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第65話 決意

土御門孔明達を新天地に送り出した康太達は魔界へと戻って来ていた 白馬から新天地への引っ越しを金龍達に託し 康太達は神日本磐余彦天皇に答えを聞く為に、天照大神と共に再び訪れたのだ 神日本磐余彦天皇は康太達がやって来るのを待ち構えていた 出迎えてくれた時の顔付きは‥‥真摯で 覚悟を決めた瞳をしていた 康太は少しはマシになった屋敷に招かれるなり 「答えを聞かせてくれ!神日本磐余彦天皇」と単刀直入に問い掛けた 神日本磐余彦天皇は康太に深々と頭を下げあ後、姿勢を糺すと 「文身咒を体躯に刻む裏高野の邪法を用いてまで‥‥彼等が護りたいモノが視えて参りました‥‥ 我が望は倭の国の和平に御座います! それを破る輩は誰だとて許しはせぬ! 帝の討伐は我が出向いて手を下したいと想います! 血を洗うのは血族の務めに御座います! 既に‥‥その血は薄まって‥‥いたとしても引導を渡してやるのが我の務めだと想う所存です 我は‥‥‥こんな倭の国を視る為に‥‥残ったのでは御座らん‥‥」 神日本磐余彦天皇は悔しそうにそう言うと唇を噛み締めた 康太は閻魔の方を見た 「兄者、許可を出されるか?」 人の世の秩序を護るのが閻魔大魔王の役務だ それと同時に魔族の管理も閻魔の務めだった 閻魔は「許可する!神日本磐余彦天皇は己の目で確かめて裁きを下すがよい!」と告げた 天照大神は八咫鏡で神日本磐余彦天皇を照らすと 「己の感情だけで申してはいまいな?」と問い掛けた 「はい。己の感情だけで申している事ではありません!」と答えた 「ならば『答え』を聞かせるがよい!」 「今の世に『帝』の存在は不要に御座います 倭の国が今後も神の守護を賜るならば、斬らねばならない膿だと想っております 人も変われば時代も変わる 時代や人の理からはみ出た存在が‥‥国を欲するなど言語道断! 我は我の行動にて答えを示したいと想っております」 「ならば逝くがよい! 炎帝、それでよいか?」 天照大神は人の世に生きる我が子に問い掛けた 「帝に逢う前にあと少しで終わりを告げる天皇に逢ってはくれねぇか? 現天皇が総てを持って‥‥平成の世を終わらせる 故き時代に終わりを告げる‥‥ だから天皇の話を聞いてやってくれ! その言葉こそ‥‥倭の国の想いだ 倭の国を表と裏から支えて護って来た 想いは同じだ 故き胤裔に縛られた仕来たりは今もそこに生きる人間を雁字搦めにしている 貴殿は彼らを視て何を想うか‥‥問い質したいと想う‥‥お付き合い戴けますか?」 「宜しいでしょう 我に何を見せてくれるかは解りませんが、我は目を反らす事なく、この瞳に焼き付けて答えを出すと約束いたそう!」 神日本磐余彦天皇は快諾してくれた 康太は頷いた 天照大神は八咫鏡に命じた 「天照坐皇大御神が命ずる! この者達を倭の国へお連れ致せ! 我が息子炎帝の望む地に飛んで逝くがよい!」 天照大神が命ずると八咫鏡は眩い光を放った 康太は榊原に抱き着いた 榊原は康太を強く抱き締めた だが前回同様、もっと時間が掛かるかと想ったが、唖然とする程の早さで目的地に到着した 時代を遡るのと違い、異次元の転送だと光の速さで目的地に到着できるのか‥‥ 目的地にはそんなに目を瞑っている事なく到着した 康太は辺りを包む眩い光が消えて、そーっと目を開けた 飛鳥井の屋上の光景が目に飛び込んで来て、康太は八咫鏡が送ってくれたのだと納得した 「しかし‥‥めちゃくそ早くねぇか?」とボヤくのは忘れなかった 一生は「時代を遡るのと違って次元の移動は光のように早ぇのか?」と康太が想っている事を口にした 榊原は康太を離すと「お客様は僕達のリビングにお通しすれば宜しいですね?」と確認した 下手に家族に逢ったりしたら‥‥時間が掛かるのは目に視えていたからだ 「だな、リビングに入ったら鍵を掛けておいてくれ」 「解りました」 閻魔と黒龍は魔界に残って、神日本磐余彦天皇が一緒に時を渡ってきた 聡一郎は司命として魔界へと渡って不在だった 兵藤は「俺は一旦家に顔を出さねばならねぇ用があるから戦線離脱するわ!」と残念そうにそう言った 「おー!助かった!」 「何かあったら連絡をくれ!」 「おー!何かあったら連絡を入れるかんな!」と約束した 兵藤はリビングを出て行った 榊原はリビングの鍵を掛けた 康太はソファーに座り足を組むと、携帯を取り出し何処かへ電話を入れ始めた 「飛鳥井家真贋、飛鳥井康太と申す! 天皇陛下とご連絡は着きますでしょうか?」 話の内容から康太は宮内庁に電話を入れている様だった 暫く取り次ぎ電話がなされ待たされたが 『御電話変わりました』 と上品な声が響いた 「陛下に御座いますか?」 『そうです、御用件を伺いましょう』 「神日本磐余彦天皇と逢って戴けませんか?」 冗談かと想える言葉だった 歴史の教科書でしか名を知らぬ存在だった 『その御仁は‥‥黎明期に存在した‥‥初代神武天皇の事ですか?』 「そうだ。倭の国は神日本磐余彦天皇が神と契約した契りがある その契りを今一度確認する為に、今世にお越しになられた 今世にお越しになられたからには帝に逢わせるだけではなく、天皇陛下とも御会いして戴こうと想ってご連絡を致しました」 『御逢い致しましょう! 宮内庁の者に迎えに逝かせましょう』 「では御待ちしております! 今度は現地に到着する前に‥‥オレ等を消そうなんて考えるなと警告を入れておいてくれると助かるんだが?」 『解りました!警告を入れておきます では御待ちしております』 そう言い電話は切れた 榊原は立ち上がると一生に 「瑛兄さんにスーツを借りたいと連絡を入れてくれませんか?」と頼んだ 一生は「了解!」と言い携帯を取り出すと康太の兄の瑛太に電話を入れた 「瑛兄さん、頼みたい事があるんだけど?」 電話に出るなり一生は余分な事は言わせない早さで喋った 瑛太は時間がないのだなと汲み取って 『クローゼットに掛かっているスーツなれば好きなのを持って行って構いません!』と答えた 「ありがとう瑛兄さん」 『康太に兄に連絡を入れれる暇が出来たなら、電話をして下さいと伝えておいて下さい』 「了解です!ではスーツを借りて行きます!」 一生はそう言い電話を切ると 「瑛兄さんに電話入れてやれよ!」と伝えた 「おー!陛下に御逢いした後に電話するってラインしとくわ」 「おー!そうしてやれ!」 一生はそう言い神日本磐余彦天皇の体躯を見て、瑛太の部屋へと急いだ 瑛太の部屋をノックすると京香がドアを開けてくれた 京香は嬉しそうに「一生、最近顔を視なかったな」と言い一生を抱き締めた 「京香、時間がねぇ、瑛兄さんのスーツを一着借りてぇんだ 瑛兄さんのは連絡入れて許可を貰ってある」 一生がそう言うと京香は瑛太のクローゼットを開けた 一生は神日本磐余彦天皇がシックな黒を選ぶとスーツとワイシャツを借りて走って行った 「京香、時間が出来たらまた飯を食おうぜ!」 「あぁ、約束だぞ?一生」 「あぁ、無事還って来て京香と飯を食うって約束するさ!」 一生はそう言うと猛烈に走り去って行った 京香は『約束』が嬉しくて一生を見送った どうか康太‥‥無事で還って来てくれ‥‥ と祈りを込めて‥‥ じっとその場に立ち尽くしていた 一生はリビングに戻って来ると、神日本磐余彦天皇にスーツを着せる事にした 着物を剥ぎ取り、ワイシャツを着せてネクタイを結び、ズボンを履かせて上着を着せた 何とか現代人に見える風体にして階下へと降りて行った 応接間で待っていると宮内庁からの迎えの車がやって来た 康太と榊原と一生と神日本磐余彦天皇は迎えの車に乗り込んだ 神日本磐余彦天皇は動く鉄の塊を目にして 「これは‥‥なんと謂う乗り物なのだ?」と問い掛けた 「車です、渋滞は厄介なモノですが、この車は渋滞を避けて通れるので問題はないんですよ」 神日本磐余彦天皇は窓の外を眺め、時代の移り変わりを痛感していた 便利な世の中になったものだ‥‥ 時代は移り変わり 人も移り変わり 文化も風習も変わってしまっていた アスファルトで舗装された道路には昔の面影はなく 街並みも‥‥高いビルが軒並みを連ね‥‥ 時代はまた移り変わると謂う 幾つの時代が移り変わって 幾つの時代が消えて行ったのだろう‥‥ こんな時代を目にする日が来るとは‥‥ 想ってもいなかった‥‥ 車は首都高速に乗り上げ一般道から外れて専用道路を走っていく 渋滞に巻き込まれる事なく車は皇居へと入って行った 皇居に出た車は天皇が住まわれる館へと向かって走る 物凄く速度を落とした車は、お城のような屋敷の前で停まった 車が停まると宮内庁の職員が並んでいた 「ようこそお越し下さいました 陛下が御待ちに御座います」 宮内庁の職員に連れられて皇居の奥深くへと進んで貴賓室に通され 「陛下がお見栄になるまで暫しお待ちください」と言い部屋に招き入れられた 豪華な調度品が自然体に並べられた部屋だった ソファーに座ると康太は給仕によって淹れられた紅茶に口をつけた 神日本磐余彦天皇は「これはなんと謂うお茶なのだ?」と不安げに康太に問い掛けた 「西洋の茶葉を使用した紅茶と謂うお茶に御座います 結構美味しいんで、今度母上に預けておくので差し入れて貰うと良い」 神日本磐余彦天皇は恐る恐るティーカップに手を掛けて口をつけた すると仄かに甘いお茶の味が口の中一杯に広がっていた 「これは美味しい‥‥」 神日本磐余彦天皇が感動していると 「茶菓子はもっとうめぇぞ!」と康太は茶菓子を食べ始めていた 暫く待つとドアが開き 「御待たせ致しましたね」と陛下が貴賓室に入って来た 陛下は一人だけ特別に誂えた椅子に座った そして招かれた客を見渡した 飛鳥井家真贋と連れの者の顔は見知っていた その中で一人だけ見知らぬ顔を見つけ 陛下はまじまじとその顔を眺められた 「貴殿が神日本磐余彦天皇に御座いますか?」 丁寧な口調で問い掛けられ、神日本磐余彦天皇は居住まい正し 「そうだ、私が神日本磐余彦天皇、本人だ」と返した 「黎明期 初代神武天皇が何故今、私の前に姿を現されたのか‥‥お教え戴けませんか?」 「我は神々と契約を交わした それも総ては倭の国が平和に過ごせる為‥‥神々と契約を交わしたのだ その為に我は転生はせず‥‥この世に残り倭の国を見守って来たのだ」 「それは‥‥御苦労も多かった事でしょう 先の戦争で我等は血を流しすぎたのですから‥‥」 「あれは‥‥見ていて辛かった‥‥ 何も出来ず‥‥見ているしか出来ぬ己を悔やんだ事もある だが‥‥我は倭の国を愛している 悔いはない‥‥悔いはないから最期の仕事をせねばと想って‥‥この世に現界した」 神日本磐余彦天皇の言葉を聞き陛下は、何の為に姿を現したのかを察した 「帝‥‥に、御座いますか?」 「あやつは遣り過ぎた‥‥部下に文身咒を入れさせ時空を飛ばさせた 帝がやるべき領域を逸脱した行為だと我は想う‥‥ ならば‥‥我の手で葬り去るのが温情と謂うモノではないか?」 神日本磐余彦天皇の言葉を陛下は黙って聞いていた 「彼の回りには‥‥まともな判断を持つ者がいないのでしょう‥‥ 増長され‥‥己を過信なされ過ぎました‥‥ 民を想わぬ行動には我々も‥‥思慮を尽くしていた所に御座います」 「民草を想わぬ存在など無用の長物 過去の胤裔を綺麗に掃除をするのも見届けて来た者の務めだと想っております」 「誠に‥‥見事な生き様に御座りますな 神日本磐余彦天皇、貴方の瞳にはこの世の中はさぞかし歪に見える事でしょう‥‥ それでも‥‥我等は明日を信じて生きて行く国民を護らねばならない義務がある 倭の国は終わりません 終わってはならないのです 年号が幾ら変わろうとも‥‥ 時代が幾つ変わろうとも‥‥ 変わってはならぬモノがある 我等はその為にだけ在るのです」 陛下の言葉は重かった 国を背負う覚悟と責任 それらがひしひしと言葉の端々から伝わって来ていた 神日本磐余彦天皇は陛下に深々と頭を下げると 「同じ国を愛し、同じ国を護り先へと繋げる者として‥‥共に国を護る者として、貴殿が天皇で在って良かったと我は想う 貴方の命在る限り、今後も見守って逝って欲しいと切に祈る」 「はい。この命尽きる瞬間までわたくしは、この国を想いこの国の和平を祈ります それが国民を想う天皇としての責務だと想う所存です」 「倭の国はまだまだ安泰であるな‥‥貴殿らが存在するなれば‥‥信じる先へ逝けると信じられる‥‥」 神日本磐余彦天皇は陛下に深々と頭を下げた 陛下は微笑み 「此より貴方がたの身に禍が降りかからぬ様に御祈祷致しましょう それが‥‥東からの援護射撃となればと想います」 そう言った 神日本磐余彦天皇は陛下からの心付けを頂戴し 「心強い援護射撃です、ありがとうございます」と礼を述べた 陛下は康太の方を見て 「飛鳥井家真贋、必ずや還って来て下さい 貴方がいなければ豊穣の舞の行事が行えなくなりますからね」と帰還の命を下した 康太は陛下に深々と頭を下げ 「必ずや還って参ります! 豊穣の舞はまだまだ誰にも譲る気は皆無故、御安心下さい」 「それは頼もしいですね 総てはこの国の為に‥‥我等はこの国の礎になるその日までは負ける訳には行きません」 「はっ!心して掛かります」 「真贋、一つ宜しいですか?」 「はい!」 「白馬の地は‥‥どうなりしまた? あの地には我等の血縁も‥‥多く存在しております この世から消されたとしても‥‥彼等が‥‥血縁者だと謂う事実までは消せません‥‥故に問い質しても宜しいですか?」 血を尊び 血こそが絶対だと近親相関を繰り返し血を大切に護って来た 高名な血を護る為に‥‥どれだけ‥‥この世から葬られた子がいただろう‥‥ どれだけの人が血に侵され‥‥発狂しただろう‥‥ それらの人間をこの世から葬り去る為に造らせたのが『白馬』と謂う土地に儲けた施設だった この事を知るのは国のトップに立つ人間と、ほんの少しの宮内庁のトップと国のトップの総理と側近位のモノだった 「陛下は宮内庁に特務機関を作らせる程、用心をなさっていたのですから、あの地がとても危険だと把握はされているのですよね?」 宮内庁特務機関 code001部隊を作らせたのは現天皇だった この世には決して出る事のない所属部隊 その部隊に所属するのは練度の高い戦闘員か超能力や霊能力を持った特殊な訓練を受けた戦闘員達だった 「はい。負のオーラや憎悪、恐怖‥‥総てのマイナスの気がある一転に集結していると統計が出たのは10年位前だったでしょうか? 宮内庁の職員が自衛隊の協力を経て調べあげた結果、白馬の地がそのオーラや憎悪、恐怖や陰の妖気を吸い上げて増大を始めているとの結果が出たのです 我等は[その日]の為に‥‥準備するしか出来なかったのです‥‥」 予防や対策を打つ手は滅び、その地を切り離す算段を着けるしか出来なかったと、苦しげに陛下は語られた 「あの地には我が師匠 土御門孔明の仏舎利が四方に埋められ、逆五芒星を描かれた中に存在する 逆五芒星の特異点に生贄を捧げて作られている 生贄に捧げられた輩達が、仲間を呼び力を増大させている 高名な霊能者でも匙を投げ出す案件だと想うぜ!あれは!」 「なれば‥‥あの地は‥‥」 暴走を始めるしかないのか‥‥ 考えるだけで怖い現実だった 「今、飛鳥井の菩提寺や霊能者や超能力者など使えるモノは総て使って、土御門孔明の歹を拾い上げている その作業が終わったら、生け贄にされた者の歹を丁寧に拾い上げて供養する それは二階堂の家のモノが当たる事になっている 逆五芒星を解除した後、あの地は昇華する 怨念も因縁も憎しみも悲しみも‥‥総て昇華して更地に戻す その後、寺院を建立し亡くなったモノ達の供養に当たる」 と今後の方針を説明した だが陛下の聞きたい事は‥‥そんな事ではなかった 「あの者達は‥‥どうされたのですか?」 血を同じくして生まれたがこの世から葬り去られた血縁者の事を含ませて問いかけた 「あの者達はもう‥‥人の世にはいねぇよ」 「‥‥死したのですか?」 「死んだのかと問いかけられれば、死んじゃあいねぇと答えるけど、人の世にいるのかと尋ねられれば、人の世にはいねぇと答えるしかねぇ‥‥ ただ謂えるのは、あの者達は生きて逝くのに楽な安住の地に移り住んだとだけ申しておく あの者達の心配は要らねぇよ! そして今後‥‥人の世で生きられぬ子が産まれたのならば、その子等はその地へと送るが良い! その仕事は閣下が引き受けて下さると約束された‥‥だから陛下が心を病む事は何一つ御座いません」 「そうですか‥‥ならばわたくしは何一つの未練も悔いも遺す事なく天皇を退位できますすね それだけが心のつかえだったのです‥‥」 「倭の国は変わります 陛下が風を入れ、開かれた皇居と謂うモノを作られたから国民に慕われ今を築いていられるのです 倭の国は陛下の心を汲み取りこれからも時を重ね、時代を重ねて逝く事でしょう」 「そうなる事を‥‥切に願います」 陛下はそう言い立ち上がると貴賓室を出て逝った 陛下が退出され暫く経つと、宮内庁の職員が姿を現した 「お送りする様に、陛下に言いつかっております故、貴方の望まれる所までお送り致します」 どうぞ、此方へ!と案内されるまま長い廊下を歩いた 康太達は皇族専用の駐車場へと案内された ドアを開けて外に出ると、黒塗りのリムジンが停まっていた 職員は後部座席のドアを開けて、康太達を車に乗せると、深々と頭を下げ見送った 運転手は康太達が乗り込むとドアを閉めるのを待ってエンジンをかけた 「京都までで宜しいですか?」 運転手は康太に問い掛けた 「あぁ、京都までで良い」 「貴方達が皇居を出られた瞬間から、職員総出で祈祷を始めました 真贋なればその力‥‥感じていらっしゃるのではないですか?」 「あぁ、力が漲るのを感じる」 「我等は陛下のお心のままにお仕えする者‥‥陛下の望まれる事こそ、我等のすべき事なのです 我等は此より貴方達と行動を共にして、総ての障害を取り除く所存です」 康太達の車の後ろを何台もの車が連なり、行列を作っていた 政府要人か皇族ばりの警戒と行列は警察関係者も巻き込み、交通誘導や警護に当たる事となった 信号を無視してノンストップで駆けて逝く 目指すは京都御所 闘いが始まろうとしていた‥‥

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