必死で八仙に教えを乞いて編み出した技だった
ちなみに龍の体躯も大きくしたり小さくしたりも取得した
愛ゆえの一念を通した青龍だった
炎帝は少し小さくなったぺニスを洗ってやっていた
ペロペロ舐めて悪戯して洗って逝く
龍のぺニスは血管が浮き出て……蛇が電柱に巻き付いた感じでかなりのグロテスクだった
ドクドク脈打つ熱さを感じて……
炎帝は青龍のぺニスに頬ずりした
先っぽの割れ目をペロペロ舐め
雁首の下のイボイボを指で逆撫で舐める
「……ぁっ……あぁ……炎帝……イキそうです……」
「イッても良いぜ!」
「嫌です!君の中で果てたいのです」
そう訴える青龍に炎帝は「オレにかけろよ」と言う
堪えきれなくなった青龍はイッた
夥しい量の精液が炎帝に降りかかった
「ごめん……君を汚してしまいましたね」
青龍はそう言い炎帝を舐めた
「汚れてなんかいねぇよ
お前の精液だかんな……
嬉しいに決まってるだろうが!」
青龍は人の姿に戻ると、炎帝を抱き締めた
「僕の総てを愛してくれる君が…愛しくて殺してしまいそうです」
噛みきりたい程に愛しい……
誰かのモノになるならば……殺してしまうだろう……
君を殺して僕も死ぬ……排他的な愛し方しか出来ない自分に総てをくれる
愛してると想う傍から愛しさが募る
「愛してます……」
愛してますしか出て来ない
その言葉しか自分は思いを伝える術を知らない
面白味のない奴……
ずっとそう言われて来た
神の時も人の時も、同じ評価しかされなかった……
なのに君はそんな僕ごと包んで愛してくれる
青龍は炎帝の唇に口吻けた
口吻けするごとに愛してますと囁き
炎帝はそれを受け止めた
精液まみれの炎帝を押し倒し愛撫する
この体躯は僕しか知らない、僕の為に在る
お尻の穴に指を挿し込み広げて逝く
唇は炎帝の唇から離れず
指は炎帝の体躯を弄り、穴を広げる
戦慄く蕾は熟れて蕩け指じゃ物足りなさそうに貪欲に求めて蠢く
勃ちあがった性器は青龍のお腹で擦り、感じようとしていた
「青龍……欲しい…ねぇ…早く…」
「何が欲しいんですか?」
直ぐに挿れたい衝動を押さえて焦らす
「お前の……」
炎帝はそう言い青龍の肉棒に手を伸ばし触れた
「コレ……」
熱い吐息は欲情して濡れていた
ドックンッ……ドックンッ……と脈打つ肉棒は充血して赤黒く震えていた
「コレを……何処に欲しいのですか?」
炎帝は足を抱えると、双丘を押し開き……青龍に見せ付けた
「ココに……」
「何処ですか?
それでは解りません」
炎帝はお尻の穴に指を挿れて左右に開いた
真っ赤な腸壁がうねうね蠢いて、怪しく誘う様に、青龍は唾を嚥下した
「物欲しそうな……穴ですね」
青龍はそう言いペロッと舐めた
「ひっ……」
その感触に炎帝は想わず射精しそうになり悲鳴を上げた
自分の指を美味しそうに呑み込み、グチュグチュと音を立てていた
舌を挿し込むと取り込もうと奥へ奥へと飲み込み始めた
貪欲な穴はそれだけでは足りないと震えていた
「……青龍……挿れて……」
「なら脚を抱えてなさい」
青龍はそう言うと、炎帝のお尻の穴に一気に肉棒を突き立てた
開いたままの穴に硬く血管が浮き出た肉棒が挿入って逝く……
指が結合を確かめて震える
「ねぇ……抱き着いて良い?」
「良いですよ
背中が痛いですから僕の上が良いですね
掴まってなさい」
青龍は炎帝が抱き着くと、炎帝の体躯を繋がったまま抱き起こして膝の上に乗せた
愛する男の匂いが鼻孔一杯に満たされる
優しい男は炎帝が傷付くのを誰よりも許せなかった
だから大切に大切に、抱き締めて愛を注ぐ
一つに繋がったまま動く事なく互いの体温を味わう……
「青龍と出逢えて良かった
オレの人生を満たしてくれるのが青龍で良かった」
「僕も君と出逢えて良かったです
僕の総てを愛してくれるのが君で良かったです」
二人は額を合わせて笑うと口吻けた
優しい口吻けが、口腔を弄る接吻に変わる頃…動きは激しさを増して……
互いを貪る
腸壁を擦られ、前立腺をエラで引っ掛かれ……炎帝は仰け反った
その首筋に青龍は噛み付いた
痛みと快感と交ぜ合わさった感触に炎帝はアナルを搾る
搦め取られ搾られる快感に……青龍は達しそうになった
「……ぁん……あぁっ……青龍……イクっ……ねぇ……イッても良い?」
「3回目にイキます……一緒に……」
炎帝は青龍に縋り着いた
青龍は炎帝の肩を噛み付き……言った通り3回目で射精した
炎帝は青龍のお腹で性器を擦りあげ、3回目に一緒に射精していた
はぁ……はぁ……と荒い息が漏れる
秘孔から……飲み込めれなかった精液が溢れる感覚にブルッと身震いしつつも、息を吐き出した
「んっ……まだ……もう少し待てって……」
イッたばかりなのに……炎帝の中の青龍はピクンッピクンッ精液を撒き散らし痙攣していた
その刺激に炎帝は次の快感を味わっていた
青龍は結合部分に指を這わすと……
「漏れて来てますね
もっと絞めてないと溢れちゃいますよ?
一滴残らず僕のを君の中に注ぎ込むから、君は妊娠する勢いで僕の精液を受け止めて下さい」
淫靡に笑い……抽挿を再開し始めた
「少し休ませろ…それにオレは妊娠しねぇよ」
幾ら注ぎ込んでも妊娠なんかしない
青龍も男なら炎帝も男だった
同性を選んだ者の宿命だった
「僕は君を独り占めしたいので妊娠しなくて大丈夫です」
青龍はそう言い楽しそうに笑った
その顔は見蕩れる程に男前だった
この男を愛して良かった
この男だけを愛し続けて良かった
自然に唇が合わさり貪る様な接吻になる頃には、互いを求めあって一つに溶け合い……
愛し合った
気絶しそうな程に気持ちよく
青龍の性欲の尽きるまでセックスは続く
炎帝がヘロヘロになり気絶しても終わらない
愛情の深い龍は尽きぬ愛で妻を愛し貪った
終わらない行為に焦れた黒龍が湯殿を訪れ文句を言うまで、その行為は終わる事なかった
黒龍が湯殿へ来ると炎帝は気絶していた
なのに青龍は炎帝を抱いていた
「なぁ……気絶してるぞ?」
少しだけ文句を言う
「何時もの事です
お気になさらずに!」
止める事なく行為は続き……青龍は炎帝の中で達した
意識を手放している炎帝も薄い精液を漏らし……イッていた
「なぁ……飲み明かすんだろ?」
「ええ。これより妻の体躯を洗って、そちらに向かいます」
「……青龍……少しは手加減してやれ」
「嫌です!僕の愛は何時も真剣勝負なのです!
手を抜く等と言う文字は僕の辞書には存在しません!」
「………俺達は炎帝との時間を大切にしてる……
それを……奪わないでくれ……」
「奪っておりませんよ?
何時だって僕は炎帝の好きな様に動いて、愛する妻を送り出しているのです
一度だってその動きを止める事はない……
だから一緒の時は時々箍が外れてしまうのです
愛する妻の存在を確かめねば……狂います
そこ行為が少しだけあるのは多目に見て下さい
その後は……僕は炎帝の影として見守ると決めているのですから……」
「……青龍……」
青龍の思わぬ覚悟を聞かされて黒龍は何も言えなくなった
青龍は炎帝を綺麗に洗うとお湯に浸かった
黒龍は「待ってるから……」と言い湯殿を後にした
炎帝は気が付くと青龍を抱き締めた
「未来永劫、オレはお前と共にいる
離れるな青龍……オレを離すな」
「ええ!離したりするものですか!
体躯……辛くないですか?」
「大丈夫だ……大丈夫だ青龍
オレは全身でお前に愛されて幸せを噛み締めてるんだからな」
「…兄達が待っています」
「あぁ、体躯、洗ってくれたんだろ?
ならお前が抱き上げて連れてってくれればいい
オレの夫はお前だろ?
ならちゃんと連れて行ってくれよ」
青龍は甘やかされていると何時も想う
どんなに無茶しても許してくれる
愛しているんだと答えてくれる
そんな時、酷く甘やかされていると感じる
青龍は炎帝を強く抱き締めた
そして抱き締めたままお湯から上がると、綺麗に体躯を拭いた
そして服を着せて、自分の支度をした
仕度が整うと青龍は炎帝を抱き上げて炎帝の邸宅へと向かった
炎帝の邸宅の応接間は……酔っぱらいの巣窟と化していた
黒龍は「お前達が中々来ないから……暇潰しに飲みやがる奴が増えただろうが……」とボヤいた
応接間の中には司命と司録も座って酒を飲んでいた
玄武も白虎も何故か座っていて、程よく酔っていた
司録は「主、お仕事を終えて来ました!」とご褒美を待つ犬よろしく飛び付かんばかりに報告していた
「司録、ご苦労だったな
今回は想定外の仕事だったのに助かった」
「主!貴方の為ならば何処へでも出向く所存です!
貴方の役に立つ為だけに俺は日々仕事をしているのですから!」
司録はそう言い……涙ながらに覚悟を語っていた
司命は知らん顔で赤龍に
「赤いの、つまみが足りません
ひとっ走りして雷魚でも捕まえて来なさい」
と無茶ぶりを言っていた
「無茶言ってるよぉこの子……」
一生がボヤくと司命は笑っていた
笑いの絶えない部屋に雪は入ると、朱雀の膝の上に「どうぞ!」と言い小さな物体を置いた
「何?」と言い朱雀は膝の上を見ると……
「お久しぶりです朱雀!」と小さな妖精、クロスが朱雀に挨拶した
少し前まで兵藤の家の温室にいた妖精だった
「クロス!元気だったか?」
兵藤は嬉しそうにそう言うとクロスを掌に乗せた
「傷は治りましたか朱雀?」
クロスは心配そうに尋ねると朱雀は「治ったぞ」と優しく答えた
炎帝は「それよりどうしたんだ?クロス」と訪れたクロスに問い掛けた
クロスは炎帝にペコッとお辞儀をして
「北極と南極のクレーターの様な穴へボクもお連れ戴きたくてやって参りました」と訪問の目的を告げた
炎帝は顔を曇らせ
「それは無理だクロス」と断った
「何故に御座いますか?」
「お前はその情報を…誰から聞いた?」
「我が姉、シュゼリエから聞きました
姉はボクにお前の目で確かめて来い!と言いました
これは地球の危機です
ボク達、地球に住む者達総ての危機でもあるのです!
それを黙って過ごすつもりか!調べて来い!と仰せつかって参りました」
「……クロス…危ねぇ所なんだ……引いてはくれねぇか?」
「嫌です!絶対に嫌です
探査に逝けずに燻っていたりしたら我が姉シュゼリエに半殺しにされます!
ボクは魔界の小妖精を司る王になる存在
己の目で見ずにして何を言えましょう!」
クロスが言うと朱雀は爆笑した
「ならお前は俺が連れて逝ってやろう
人の世に還ったら北極か南極に逝って調査をしねぇとならねぇからな!
久しぶりに俺のポケットに入って付いて来るか?」
「はい!是非ともお供させて下さい!」
クロスはニコッと笑い兵藤が広げた胸ポケットに入り込んだ
「久々に貴方と共に逝けるのが嬉しいです」
「俺も久々にクロスと共に過ごせるから嬉しいぜ!」
兵藤とクロスの間には築かれた絆があった
離れて過ごしていても出逢えば時間も時も戻る関係がそこに在った
クロスは兵藤のポケットに掴まり炎帝を見て
「炎帝、兄様達が貴方に出逢ったならお伝えしてくれと謂われた事があります
お伝えして宜しいですか?」と声をかけた
「あぁ聞かせてくれ」
「妖精がまた大量に姿を消す……そんな予言が精霊王から出されました
妖精王はそれを危惧されてボクを遣わしたのです
………この世の異変……ボクにも教えて下さいませんか?」
「………精霊王か……また難儀な所からの予言と来たか……
そうだよな妖精よりもこの世に根深いのは精霊だから予言も出るってものか……
朱雀、クロスに総て話してやれよ」
炎帝が言うと朱雀は「総て?」と問い掛けた
「あぁ総て話して納得を得てくれ」
炎帝に謂われ朱雀はクロスに総て話した
この蒼い地球(ほし)の危機、総てを話した
話を聞いたクロスは茫然自失となりつつも、事態を受け入れ……
「………兄上達にご報告……致します」とやっとの事で口にした
「この報告は妖精界にも伝達されている
天界、魔界、仙界、妖精界、神界、冥府…この蒼い地球(ほし)に関わる総てに伝令は来た筈だ
だから今更報告は必要ねぇ事だと想うぜ」
「……ボク達は……知りませんでした……」
「末端の者にまでは逝かない様に操作してあるからな
末端の者が不用意に知ればパニックになる
真実をねじ曲げで伝われば騒動は暴動になる
そうならねぇ為に上にしか知らない事にした
クロス、お前が知った衝撃は大きいだろ?
なれば他の者が知った衝撃はもっと大きい筈だ……解るな?」
「……はい……なればボクは……
同胞を護る為に最善を尽くさねばなりません」
「クロス」
「はい。」
「この地球(ほし)を宇宙から見た事はあるか?」
「ありません……」
「目を瞑って見ろよ」
謂われクロスは瞳を閉じた
炎帝はクロスの額に手を翳し呪文を唱えた
「この地球(ほし)は美しい
蒼く輝く美しい地球(ほし)だ
お前の護ろうとする地球(ほし)だ
どうだ?とても美しいだろ?」
クロスの脳裏には宇宙から見た地球が映し出されていた
蒼い地球(ほし)が映し出されていた
「とても美しいです」
「オレ等はこの地球(ほし)を護る
この地球(ほし)に生きる総てを護る
力を貸してくれクロス
人も妖精も神も……この地球(ほし)も……決して消滅させたりしねぇ!
そうだろ?クロス」
クロスは目を開けて炎帝を見て頷いた
「はい。ボクもこの地球(ほし)が好きです
ですから決して消滅させたりはしない!
最後の最後まで抗って足掻いてみせますとも!」
「頼もしいな
頼むなクロス」
「はい!」
クロスが返事をすると炎帝は人差し指でクロスの頭を撫でた
「話は終わりだ
夜が明けたらオレ達は閣下の所へ出向く
そして手筈を整えて貰って、それぞれの所へ出向く事とする
それまでは暫し一時……羽目を外してみようぜ」
そう言うと炎帝は小さなお皿に甘露酒を注いだ
朱雀はポケットからクロスを取り出すとお皿の上に置いた
暫し……時を忘れて飲み明かす
酒を交わせば血は濃くなる
絆と血を混ぜ合わせ先へと進む
この地球(ほし)を護る為に……
我等は逝くのだから……
翌朝、炎帝達は人の世に旅立つ事にした
久遠は治療が必要な患者や閻魔をもう少し治療してから、八仙の所へ逝き患者の薬を八仙と作ってから人の世に還ると言い出した
「久遠先生の事は我等八仙にお任せあれ!
治療が終わり申したら必ずやお呼び致した時間に人の世に送り届ける故、心配は不要じゃ!」
と八仙が言うから遺して逝く事にした
閻魔は久遠に「……鬼にならぬか?」と謂った程だった
「鬼か、鬼は康太の伴侶が相応しかろう!」
久遠は榊原よりは鬼じゃないと言い相手にしなかった
閻魔は「……あぁ……あれも鬼ですね」と妙に納得した
だが鬼も裸足で逃げ出す人間の存在は大きい
早目にスカウトしたいと想うのは必然だった
八仙は閻魔に「久遠は我等八仙の一柱に加わるのじゃ!」と文句を着け
八仙と閻魔は喧嘩した
ワイワイ煩い中確実に時間は進んで行った
「雪、人の世から持って来た珈琲を兄者に淹れて来てくれ!」
目配せして雪は頷いた
雪が淹れて来た芳しい珈琲は閻魔の前に置かれた
閻魔はその珈琲を口にした
魔界で飲んだ事のない珈琲に舌鼓を打ちながら、閻魔は珈琲を飲み干した
すると………瞼がトローンと閉じて……閻魔は眠りに落ちた
朱雀は「睡眠薬でも混ぜたのかよ?」と眠りに落ちた閻魔を見て問い掛けた
「そう。大人しく休む奴じゃねぇかんな
無理矢理眠らせるしねぇってんで、久遠に持ってきて貰った睡眠薬を雪に頼んで混ぜさせたんだよ!」
「なら還るとするか!
人の世に還ったら閣下の所へ逝くのかよ?」
「スムーズに動く権利を手にしねぇとな
足止め食らってばかりじゃ身動き取れなくなるかんな……
人の世は何かにつけて制限がある以上、勝手には動けねぇかんな…」
「だな、なれば飛鳥井の家に還り閣下の所へ出向くとするか!」
炎帝が言うと皆は立ち上がった
黒龍や地龍も人の世に逝く為に立ち上がった
すると司命も立ちあがり
「では僕も還るとします!
司録、後は宜しくお願いしますよ?」
「解ってる!
くれぐれも主を頼むからな!」
「解ってます!では司録、閻魔を宜しく頼みます」
「承知した」
司命は頷くと赤龍の傍へ行った
閻魔の邸宅の庭に出ると赤龍が龍に姿を変えた
みんなして赤龍の頭に乗り込むと、魔界を後にした
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