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第69話 明日へ繋ぐ架け橋
康太と榊原は黒龍の背中に乗って閻魔の邸宅まで出向いた
黒龍は閻魔の邸宅の庭に下りると、二人を下ろして人の姿になった
三人は閻魔の邸宅の中へと入って逝った
閻魔の邸宅の応接室へと向かう
ドアを開けて応接室に入ると閻魔と弥勒がソファーに座っていた
閻魔は康太の姿を目にすると立ち上がり
「此方へ!」
と言い閻魔は歩き出した
弥勒はソファーに座ったまま手を振っていた
黒龍は弥勒の横に座ると「此より先はお前と閻魔で逝け!」と謂い見送った
康太と榊原は閻魔の後を着いて逝った
閻魔は執務室に康太と榊原を招き入れると、ドアを閉め鍵をかけた
そして「皇帝閻魔、お願い致す!」と声を掛けると部屋に全面結界が張られた
閻魔は康太に天界と冥府の書簡を渡した
康太は書簡を開いて内容を確めた
榊原は書簡を覗き込み‥‥‥言葉を失った
書簡を読み終えた康太は、書簡を燃やし灰にした
「また無理難題謂いやがるな!」
康太は呆れて現状と照らし合わせて
「親父殿、オレとガブリエル辺りは逝けるかも知れねぇが兄者と伊織はどうなるか解らねぇじゃねぇかよ?」と言葉にした
康太が謂うと皇帝閻魔が姿を現した
「伴侶殿ならお前と契っておるから大丈夫であろう?
閻魔殿はこの魔界全土を支える力を持っておるからガブリエル同様、大丈夫であろう」
皇帝閻魔の説明に康太は不敵に嗤って
「まぁ何かあっても神が直してくれるだろうしな!」
現実を揶揄した
「意地悪を謂うでない
それよりも久方ぶりに逢った父に挨拶はなしなのですか?」
康太は笑って皇帝閻魔に抱き着くと
「親父殿、逢いたかった」と本音を吐露した
皇帝閻魔は我が子を強く抱き締め
「元気であったか?」と我が子の心配をした
「あぁ元気で新婚してんよ!」
「そうか、それが一番嬉しい知らせじゃ!」
皇帝閻魔は榊原に目を向けると
「伴侶殿も健勝であられるか?」声をかけた
榊原はニコッと笑って「はい変わりありません!」と答えた
皇帝閻魔は康太を離すと
「では出向くとしようぞ!」と合図を送った
康太が呪文を唱えると皆を包む様に球体が覆った
皇帝閻魔が呪文を唱えると時空が歪み‥‥球体ごと移動を始めた
球体は物凄い速度で魔界を突き抜け
人の世を突き抜け、天界へ向かった
天界へ到着すると球体は止まった
目の前に熾天使ガブリエルが姿を現した
その横にはオーディンが立っていた
二人は球体の中へと入って来ると、球体は再び物凄い速度で飛んで逝った
時空を掻き分け進んで逝く
球体は光も差さぬ暗闇に出ると止まった
皇帝閻魔と康太はそこが何処か知っているかの様に動じなかった
オーディンはガブリエルに
「暗くてかなわん!
ガブリエル、お前無駄に光っておろう!
こんな時に光らずしてどうする!」と凄く酷い事をサラッと謂った
「オーディン‥‥私は無駄に光ってなど‥‥」
おりません‥‥と文句を謂う前に
「ほれ!光るがよい!」と謂われて抵抗するのを止めてガブリエルは聖なる光で辺りを照らした
康太は「呼び立てて無視かよ?用があるんだろ?何か謂えよ!」と文句を謂った
“我が愛しき子よ、無視などしてはおらぬ”
「親父殿、呼ばれてるぜ!」
康太は皇帝閻魔に声をかけた
皇帝閻魔は「それは我の事ではない!」と少しだけ抵抗した
「ならガブリエルの事か!」
あくまでも自分を計算しないのが康太だった
ガブリエルも「私もそんな呼ばれ方した事はありませんよ!」と少し怒って謂った
収集が着かないと想った皇帝閻魔は
「我等を呼び出した用件をお伺い致そうか?」と問い掛けた
“ お前達を呼び出したのは他でもない
審議監理局と謂う儂が作った者達が好き放題に動き始めた件についてじゃ
それらは天界も魔界も冥府も好き勝手に入って殲滅を繰り返して来た‥‥
愛しき子辺りに謂わせれば手を打つのが遅すぎると怒られそうだが‥‥捨ててはおけぬ
それ故にこの地球(ほし)全部に結界を張るつもりじゃ
まずはこの地球(ほし)全体に外部からの侵入を阻む結界を張る
その後に天界、魔界、冥府に総結界を張る
あやつ等が絶対に侵入出来ぬ状況に置く
弾き出された奴等を皇帝炎帝、お主が殲滅するのだ! ”
創造神に謂われて康太はやはり謂うのだった
「全部後手後手だし、最後はオレに放り投げじゃねぇかよ?
まぁ銀河系の秩序は護らねぇとならねぇからやるけどな‥‥
それがあんた(創造神)がいる存在理由なんだしよぉ!」
宇宙は広い
そんな宇宙の秩序の為に存在するのが各エリアに存在する創造する神の存在だった
銀河系の星達を創造し生かして配置する神
それが蒼い地球(ほし)の存在するエリアを指していた
康太は遥か彼方に蒼く光る地球(ほし)を眺めながら
「美しいな、やっぱり」と言葉にした
“ この世に光があれば影は必ず出来る
影に潜む悪と呼ばれる存在もこの世には必要な闇である
総てのバランスが整っていれば秩序は守られる筈だった
だが闇は暴走し影は濃くなり人々を暗闇に陥れる為に動き出した
常軌を逸脱した現実に対処出来る存在を作ったが‥‥‥
知らぬうちに乗っ取られ‥‥姿を消した
総てが後手後手だ‥‥‥
だからお前はこの蒼い地球(ほし)を守るがよい
その最善の方法を此より実行する! ”
康太は天高く片手を伸ばすと
「この命、賭そうとも役務は完遂する!
この蒼い地球(ほし)を守る為に我らは礎となろう!」
と謂い何かを掴み取るように拳を握り締めた!
絶対に破滅へ進ませたりはしない!
あの日‥‥‥父と離れて連れて来られたこの場所で、ずっと目にした蒼い地球(ほし)に恋い焦がれ、そう想い続けた
オーディンは康太の前に立つと
「原始の神で在る我が力を奮わねばならぬ時が来た!」と笑った
オーディンは康太に
「さぁお主も原始の姿に戻られるがよい!」と声をかけた
康太はニカッと嗤って
「んならオレも頑張るか!」と謂い皇帝炎帝に姿を変えた
真っ赤な紅蓮の髪が蔦でも伸びる様に這う様に伸びて逝く
紅蓮の髪は足首まで伸びるとサラサラと風に靡いて揺れていた
真っ赤な皇帝炎帝の衣装に身を包み、榊原に手を伸ばした
榊原は青龍の衣装に身を包み皇帝炎帝の手を取った
「何があろうとも君と共に!」
青龍は皇帝炎帝の手を取ると手の甲に口吻けを落とした
皇帝炎帝は青龍から離れると原始の書をオーディンに渡した
「あの地球(ほし)を作るに協力をした神々も今は消滅し数を減らした
オレは親父殿と共に、蒼い地球(ほし)が誕生する瞬間に立ち会った
その時遣われた原始の書は創造神の手からオレに渡され今に在る
今こそこれが必要な時だと想うからな、オーディンこの書を持って原始の呪文を詠唱してくれ!」
蒼い地球(ほし)はまだ終わらない
我が子が大人になって
子孫を残し
繋がって逝く様に、終わりなど来させない
人々が愚かに核爆弾のスイッチを押そうとも‥‥
決して消滅させたりはせぬ!
神々は位置に着いた
呪文盤の点と点を結ぶ位置に立ち、その時を待った
真ん中に位置する所に立つのは皇帝炎帝とオーディンだった
オーディンは原始の書を手にして長い呪文を唱えていた
皇帝炎帝もオーディンと対になって呪文を唱えていた
Σισοκαραχαζιμαρουγκενσινοτσικαραιο
Σιυκαραχαζιμαρουγκενσινοτσικαραιο
Μιακουμιακουτοουκετσουγκαρεσισειμεινοτσικαραιο
Ιμαιομιοκορε Αοκιχοσινοτσικαραιο
Καγκαιακουχοσιουαρεραχαμαμοραν
Ταμασιινοκαγκαιακιουαρεραχαμαμοραν
オーディンの呪文と皇帝炎帝の呪文が同時に終わると原始の書は蒼い焔をあげて燃えた
「「我らは蒼き地球(ほし)を護る為に今、力の限りを!」」
そう唱えると神々の足元に在る呪文盤が浮かび上がり蒼く燃え上がった
神々は蒼い地球(ほし)へ向けて力を放出した
目の前の蒼い地球(ほし)が蒼い焔に包まれて燃え上がっていた
創造神は蒼い地球(ほし)に向けて
“ 蒼く輝く地球(ほし)を何人たりとも傷付けるのは許しはしない ”
と謂い創世の呪文を唱えた
蒼い焔は静まり‥‥蒼く輝く地球(ほし)が現れた
“ 創世の呪文を唱えた、これで我の創りし審議監理局なるモノは好き勝手には動けぬであろう‥‥
この後、天界、魔界、冥府に呪文を施す
そうすれば許されぬ者は自由には動けはせぬであろう‥‥
そして‥‥‥人の摂理を崩壊させている教団を潰すがよい!
我は‥‥許しはせぬ!
人の摂理を愚弄する者を許しはせぬ!”
創造神は怒りを滲ませて言葉を放った
皇帝炎帝は「誰も許す気なんてねぇんだよ!」と不敵に嗤って謂った
ガブリエルも「神々の領域侵犯は許しがたい‥‥‥これを許すなら人の摂理を愚弄する行為を許したも同然となり、誰も神々の声に耳など貸しはしなくなるでしょう‥‥」と危惧した言葉を放った
皇帝炎帝は「我等は人の摂理を護るべき者、その摂理を愚弄されて朱雀は怒り狂っている
朱雀だけじゃねぇ、反魂で生を成された者だって怒ってる、それを野放しにしておいたら、運命に愚弄されて泣く奴が増える!
許しておくものか!」と吠えた
皇帝閻魔も「では殲滅の為に協定を結びましょう!不可侵の協定を結びましょう」と提案した
閻魔は「異存はありません!我等魔界だとて、捨ててはおけぬと想っておりました!」と申し出た
オーディンは「ならば、とことんやらねばな!」と豪快に笑い飛ばした
“ 死命を与えし者達よ
お主達に『眼』を与えよう
その『眼』なれば真実が映るであろう ”
創造神はそう言いガブリエルの瞳に口吻けた
その後に閻魔の瞳に口吻け
“ それでお主らの瞳には真実が映るであろう ”
と謂った
ガブリエルは「炎帝とオーディンと皇帝閻魔は?」と問い掛けた
“ オーディンは原始の神であるからな、最初から“眼”は持っておる
その“眼”なれば今更与えずとも紛い者は即座に見抜くであろう
皇帝閻魔は我が子 皇帝炎帝に総てを与え誕生させた
だから皇帝炎帝は父より瞳を与えられておる
皇帝閻魔には我が更に高性能な眼を授けた
二人はこの蒼い地球(ほし)が出来る瞬間に立ち合った神であるからな
だからどの神より便宜は払っておるから性能のよい瞳を持っておるのだ
伴侶の青龍は炎帝と魂を繋いでおるからな、炎帝の視たモノは視れる
だからあやつらは不要なのじゃ!”
なんとも‥‥‥まぁ‥‥な事を謂れてガブリエルは何となく納得した
この地球(ほし)が出来る時、立ち会った神々の中に皇帝炎帝もいたとするならば‥‥
総てが納得出来た
“ それでは往くがよい! ”
創造神はそう謂い蒼い球体に皆を包み込んだ
“ まずは天界へ逝くがよい
天界に結界を張った後に魔界へ逝き
冥府に逝くがよい
冥府に入れば皇帝閻魔と皇帝炎帝以外の者は消滅してしまうが‥‥
今回に限り、我の気をお主らに与えよう
そうすれば冥府に入っても消滅はせぬ ”
創造神はそう言うと閻魔とガブリエルに気を注いだ
球体はゆっくりと移動を始めた
球体は宇宙を下降して大気圏を突破して天界へと下り立った
ガブリエルは天界に結界を張る為に
「どうやって結界を張りますか?」と皇帝炎帝に尋ねた
オーディンは原始の書を取り出し
「原始の結界を張るしかなかろうが!」と提案した
皇帝炎帝も皇帝閻魔もそれに賛同して頷いた
皇帝閻魔は「この地球(ほし)に施した結界を張り巡らせるしかないでしょう!
原始の結界、それは即ち混じりっけのない清らかさを求められる事となる
要は不穏分子となるべき者は、結界の中では弾かれ消滅するしかない‥‥と謂う事です」とリスクを口にした
オーディンは「この結界を張れば悪魔達や堕天使貴族達はどうなるのじゃ?」と問い掛けた
「悪魔一族は既に原始の結界の中にいるから消滅はしねぇだろう
堕天使貴族達は原始の楽園にいる以上は消滅はしねぇ!
まぁ出る時は許可をすれば、消滅はしねぇ!
勝手に動き回れねぇけど、その分統制は取れて良いかも知れねぇな
浄化された異界となるから闇に生息する奴等はキツいかも知れねぇから、妖怪がいた地を牙狼一族に、吸血鬼達にはベルゼブブ達がいた空間に避難させてある
その他の種族も影響を受けねぇ場所へ移らせてあるからな、問題なく結界を張っても構わねぇ
行く行くはその地に移り住んで生息させるつもりだからな」
総てを適材適所配置した後だと解る
青龍は妖怪の引っ越しの意味を知った
ガブリエルは「それでは神の扉の前までお願いします」と謂った
創造神の声が聞こえる扉の前まで、皇帝炎帝達は移動した
ガブリエルは「此処から天界全土に結界は張れますか?」と問い掛けた
「問題ねぇだろ?
んじゃ、さっきと同様に結界を張るとするか!」
オーディンは原始の書を皇帝炎帝から渡され、唱えた
その後を皇帝炎帝は呪文を唱えた
呪文を唱え終わると天界が蒼い焔で包まれた
ガブリエルは「では魔界へ移動しますか?」と問い掛けた
サクサク結界を張って逝くつもりだった
皇帝炎帝達は魔界へ移動して結界を張ると、冥府に移動して結界を張った
冥府の結界を張り終わると、皇帝閻魔は皇帝炎帝の屋敷に皆を招き入れた
応接間に通され、今後の話をする
ガブリエルは「結界は人の世には必要はないのですか?」と至極当たり前の事を問い掛けた
それに答えたのは皇帝閻魔だった
「当然、人の世にも結界は必要です
ですが、原始の書を用いた結界は、人の世には通用しないのです」
「え?‥‥‥それは?何故ですか?」
「人と謂うのは創世記には存在していなかったので‥‥原始の書では意味がないのです」
皇帝閻魔の説明にガブリエルは唖然として
「なら‥‥‥どうすれば‥‥」
「それは皇帝炎帝に聞くと良いです」
皇帝閻魔は優雅にお茶をしながら、そう言った
閻魔は「手立てはあるのですか?」と弟に問い掛けた
皇帝炎帝は原始の書とは違う書を取り出してテーブルの上に置いた
ガブリエルは「これは?」と問い掛けた
「これは人の世を創る時に用いた始まりの書だ!
創造神はこの書を人のDNAに埋め込み、人を創ったと謂われている書だ!」
ガブリエルはそんな書の存在など知らなかった
閻魔も‥‥当然、そんな書の存在など皆無だった
皇帝炎帝は天を仰ぎ
「この銀河の星々は創造神の意識の中に在ると謂っても過言ではない
星を創り、惑星を創る
無限の宇宙と謂うキャンパスに創造神は命を吹き込み長い時間をかけて生命を誕生させて来た
神々を遣いそれらを管理させて来た
それらの行程には総て管理する上で書物が存在する‥‥
だが、その書物を用いても‥‥‥星は愚かな行為を繰り返し滅びを繰り返して来た
歴史は繰り返され‥‥幾つもの惑星が滅びの道を辿って消滅した
この地球(ほし)も‥‥これが最期の手段となる‥‥‥
人が知己を遣い生き残りを図るか、死の惑星に導くかは‥‥解らない
だが‥‥人はそこまで愚かではないと信じたい
だからオレ等はこうして持てる限りを尽くす
そして明日を信じて生きて逝くしかねぇんだよ!」
皇帝炎帝の言葉を‥‥ガブリエルも閻魔も黙って聞いていた
「始まりの書
種(しゅ)を用いて大地を肥やし
人は糧を獲て生を果たす
原始の世から人は知己と工夫で進化を遂げた
だが過ぎる力は身を滅ぼす
偉大な文明を遂げた国が一夜にして、この世から姿を消したのは‥‥‥畏怖を抱いた神々の警鐘だった筈だ
なのに愚かな人と謂う生き物は同じ事を繰り返す‥‥‥
人は愚かで狡くて賢い生き物だ
アダムとイブが自我を持ち、神の禁忌を破った様に‥‥人は生まれながらに罪を持つ生き物だ
だが見捨てるなかれ‥‥
導き給え
嘆きこそすれ‥‥
見捨ててはならぬ
それを始まりの書を持って知らしめる
創造神が地球を創った時に書き記した人と謂うこの世に生きる総てについての書だ
誰よりも命在る者を愛して
誰よりも絶望しているのは‥‥‥創造神だ
神の扉から声が聞こえなくなっていたのは‥‥
そんな絶望からだったのは否めねぇ‥‥」
ガブリエルは神の真意を知り、苦しそうに胸を押さえた
皇帝炎帝は始まりの書をガブリエルに渡した
「お前が唱えろ!」
「え‥‥私がですか?」
「慈愛に満ちた天使が唱えるに決まってるやん!
人の誕生に立ち会った天使は‥‥もういねぇんだからな」
人の誕生に立ち会った天使‥‥
それは大天使ルシファー
彼だけだった
誰よりも神の寵愛を受けた天使
天魔戦争で命を落とした‥‥堕天使ルシファー
彼だった
ガブリエルは始まりの書を受け取り
「ならば私がやらねばなりませんね!」と意思を固めた声で答えた
「んじゃ、最期の大仕事をやりに逝くとするか!」
皇帝炎帝は笑ってそう言った
皇帝炎帝の声が合図になり皆立ち上がった
屋敷の外に出て乗って来た球体の中へ入った
そして人の世に向かう
皇帝炎帝は「スカイツリーの頂上に下り立つ
それを拠点に世界へ結界を飛ばす事とする
オーディン、各国の神々はスタンバってる?」とオーディンに問い掛けた
オーディンは笑って「総ては準備万端!」と答えた
皇帝炎帝は「二重結界は譲れねぇからな‥‥」と呟いた
オーディンは「さぁサクサク終わらせるぞ!」と言い嗤った
球体は浮かび上がり、人の世へと向かって逝く
見慣れた風景が現れると球体はスカイツリーの頂上で止まった
ガブリエルは始まりの書を取り出すと詠唱を始めた
皇帝炎帝は口には出さずに呪文を唱えていた
ブツブツ唇が何かを紡ぐ
詠唱が終わると、光りが幾重にも走り地平線の向こうへ消えて逝った
オーディンは呪文を唱えると更に幾重にも光りは重なり‥‥
各国一斉に拠点となるべき場所から結界を受け取り繋いだ
人の世に結界のリレーが出来て重なり紡がれ光りが走る
皇帝炎帝が天高く掌を伸ばすと‥‥‥そこから幾重にも重なった光の筋が走って消えた
ガブリエルは全力で始まりの書を読み上げた
読み終わる頃には憔悴しきっていた
皇帝炎帝は「一旦魔界へ逝くとするか、今後の話もあるしな!」と謂うと球体は再び動き出した
人の世を通り過ぎて地底深くへと進んで逝く
魔界に到着すると球体は閻魔の邸宅で止まった
皇帝炎帝はその球体を切り裂き外へと出た
青龍は皇帝炎帝に近付くと
「大丈夫ですか?」と心配して問い掛けた
「何かめちゃくそ疲れたし、腹が減った」
皇帝炎帝がボヤくと閻魔は「ならば食事を用意させよう!」と言い屋敷の中へと入って逝った
皇帝炎帝達も屋敷の中へ入って逝くと弥勒が応接間から顔を出した
「炎帝!待っておったぞ!
待ちくたびれてしまったではないか!」
弥勒は心配とそして待ちぼうけを食らった時間を想いボヤいた
「‥‥‥んなに待ったのかよ?」
「あぁ、魔界時間で3日も待ったのじゃ!
此処でずっとお主を待っておったのじゃ、ボヤき位は許せ‥」
皇帝炎帝は青龍と顔を見合わせ
「3日?‥‥魔界時間で3日も過ぎてるのかよ?」と驚いて口にした
青龍も「そんなに時間が過ぎてる感じしませんでしたね」と信じられない感じで呟いた
魔界時間で3日も過ぎてるならば、人の世は軽く一週間は過ぎている‥‥
「また一週間も留守にしたのにかよ?
これは予想外だったな」
「ですね‥‥」
皇帝炎帝と青龍は我が子や家族を想い口にした
「我はこの応接間から離れる事なく3日を迎えておる!
そんな我に何もないのか?炎帝」
弥勒はずっと待っていた事を告げた
「弥勒、ただいま!」
「無事で安心した‥‥‥」
弥勒は皇帝炎帝をそっと抱き締め‥‥‥そして離した
閻魔が「食事を用意した」と謂うと応接室に運び込んだ
皇帝炎帝は用意された食事をガツガツ食べつつも「3日も過ぎてるなんてよぉ‥‥」とボヤいた
皇帝閻魔は我が子に「仕方なかろう‥‥人の世には我の寿命を削って戻してやるから安心するがよい!」と取り成した
「親父殿、寿命を削ってくれなくて良い!
魂胆は見えてるんだよ!
んなに早く楽させる気ねぇに決まってるやん!」
「我はお前が戻れば隠居の身故、多少の寿命を削ったとて問題はない」
「んな簡単に楽になれる訳ねぇじゃねぇかよ?」
「ダメ?」
「ダーメ!」
「本当にお主はケチであるな!」
皇帝閻魔は笑った
皇帝炎帝も笑って
「ケチくせぇ親父殿の息子だからな!」と謂った
皇帝閻魔は我が子をじっと見て泣きそうな顔になり‥‥‥笑った
「ならばケチ臭い親子故、仕方ないよのぉ~」
親子して嬉しそうに笑っていた
それを引き裂く様に弥勒は「詳細を聞かせてはくれぬのか?」と拗ねた様に問い掛けた
皇帝炎帝は弥勒に詳細を話した
弥勒は成る程!と想った
魔界も蒼い焔で包まれた様に霧が出た
その後に漲る力を感じていた
とうの昔に忘れてしまっていた原始の力
神だとて年々地球(ほし)の力が汲み取れなくなり‥‥力が弱って来てしまっていた
ゼウスがいた頃ならともかく‥‥
今は原始の力を失って‥‥神々は日々磨耗していた
それが少し前から体躯に力が漲り始めたのだ
神祖の神の力を与し神なれば、その力を実感出来ていた
皇帝炎帝は「解るか?弥勒?」と問い掛けた
弥勒は「解るぞ炎帝!」と笑った
「原始の力を蘇らせた
これでこの地球(ほし)は原始の力を濃く受け継いだ神々に力を与えられる
まぁ‥‥混じった奴等は‥‥息をするのも辛い現実となるだろう」
「悪魔や悪魔貴族、堕天使供や闇に生きる者達‥‥そして何より反魂で生きてる輩はどうなるのだ?」
「悪魔や悪魔貴族、堕天使や闇に生きる者達は適材適所、配置した場所で生きている
そこから領域侵犯せぬ限り、そいつ等はそこで生きていけるし、許可さえすれば移動も可能だ
少し不便だが、仕方在るまい
そして反魂で生きてる者は知り得る限りだが、避難はさせてある
蘆屋道満と安倍晴明の反魂で生を成す二人を何故、師匠のいる里の近くへ住まわせているか?
それは影響を受けさせねぇ為ってのもあるんだよ」
総ては適材適所配置された結果だと皇帝炎帝は謂った
「ならば‥‥安心だな‥‥」
「まぁ、混じりっけのある神や闇に染まった神は‥‥‥この世から姿を消しただろうけどな‥‥
そして反魂で蘇らせた人間も‥‥避難させてない奴は綺麗サッパリ消え去った事となる
これであの教団と全面的にやりあえるって事だ!」
弥勒は息を飲んだ‥‥‥
「‥‥原始の力が在るうちは‥‥」
弥勒が問い掛けると皇帝炎帝は嗤った
そしてそれに答えのは‥‥
「反魂で生を成す事は皆無となる!」と朱雀が答えた
赤い髪をした皇帝炎帝を見ると朱雀は「よぉっ!」と挨拶をした
「朱雀、見て来てくれた?」
「おー!お前の目論見通り、反魂の魂の消滅を確認した
それと‥‥‥閣下がお前を呼び出している‥‥
俺は正義にお前と逢うならば、閣下の所へ連れて行けと命令を受けている」
皇帝炎帝は「閣下?あんだろ?」と呟いた
朱雀は「俺は連絡を伝えただけだ!」と用件までは知らないと謂った
「まぁ人の世に逝くには‥‥タイミングが悪すぎるからな‥‥まだ動けねぇな」
皇帝炎帝が謂うと榊原が真っ赤な髪を一房手にして口吻けた
役目を完遂した皇帝閻魔は立ち上がり我が子の前に立った
「皇帝炎帝よ!暫しの別れだ
元気で‥‥我はそれしか望んではおらぬ‥‥」
「親父殿も元気で‥‥オレが還るまで冥府を守ってくれよ!
まぁオレが還っても楽はさせねぇけどな!」
皇帝炎帝はガハハっと嗤った
そして立ち上がると皇帝閻魔に抱き着いた
皇帝閻魔は我が子を抱き締めたまま青龍を見て
「伴侶殿もどうか‥‥お元気で‥‥」
「はい。皇帝閻魔も御体に気を付けて‥‥」
皇帝閻魔は我が子をギュっと抱き締めて‥‥離すと姿を消した
ガブリエルも「それでは私も‥‥今日はこの辺で!」と謂い姿を消した
静まり返った応接間のソファーに皇帝炎帝はドサッと座った
「髪が戻らんから還れねぇやんか‥‥」
皇帝炎帝が謂うと朱雀は「ならどうするのよ?」と問い掛けた
「師匠の所へ顔を出して、それから還る事にするわ
そのうち髪も戻るだろうからな!」
皇帝炎帝はそう言い兄、閻魔の前に立った
「兄者、またな!
これで少しは魔界も正しき道を逝くだろうと想う」
「炎帝、気を付けて還るのですよ」
「おー!またな兄者」
皇帝炎帝は兄に背を向けると歩き出した
閻魔の邸宅の庭に出ると、天馬と風馬を呼び出した
皇帝炎帝は「オレは青龍と共に乗るから、朱雀は風馬に乗って行けよ!」と謂った
朱雀は「桜の里へ逝くのか?」と問い掛けた
「あぁ、一生も聡一郎もまだいるだろうからな」
「人の世近くの里なれば一週間も過ぎてるのに?」
「あぁ、アイツ等はオレを待ってるからな、逝かねぇとならねぇんだよ!」
皇帝炎帝はそう言うと天馬に乗り込んだ
その後ろに青龍も乗り込むと、天馬は天高く走り出した
その後ろを風馬に乗り込んだ朱雀が着いて走った
桜の里へと到着すると、待っていた一生は飛び出した
「康太!‥‥‥‥あんで皇帝炎帝の格好なんだよ」
一生は真っ赤な髪をした姿に呟いた
「中々戻らねぇんだよ
でもあと少しで戻るだろうからな」
疲れた顔で謂う皇帝炎帝を一生は抱き締めた
聡一郎も「康太‥‥お帰りなさい」と謂い抱き着いた
康太は聡一郎に「春葵と貴章は?生きてる?」と問い掛けた
聡一郎は屋敷の方を指差して
「生きてますよ!
君が何かしたのは、この体躯に漲る力で解ります‥‥」
と謂った
皇帝炎帝は土御門孔明を目にすると
「師匠、御体に変わりはありませんか?」と尋ねた
土御門孔明は綺麗に笑って
「星々が活気を取り戻し輝いてます
まるで原始の力を手にいれた様に‥‥輝いてます
だから私も力が漲っています」と答えた
「悪しき空間は浄化した
‥‥‥師匠、今後‥‥反魂で人を生き返らせる事は‥‥‥不可能となるでしょう」
孔明は弟子の顔を見て‥「そうですか‥‥」と呟いた
「お帰り陵王」
弟子を労い労る言葉を投げ掛ける
弟子は師匠の言葉を受け「ただいま」と言葉にした
「師匠、妖怪の引っ越しは滞りなく終わりましたか?」
「ええ、陵王、総て滞りなく終わりましたよ」
「そうか、それは良かった
師匠、どうか春葵と貴章を見守って行って下さい」
「解ってます、共に‥‥‥生きて逝くのです
気にせぬ訳にはいきませんよ陵王」
「なら安心です!」
「陵王、あの子達は私がこの命にかえても守ります」
「師匠‥‥‥」
「里の子達も‥‥春葵達も、私の大切な生徒ですからね
守らずしてどうします?」
孔明は美しく笑っていた
まるで、斯波陵王の師匠だった‥‥‥生在る時の様に‥‥‥
「師匠‥‥」
孔明は皇帝炎帝の髪に触れると「貴方は私の最初で最期の弟子です!私に教え子は沢山いましたが、弟子は貴方一人です」と、どんな姿であろうが弟子は唯一人だと告げた
とても嬉しい言葉だった
絶対の師弟関係がそこに在った
「師弟、頼りにしてます」
「ええ、任せなさい!」
優しくて厳しくて強い師匠がそこに在った
遥か昔から変わらぬ師匠の姿がそこに在った
真っ赤な髪がやっと元に戻ると、康太はニカッと嗤った
康太は「んじゃ還るとするか!明日、閣下の所に顔を出す事にして今夜は還ろうぜ!」と言葉にした
一生は「どうやって還るよ?」と問い掛けた
「車で来てなかったな、そう言えば‥‥」
車で逝ける場所ではない
人の世から桜の里へは入れない
魔界から桜の里へ入るしかルートはなかった
だから飛鳥井の家の屋根から時空に乗って魔界へ向かったのだった
「朱雀、おめぇ元気なら時空を切り裂いて飛鳥井の屋上まで飛んでくれ!」
「鳥使い荒い奴だな‥‥」
「オレはもうヘロヘロだ!
青龍はもっとヘロヘロだ!」
「仕方ねぇな
なら魔方陣の中へ入れよ!」
朱雀が謂うと康太と榊原、一生と聡一郎は魔方陣の中へと入った
「師匠、近いうちにまた来る」
「待ってますよ」
康太は片手を上げてニカッと笑った
朱雀は呪文を唱えると、魔方陣から朱雀達は姿を消した
孔明は弟子を見送り‥‥何時までもその場に立ち竦んでいた
飛鳥井の屋上に時空酔いしつつも、無事移動を果たすと、康太は慎一に連絡を取った
携帯に電話するとワンコールで電話に出た
『康太、貴方今どこにいるんです?』
「飛鳥井の家の屋上にいる」
『解りました!今開けに行きます!』
暫くして屋上のドアが開かれ慎一が姿を現した
「康太‥‥お帰りなさい」
「待たせたな」
「いえ‥‥貴方が元気な姿を見せてくれるなら‥‥それだけで良いです」
「少し‥‥慌ただしくなる‥‥子供達の事を頼むな」
「解ってます、貴方は何も気にせずに逝けば良いのです!
後の事は俺が総てやっておきますから!」
「慎一、おめぇがいてくれるからオレは動ける‥‥‥んとに、ありがとう」
「止めて下さい!
貴方が謂うと辞世の句みたいに聞こえます」
慎一がそう言うと康太は爆笑した
一生はそんな康太の背中を押して
「取り敢えず風呂に入り、着替えて来ると良いがな!」と謂った
康太は榊原に抱き着き
「そうするか、伊織」と謂った
「では後は宜しくお願いします」
榊原は康太と共に自室に向かった
まずは浴室に向かうと、榊原はバスタブに湯を入れた
康太はサクサク服を脱いでシャワーを出して、湯を浴びた
榊原はシャワーを止めると
「洗ってあげます」と謂いボディーソープをスポンジに垂らして、泡を作った
丁寧に康太の体躯を洗って逝く
榊原は「疲れましたか?」と問い掛けた
「めちゃくそ疲れた
伊織も時空の移動に体躯に負荷が掛かって疲れたろ?」
「あれは‥‥結構堪えましたね
でもオーディンも皇帝閻魔、そして君も平気そうな顔をしてましたよね?」
「平気な訳じゃねぇよ
一度体感してるからな、受け身の体勢は出来ていた、それだけだ‥‥」
「何か‥‥‥君が遠くに逝ったみたいで‥‥怖かったです」
「オレは何処へも逝かねぇよ
お前の傍でねぇと生きられねぇんだからな
お前を亡くせばオレは‥‥生きている事を放棄する‥‥だからオレを絶対に離さないと誓ってくれ‥‥」
「誓いますよ、絶対に離さないと謂ったじゃないですか‥‥」
二人の唇が自然と合わさる
最初は軽い口吻けが‥‥互いを求める執拗な接吻に変わるのは、そんなには時間を要さなかった
互いの体躯を弄り
互いを求めて抱き合った
逆上せると解っていても‥‥‥
物凄く疲れ果てていても‥‥‥
互いが欲しくて堪らなかった
二人はボディーソープの滑りを利用して、慌ただしく繋がり‥‥互いを貪った
吐精する頃には‥‥‥二人はクラクラになった
康太の中で白濁を撒き散らすと‥‥榊原は康太の中から抜いた
「逆上せる伊織‥‥」
康太が謂うと榊原は、康太の泡を流して精液を掻き出して湯船に浸かった
向かい合って湯船に入ると額と額を合わせて
「年々‥‥耐久性がなくなりつつあるな‥‥年かな?」と笑った
「10代の頃は本当に何処でも犯ってましたからね‥‥
お風呂でも何回も犯りましたね」
「愛が足らねぇ訳じゃねぇんだけどな
年々体躯が着いて逝かねぇな!」
康太はそう言い笑った
「愛してます」
「オレも愛してるぜ青龍」
「では、出ますか?
明日も朝から忙しそうですからね」
「だな‥‥」
「閣下の要件、何か想像は着いてますか?」
「‥‥‥‥多分‥‥‥な」
「そうですか、明日は僕も一緒に逝きます」
「伊織‥‥」
「君を護るのが僕の死命ですから!」
「伊織を護るのもオレの死命だぜ?」
「僕らは互いを護り合いながら生きて逝くと誓ったじゃないですか」
「あぁ、そうだったな」
「だから君は真っ直ぐに進みなさい!
後ろは僕が護っているので振り返らず進みなさい!」
「伊織‥‥」
「では出ますよ
家族に顔を見せて子供に顔を見せねばなりませんからね」
「解ってんよ!」
榊原は立ち上がると康太を引き起こした
そして浴室から出ると康太をバスタオルで拭いて髪を乾かした
楽しい時間だった
自分だけしか味わえない時間だった
康太に服を着せると、榊原も身支度をした
榊原は何時もの掃除と洗濯を始めると、康太は応接間へと向かった
応接間のドアは開いていた
顔を出すと子供達がいて、母に飛び付いた
流生が「おかえりなしゃい かあさん」と謂い抱き着いて泣いていた
康太は流生をギュッと抱き締めた
他の子も母に抱き着いた
「留守にしてごめんな
オレもこんなに時間が過ぎてるとは想わなかったからな‥‥」
康太が謂うと翔が母に抱き着き
「おかえりなさい かあさん
ぼくらは‥‥かあさんのすがたをみれてうれしいから‥‥」
だから気にしなくて良い‥‥と思いを込めて抱き着いた
また我が子は逞しく成長していた
子供の成長は早い
目を離したら、寂しい想いや悔しい想いをするのだと‥‥感じていた
慎一が応接間に顔を出すと
「お腹は空いてませんか?」と問い掛けた
「減ってる、どうせだから皆でデリバリー取って食うか?」
「解りました、注文して来ます」
「所で慎一、オレが留守にして何日経ってるのよ?
んでもって今は何時頃よ?」
「一週間ちょっと‥‥経ってます
今は午後4時位です」
聞いてはいたが‥‥確かめずにはいられなかった
「そうか、んなに留守にしてたんだな」
「何か食べたいモノはありますか?」
「そうだなお肉が食いてぇな
後、井筒屋の沢庵!」
「解りました、注文して来ます」
慎一が注文しに応接間を出ると、康太は携帯を取り出した
そして電話を掛ける
「あ、オレ」
『康太!何処へ逝ってたんですか!』
「還って来たからな瑛兄」
『お帰りなさい康太』
「還って来いよ瑛兄
父ちゃんや母ちゃんも連れて‥‥」
『解りました!では還ります!』
瑛太はそう言い電話を切った
康太は笑って、次に電話を掛けた
「あ、オレ」
『康太!貴方、何処へ逝っていたのですか?』
「用があって出掛けてた
義母さん、還って来たので飛鳥井の家へ来て楽しく過ごしませんか?」
『解りました!直ぐに逝きます』
真矢はそう言い電話を切った
暫くすると玄関のチャイムが鳴り響いた
康太は玄関の錠を外してドアを開けた
すると榊原の両親、清四郎と真矢が立っていた
真矢は康太に手を伸ばすと、その腕に抱き締めた
「お帰りなさい康太」
「ただいま義母さん」
真矢は康太を離すと、清四郎と共に応接間へと向かった
暫くすると玲香や清隆も帰宅して、久しぶりの団欒の時間へと突入した
瑛太は康太や子供達の為に、スィーツを買って来て遅れて還って来た
康太は「あれ?そう言えば貴史はどうしたよ?」と問い掛けた
その問いに慎一が答えた
「彼は今、相当忙しいんでしょうね
貴方がお風呂に入ってる間に還って行かれました」
康太は兵藤を想い思案して
「何やってるんだ?」と呟いた
慎一は「貴方の存じない事をしてるのですか?」と驚いた様に問い掛けた
「そう言う事になるな」
「そうでしたか‥‥‥てっきり貴方の為に動いているのだと想っていました」
「まぁな、閣下に呼ばれた件と関係があるんだろうけどな‥‥」
「今宵は‥‥‥それさえも忘れて楽しみましょう」
「だな」
康太はそう言い笑った
例え明日‥‥‥世界が壊れたとしても‥‥
人は最後の最期まで足掻いてもがいて悪足掻きをするだろう
それこそが人の持つ底力なのだから‥‥
康太は久しぶりの家族の時間を楽しんだ
家族といられる時間を噛み締める様に‥‥過ごしていた
明日へ繋ぐ今日を生きる
明日へ繋ぐ架け橋とならん事を‥‥祈っていた
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