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第37話 謀略 ②

イルメキシタイン王国は喪に服すかの様に葬送旗を掲げた 黒い葬送旗が風に靡く様を康太は城の上から見ていた イルメキシタイン王国は完全なる民主制を導入する事を決めた 国王制度は廃止して、アラブ諸国連合の指導の元、国民の手で国の代表者である議長を選ぶ事となった 議長が国王に変わり国を動かして逝く 皆の総意だった イルメキシタイン王国の国王と二人の姫の亡骸は、王宮の横にある丘に墓を立てられ奉られた イルメキシタイン王国の象徴 国民は処刑の日に見た王の言葉を胸に刻み 歩き始めたのだ この国の存続こそが国王の願いだから…… 「良い風が吹いてるな」 康太は改革の成功を目にして、そう呟いた サザンドゥーク共和国は、イルメキシタイン王国の変革を目の当たりにして…… 内乱を納めた 今は争っている場合ではない…… と表向きはそう言う姿勢を取っていた 内心はアラブ諸国連合に国への介入をされたのではたまったものではないからだろう 何の予兆もなかったのに……イルメキシタイン王国が崩壊した 国王は国民の目の前で処刑された サザンドゥーク共和国はそのニュースを聞いた途端、何が起こっているのか探りを入れた 何一つ情報が入って来ない辺り、とんでもない事態が起こっているのだろう……と踏んで内乱を納めた でなくば……痛くもない腹を探られ…… 此方まで処刑されたりしたら……たまったものではないからだ! 堂嶋を始めとする国連の特使は、紆余曲折を経てサザンドゥーク共和国へと入る事を許された 堂嶋は総理から委託された仕事をすべく、他国の国連の職員や特支達とサザンドゥーク共和国を見て回っていた 康太は榊原は、堂嶋とは別行動となり、ガイドを着けて貰って目的地の発掘現場へと向かった サザンドゥーク共和国から車で四時間程走った所に木が一本も生えそうもない荒れた大地があった ガンザス山はそんな荒れた崖と岩肌で出来ていた ガンザス山の中腹に洞窟があり、そこでタンザナイトと言う鉱石が採れるとガイドは言った 「タンザナイトの他はどんな石が採れるんだよ?」 康太はガイドに問い掛けた 「赤鉄鉱(ヘマタイト)、褐鉄鉱(リモナイト)、磁鉄鉱(マグネタイト) ウスタイト、磁赤鉄鉱(マグヘマイト)…上げたらキリがない程だ」 ガイドはマニュアル通りの返答を返した 「ウラン鉱石と等価の石は何処で採掘されたのか?」 「それは……俺等ガイドの知る範囲を越えているので解りません……」 「オレ等は“あの石”の採石現場へ案内しろって謂わなかったか?」 「………」 「ガイドって謂うなら色々と知ってると想ったんだがな… 国のお抱えのガイドって謂うのに名ばかりならな……不要だな そんな無能が一緒にいても役に立たねぇからな! 帰って良いぞ」 康太は挑発するように莫迦にして言った ガイドの男はわなわなと震えて康太を睨み付けていた 「それは無理だ…… お前等を見張っていろとアリーシャ様の言い付けだからな!」 やはり第三王女のアリーシャの息が掛かった存在だった まさか自分からこんなに簡単にゲロってくれるとは………安直すぎて康太は笑い飛ばした 「オレ等を殺せばお前の国なんか造作もなく潰されるぞ?」 「お前は特使の補佐程度の人間だってのは承知している 補佐程度の人間が不慮の事故で岩盤の下敷きになったとて、事故として片付けられるがオチだろ!」 簡単な仕事になると高を括っている言葉だった 「ほざけ!サザンドゥーク共和国がこれからも生き残る為の石を易々教える訳なんてないに決まってるだろ?バーカめ! お前等はこの洞窟で死ぬ事となる!」 ガイドの男は得意気に言い高笑いして手に持ってる自爆スイッチを見せ付けた 「このボタンを押せば、洞窟の入口は崩壊する! お前達はこの洞窟から一生出られはしないんだ!」 康太は「この場でボタンを押せばお前も出られねぇぞ?」と揶揄した 「この命はとうにアリーシャ様に捧げた命だ!」 覚悟の末の行動だと謂わんばかりだった 榊原はガイドに 「あの石はこの山では採れてはいない筈ですよね?謂いなさい!何処で採掘されたのですか!」と詰め寄った 「……お前等……何者だ?」 そんな詳しい事を何故知っている…… 「あの石はこの世にあってはならないのです! 謂いなさい!採掘現場は何処ですか?」 榊原は更にガイドに詰め寄った 「お前等みたいな盗人に謂うもんか! お前等は石を狙っているだろ? お前等みたいな盗人を見張っていろとアリーシャ様から、言い付けがられているんだ!」 「イルメキシタイン王国の第三王女か…… 彼女は頼る国を失った そしてサザンドゥーク共和国は既に自由になど出来はしない!」 「煩い!お前等が何を知っていると謂うんだ! アリーシャ様は……国の為に嫁いだのに……国王はアリーシャ様を愛す事はなかった…… あの方の苦しみが解るか? 国王の亡き後、アリーシャ様のお子が国王になられるんだ! やっとアリーシャ様の悲願が達成するんだ! お前等になど邪魔はさせない!」 「……哀れな奴だな……」 「煩い!煩い!うるさい!!! お前等など…この地で事故に遭って死に絶えるが良い!」 ガイドの手は震えていた 本当は怖いのだろう 当たり前か……人の命を奪うのに幾ら訓練されていたとしても平静を装えるになるには……ガイドはまだ若僧の域だった 「神よ……アリーシャ様に栄光を!」 ガイドはそう言い自爆スイッチを押した スイッチを押した瞬間、爆音が響き渡き地鳴りがしてグラグラと物凄い揺れがした 洞窟の入口はガラガラと音を立て崩落を始めた 岩盤鉱石が入口を閉ざして逝く 入口はあっという間に岩盤や岩石に押し潰されて……塞がってしまった

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